天才魔術師様はかぁいい使い魔(♂)に萌え萌えですっ

阿月杏

文字の大きさ
39 / 75
4. ただでさえ顔がいいのにおめかししたらそりゃもう

4-9 魔力調整

しおりを挟む
 握った手がそっと振りほどかれたかと思うと……おれの首筋に、優しく触れられる。熱い手。大きな手。

「あ」

 反射的に、小さく声を上げてしまって。
 ……でも、『そういうこと』だと分かって、おれは頷いた。ついでにぎゅっと目を瞑る。

「……メグム」

 名前を呼ぶ声が、いつもよりずっと近くに聞こえて。
 次の瞬間――熱を持った唇が、そうっと触れる。

「ん……」

 アッシュ様の唇は少しかさついていて、でも、柔らかい。
 ……この世界でのファーストキス。まさかこんな場所で捧げるなんて、思いもしなかったなぁ。
 そんなことを思っているうちに、ぬるりと舌が侵入してきた。

(わわ……!)

 そうだよね、粘膜接触って話だもんね。ただ触れるだけじゃないんだよね……!
 触れ合わせた舌の先から、じわりと温もりが伝わってくる。魔力を受け取ってる……ってことなのかな。

「っ……」

 ぴくりと肩が震える。唾液を、こくんと飲み込む。
 ああ、あたたかい。
 やわらかい。
 ふわふわする。

(……気持ちいい……)

 アッシュ様のための『魔力調整』なのに、おれも頭がぼんやりしてきた。
 ぷは、と息を継いで――また唇が重ねられる。
 今度は、口の中をゆっくりと舐めるように。

(ひえぇ……!)

 な、なんか、本当に変な気分になっちゃうってこれ。心臓がバクバク鳴ってる。受け渡される魔力を飲み下すのに精一杯で、つい舌を引っ込めてしまう。
 すると、おれの体が強張っているのに気付いたのか、

「……」

 アッシュ様の手が伸びてきて、優しく頭を撫でられた。
 やっぱりおれのこと、ペットだと思ってるみたい。……まあ、ペットとはこんなことしないけど。
 だけどそれは、今のおれにとっては、とても安心する感触だった。

「ん、っ……」

 勇気を出して、おれからも舌を絡める。溢れ出す魔力を受け取って、口に含んで、嚥下して……。
 誰も来ない廊下に、おれたちが交わす口付けの音が、かすかに響いていた。


 あまりに長く感じるキスが続いた後に――ようやく、唇が離される。

「あ……」

 何だか名残惜しさを感じてしまって、いやいやそんなわけ、と否定する。もう十分だよ! 数年分はキスしたって!
 というかそれ以上に気にしなければならないのは、アッシュ様の状態だ。そうっと手を取ってみると……まだ少し温かめだけど、平熱程度になっている。

「……落ち着いた?」
「ああ、とりあえずは……」

 声も苦しくはなさそうだ。まだ万全とは言えなさそうだけど……。
 すると、アッシュ様は立ち上がろうとして――ふらりと壁に肩をつく。

「あーっもう、無理しないで! ほら、おれが支えてあげるから」
「……すまないな」

 前も見たぞ、このパターン。アッシュ様、あまりにも他人に頼るのが下手すぎるって。
 アッシュ様に肩を貸して、一歩ずつ歩き始める。
 でも、おれの頭の中はまだ、さっきまでの時間のことでいっぱいだった。

(……ご主人様と、キスしちゃったぁ……)

 しかも、かなり濃厚なやつ。
 何だか現実味がないんですけど、夢じゃないんですよね……まだ唇に温かい感触が残っている気がしますもの……。
 今さら湧いてくる羞恥心をぎゅうぎゅうと押さえ込みながら、隣のアッシュ様の顔をちらりと窺ってみる。
 いつも通りっぽく見える……けど。この人、表情筋が動かなさすぎなんだよなぁ。

(でも……顔、ちょっと赤い?)

 うーん、誤差程度かな。まだちょっとだけ熱っぽかったし、そのせいかも。
 ……ご主人様は、どんな気持ちでおれとキスしてたんだろうな。おればっかり意識してたら恥ずかしいんだけど……ちょっとくらいドキドキしてくれたのかな……。
 まだくらくらする頭でそんなことを考えながら、おれたち二人は、ひんやりした廊下を進んでいったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【短編】乙女ゲームの攻略対象者に転生した俺の、意外な結末。

桜月夜
BL
 前世で妹がハマってた乙女ゲームに転生したイリウスは、自分が前世の記憶を思い出したことを幼馴染みで専属騎士のディールに打ち明けた。そこから、なぜか婚約者に対する恋愛感情の有無を聞かれ……。  思い付いた話を一気に書いたので、不自然な箇所があるかもしれませんが、広い心でお読みください。

【完結】だから俺は主人公じゃない!

