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第3章『初クエストと旅立ち』
第十一話『作戦開始』
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夜が明け、空が金色に染まり始める。
ハルトは焚き火の残り火に土をかけ、立ち上がった。
「さて――行くか」
夜露に濡れた草を踏みしめながら森を進む。
空気は冷たく澄み、鳥の鳴き声が遠くで響いていた。
しばらく歩くと、鼻をつく獣臭が風に混じった。
腐った肉と湿った土の混ざった、嫌な匂い――。
「……ここか」
茂みの向こうに見えたのは、岩壁の裂け目を利用した洞窟。
入口には骨や破れた布が散らばっており、間違いなくここがゴブリンの巣だ。
ハルトは慎重に身を低くして観察を始める。
出入りするゴブリンの数、巣穴の大きさ、周囲の地形――。
「立地は悪くない。けど……隠れる場所が多いな」
地面はやや湿っていて、踏み跡がはっきり残る。
これなら罠を仕掛けた箇所の確認も容易だ。
さらに周囲の木の位置や太さ、高さまで確認していく。
頭の中で地図を描くように、罠の配置を組み立てていく。
夕方までに準備を終え、夜に動き出すゴブリンたちを一網打尽にする――。
「夕方までに、全部終わらせる」
そう呟き、ハルトは腰のリュックからロープと小刀を取り出し、
木々の間を駆け回りながら、黙々と作戦を練り始めた。
罠はすべて仕掛け終わった。
落とし穴、張り巡らせたロープ。周囲の森から木の枝や葉を選び取り、ゴブリンの巣穴のすぐ横に積み上げた大量の枝や葉。
準備は完璧だ。あとは、獲物が巣穴から出てくるのを待つだけ。
ハルトは太い木の枝に腰を下ろし、ゴブリンの巣穴を見下ろす位置に陣取っていた。
背中には、ダリオから譲り受けた剣と、自分で削って作った矢。
右手には弓を持っている。
日が沈んでから、約二時間――。
森の静寂を破るように、巣穴の前に影が一つ現れた。
ゴブリンだ。体長は人間の子どもほど、小さくとも油断できない獰猛な魔物。
ハルトは呼吸を止め、弓を引き絞る。
月明かりの中、狙いはぶれない。
――放つ。
矢は一直線に飛び、ゴブリンの額を正確に貫いた。
短い悲鳴すら上げられず、倒れた。
「よし……」
小さく呟き、すぐに次の矢を番える。
間もなく、二匹目と三匹目が姿を現した。
「同時か……!」
一匹目の胸を射抜く。矢を抜く暇などない。すぐ次の矢をつがえて――二匹目の喉を貫いた。
成功。息は荒く、しかし目は冴え渡っている。
数分後、さらに四匹が一斉に巣穴から飛び出した。
「さすがに、これ以上は……っ」
ハルトは焦りながらも引き絞る。矢を放ち――一匹、二匹、三匹、的確に仕留めた。
だが――四匹目。矢を放つ前に、そいつは巣穴の中へと逃げ戻ってしまった。
「……バレたな」
ハルトは矢尻に布を巻きつけ、火打ち石で火花を散らせた。
小さな炎が灯り、それを弓につがえて放つ。
――シュッ。
燃え上がる矢が夜空を裂き、巣穴の入り口へ突き刺さる。
次の瞬間、燻された植物が一斉に煙を上げ、白いもやが洞窟の奥へと流れ込んでいった。
「……よし、計算通り」
ハルトは木から静かに降り、すぐさま近くの茂みへと身を潜める。
鼻を突く煙の匂いがあたりに広がり、巣穴の中からゴホッ、ゴホッという苦しげな咳が聞こえた。
目と鼻を潰す――単純だが効果的な作戦。
五分もしないうちに、ゴブリンたちはたまらず外へと飛び出してきた。
十体以上いる。目を押さえ、怒鳴り、暴れながら森に飛び散る。
「今だ……!」
ハルトは矢を次々に放つ。
一匹、二匹、三匹――次々と頭部を射抜かれ、血が地面に飛び散った。
動き回る敵を正確に射抜き、八体を仕留めたところで――
「……ッ!」
残った一匹が、煙の向こうからハルトを見つけた。
ぎょろりとした黄色い目が闇に光る。
牙を剥き、獣じみた咆哮を上げた。
ハルトはすぐに弓を引き絞り、気づいたゴブリンへ矢を放つ。
――ズドン。
矢は真っ直ぐに飛び、ゴブリンの額を正確に貫いた。
だが、同時に――やってしまった。
今の一撃で、完全に位置がバレた。
「……チッ、来るか!」
巣穴の奥から、怒号とともに無数の足音が響く。
土を蹴る音、枝を折る音。
闇の中から、次々とゴブリンたちが突進してくる。
ハルトは呼吸を整え、弓を下ろし、茂みの中に隠していたロープを左手で握りしめた。
「……限界まで引きつけろ……まだだ……まだ……」
息を殺し、茂みの奥で待つ。
暗闇の中、ゴブリンの群れが次々と迫る。
その目は煙で潰れ、半狂乱になりながらも、怒りのままに一直線にハルトの方へ突っ込んでくる。
――今だ!
