マイペースな悪役令嬢はチートなんて興味ありません

01 まぁまぁ、聞いてくださいな

(う～ん、参ったわねぇ……)

私は鏡を見ながらサラリと自身の髪をかきあげる。ふわりとした栗色の髪に色白の肌、幼さも感じさせる容姿には不釣り合いな青く鋭い目を持つ少女が写っていた。
そう。それが私、アンヌ･ドーリッシュだった。

「ねぇ、フィリー？聞いてくれないかしら??」

アンヌは目の前にいる私の従者に声をかける。
 
深緑色の短髪を掻き揚げ心底面倒くさそうにこちらを振り返るフィリーと呼ばれた男は引き締まった身体つきを最大限に生かせるようオーダーメイドの執事服を来ている。
これは主でもあるアンヌの趣味の影響が大きかったが、彼が人目で高貴な者に仕えているのだと分かるようにするためでもあった。

そんなフィリーは呆れを全面に出し溜息をついている。せっかくのイケメンがもったいない。

「嬢ちゃん……また俺を小説のモデルにするんですかい？」
「違うわ。今回はその事じゃないの。」

「今回は…ですか」と再びため息を吐かれたけど知らないわ。そんなことより…

「私、前世の記憶を思い出したの。」

キリッと言い切る。

そう、私はこの世界に転生したのだ。しかも乙女ゲームと呼ばれる世界に。

「失礼ですが、嬢ちゃんの名前は？」
「アンヌ・ドーリッシュ。テルジア学園一の美貌と知性を兼ね備えたドーリッシュ家の公爵令嬢よ。」  

アンヌはドンと大きくもない胸を張って答えてみせる。

「自己紹介をありがとうございます。ところで…」 

フィリーはごほんと咳払いをしたあと再びアンヌにといかける。

「……どこかで頭でもぶつけましたか？」
「…相変わらず貴方は失礼ね。違うわよ。私ね……」

私は先程思い出した前世の記憶を辿る。そう、私は……

「あなたに殺されるの。」