美兎
BL
ある日通り魔に殺された岬りおが、次に目を覚ましたら別の世界の人間になっていた。 しかもそれは腐男子な自分が好きなキャラクターがいるゲームの世界!? でも自分は名前も聞いた事もないモブキャラ。 そんなモブな自分に話しかけてきてくれた相手とは……。 主人公がいるはずなのに、攻略対象がことごとく自分に言い寄ってきて大混乱! だから、…俺は主人公じゃないんだってば!

某国の皇子、冒険者となる

くー
BL
俺が転生したのは、とある帝国という国の皇子だった。 転生してから10年、19歳になった俺は、兄の反対を無視して従者とともに城を抜け出すことにした。 俺の本当の望み、冒険者になる夢を叶えるために…… 異世界転生主人公がみんなから愛され、冒険を繰り広げ、成長していく物語です。 主人公は魔法使いとして、仲間と力をあわせて魔物や敵と戦います。 ※ BL要素は控えめです。 2020年1月30日(木)完結しました。

悪役令嬢の兄に転生!破滅フラグ回避でスローライフを目指すはずが、氷の騎士に溺愛されてます

水凪しおん
BL
三十代半ばの平凡な会社員だった俺は、ある日、乙女ゲーム『君と紡ぐ光の協奏曲』の世界に転生した。 しかも、最推しの悪役令嬢リリアナの兄、アシェルとして。 このままでは妹は断罪され、一家は没落、俺は処刑される運命だ。 そんな未来は絶対に回避しなくてはならない。 俺の夢は、穏やかなスローライフを送ること。ゲームの知識を駆使して妹を心優しい少女に育て上げ、次々と破滅フラグをへし折っていく。 順調に進むスローライフ計画だったが、関わると面倒な攻略対象、「氷の騎士」サイラスになぜか興味を持たれてしまった。 家庭菜園にまで現れる彼に困惑する俺。 だがそれはやがて、国を揺るがす陰謀と、甘く激しい恋の始まりを告げる序曲に過ぎなかった――。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

聖者の愛はお前だけのもの

いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。 <あらすじ> ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。 ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。 意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。 全年齢対象。

マリオネットが、糸を断つ時。

せんぷう
BL
 異世界に転生したが、かなり不遇な第二の人生待ったなし。  オレの前世は地球は日本国、先進国の裕福な場所に産まれたおかげで何不自由なく育った。確かその終わりは何かの事故だった気がするが、よく覚えていない。若くして死んだはずが……気付けばそこはビックリ、異世界だった。  第二生は前世とは正反対。魔法というとんでもない歴史によって構築され、貧富の差がアホみたいに激しい世界。オレを産んだせいで母は体調を崩して亡くなったらしくその後は孤児院にいたが、あまりに酷い暮らしに嫌気がさして逃亡。スラムで前世では絶対やらなかったような悪さもしながら、なんとか生きていた。  そんな暮らしの終わりは、とある富裕層らしき連中の騒ぎに関わってしまったこと。不敬罪でとっ捕まらないために背を向けて逃げ出したオレに、彼はこう叫んだ。 『待て、そこの下民っ!! そうだ、そこの少し小綺麗な黒い容姿の、お前だお前!』  金髪縦ロールにド派手な紫色の服。装飾品をジャラジャラと身に付け、靴なんて全然汚れてないし擦り減ってもいない。まさにお貴族様……そう、貴族やら王族がこの世界にも存在した。 『貴様のような虫ケラ、本来なら僕に背を向けるなどと斬首ものだ。しかし、僕は寛大だ!!  許す。喜べ、貴様を今日から王族である僕の傍に置いてやろう!』  そいつはバカだった。しかし、なんと王族でもあった。  王族という権力を振り翳し、盾にするヤバい奴。嫌味ったらしい口調に人をすぐにバカにする。気に入らない奴は全員斬首。 『ぼ、僕に向かってなんたる失礼な態度っ……!! 今すぐ首をっ』 『殿下ったら大変です、向こうで殿下のお好きな竜種が飛んでいた気がします。すぐに外に出て見に行きませんとー』 『なにっ!? 本当か、タタラ! こうしては居られぬ、すぐに連れて行け!』  しかし、オレは彼に拾われた。  どんなに嫌な奴でも、どんなに周りに嫌われていっても、彼はどうしようもない恩人だった。だからせめて多少の恩を返してから逃げ出そうと思っていたのに、事態はどんどん最悪な展開を迎えて行く。  気に入らなければ即断罪。意中の騎士に全く好かれずよく暴走するバカ王子。果ては王都にまで及ぶ危険。命の危機など日常的に!  しかし、一緒にいればいるほど惹かれてしまう気持ちは……ただの忠誠心なのか?  スラム出身、第十一王子の守護魔導師。  これは運命によってもたらされた出会い。唯一の魔法を駆使しながら、タタラは今日も今日とてワガママ王子の手綱を引きながら平凡な生活に焦がれている。 ※BL作品 恋愛要素は前半皆無。戦闘描写等多数。健全すぎる、健全すぎて怪しいけどこれはBLです。 .

処理中です...