ロープを思いきり引いた瞬間、
ガコンッ!と鈍い音を立てて、茂みの前の地面が崩れ落ちた。
「ギャァァァッ!!」
叫び声とともに、ゴブリンたちが次々と闇の底へと落ちていく。
十体ほどがまとめて落下し、底に仕掛けられた針山が鈍く光った。
その針には、昼間に採取した毒草のエキスが塗り込められている。
落ちた瞬間、ゴブリンたちは断末魔の声を上げる。
煙と恐怖に支配された群れは、もはや理性を失っている。
目も鼻も利かないまま、ハルトを求めて走るほどに――
面白いほど、次々と穴へと落ちていった。
ハルトは焚き火の残り火に土をかけ、立ち上がった。
「さて――行くか」
夜露に濡れた草を踏みしめながら森を進む。
空気は冷たく澄み、鳥の鳴き声が遠くで響いていた。
しばらく歩くと、鼻をつく獣臭が風に混じった。
腐った肉と湿った土の混ざった、嫌な匂い――。
「……ここか」
茂みの向こうに見えたのは、岩壁の裂け目を利用した洞窟。
入口には骨や破れた布が散らばっており、間違いなくここがゴブリンの巣だ。
ハルトは慎重に身を低くして観察を始める。
出入りするゴブリンの数、巣穴の大きさ、周囲の地形――。
「立地は悪くない。けど……隠れる場所が多いな」
地面はやや湿っていて、踏み跡がはっきり残る。
これなら罠を仕掛けた箇所の確認も容易だ。
さらに周囲の木の位置や太さ、高さまで確認していく。
頭の中で地図を描くように、罠の配置を組み立てていく。
夕方までに準備を終え、夜に動き出すゴブリンたちを一網打尽にする――。
「夕方までに、全部終わらせる」
そう呟き、ハルトは腰のリュックからロープと小刀を取り出し、
木々の間を駆け回りながら、黙々と作戦を練り始めた。
罠はすべて仕掛け終わった。
落とし穴、張り巡らせたロープ。周囲の森から木の枝や葉を選び取り、ゴブリンの巣穴のすぐ横に積み上げた大量の枝や葉。
準備は完璧だ。あとは、獲物が巣穴から出てくるのを待つだけ。
ハルトは太い木の枝に腰を下ろし、ゴブリンの巣穴を見下ろす位置に陣取っていた。
背中には、ダリオから譲り受けた剣と、自分で削って作った矢。
右手には弓を持っている。
日が沈んでから、約二時間――。
森の静寂を破るように、巣穴の前に影が一つ現れた。
ゴブリンだ。体長は人間の子どもほど、小さくとも油断できない獰猛な魔物。
ハルトは呼吸を止め、弓を引き絞る。
月明かりの中、狙いはぶれない。
――放つ。
矢は一直線に飛び、ゴブリンの額を正確に貫いた。
短い悲鳴すら上げられず、倒れた。
「よし……」
小さく呟き、すぐに次の矢を番える。
間もなく、二匹目と三匹目が姿を現した。
「同時か……!」
一匹目の胸を射抜く。矢を抜く暇などない。すぐ次の矢をつがえて――二匹目の喉を貫いた。
成功。息は荒く、しかし目は冴え渡っている。
数分後、さらに四匹が一斉に巣穴から飛び出した。
「さすがに、これ以上は……っ」
ハルトは焦りながらも引き絞る。矢を放ち――一匹、二匹、三匹、的確に仕留めた。
だが――四匹目。矢を放つ前に、そいつは巣穴の中へと逃げ戻ってしまった。
「……バレたな」
ハルトは矢尻に布を巻きつけ、火打ち石で火花を散らせた。
小さな炎が灯り、それを弓につがえて放つ。
――シュッ。
燃え上がる矢が夜空を裂き、巣穴の入り口へ突き刺さる。
次の瞬間、燻された植物が一斉に煙を上げ、白いもやが洞窟の奥へと流れ込んでいった。
「……よし、計算通り」
ハルトは木から静かに降り、すぐさま近くの茂みへと身を潜める。
鼻を突く煙の匂いがあたりに広がり、巣穴の中からゴホッ、ゴホッという苦しげな咳が聞こえた。
目と鼻を潰す――単純だが効果的な作戦。
五分もしないうちに、ゴブリンたちはたまらず外へと飛び出してきた。
十体以上いる。目を押さえ、怒鳴り、暴れながら森に飛び散る。
「今だ……!」
ハルトは矢を次々に放つ。
一匹、二匹、三匹――次々と頭部を射抜かれ、血が地面に飛び散った。
動き回る敵を正確に射抜き、八体を仕留めたところで――
「……ッ!」
残った一匹が、煙の向こうからハルトを見つけた。
ぎょろりとした黄色い目が闇に光る。
牙を剥き、獣じみた咆哮を上げた。
ハルトはすぐに弓を引き絞り、気づいたゴブリンへ矢を放つ。
――ズドン。
矢は真っ直ぐに飛び、ゴブリンの額を正確に貫いた。
だが、同時に――やってしまった。
今の一撃で、完全に位置がバレた。
「……チッ、来るか!」
巣穴の奥から、怒号とともに無数の足音が響く。
土を蹴る音、枝を折る音。
闇の中から、次々とゴブリンたちが突進してくる。
ハルトは呼吸を整え、弓を下ろし、茂みの中に隠していたロープを左手で握りしめた。
「……限界まで引きつけろ……まだだ……まだ……」
息を殺し、茂みの奥で待つ。
暗闇の中、ゴブリンの群れが次々と迫る。
その目は煙で潰れ、半狂乱になりながらも、怒りのままに一直線にハルトの方へ突っ込んでくる。
――今だ!
ロープを思いきり引いた瞬間、
ガコンッ!と鈍い音を立てて、茂みの前の地面が崩れ落ちた。
「ギャァァァッ!!」
叫び声とともに、ゴブリンたちが次々と闇の底へと落ちていく。
十体ほどがまとめて落下し、底に仕掛けられた針山が鈍く光った。
その針には、昼間に採取した毒草のエキスが塗り込められている。
落ちた瞬間、ゴブリンたちは断末魔の声を上げる。
煙と恐怖に支配された群れは、もはや理性を失っている。
目も鼻も利かないまま、ハルトを求めて走るほどに――
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