完璧地球人は魔法無しで異世界を救う

前方に瓜

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第5章『魔法都市マギステリア』

第二十三話『赤い都市』

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夜──。
ハルトが眠りについてどれほど経った頃だろうか。外が妙に騒がしい。怒号と爆ぜる音が、窓の向こうから押し寄せてくる。

「……なんだ?」

布団から飛び起きたハルトは、窓の外をのぞいた。

魔法省の方角が赤く染まっていた。次の瞬間──。

「あそこにいるぞ! 撃て!」

黒いフード付きのローブをまとった三人組が、民間人めがけて炎魔法を叩き込んだ。逃げ惑う男が反撃のように魔法を放つが、黒フードにはまるで効いていない。
男は炎に包まれ、そのまま倒れた。

「おいおい……嘘だろ。何が起きてんだよ……」

ハルトは即座に宿部屋から飛び出す。
ほかの宿泊客も宿の主人も、すでに逃げ去った後だった。
どうやら──魔力が無いハルトは、避難呼びかけの対象にすら入れられなかったらしい。

「マジかよ……」

外に足を踏み出した、その瞬間。

「いたぞ! 撃てーーーッ!」

別の黒フードの三人組が炎魔法をぶっ放してきた。
ハルトは反射的に身をひねり、炎をかわす。

「……クソ、やるしか──」

剣を抜いたそのときだ。

「いや、違う! あいつ魔力が無いぞ!」
最初の三人組の一人が叫んだ。

「ほんとだ……同士か?」
二人目が戸惑った声を上げる。

「す、すまねえ! 大丈夫か!?」
三人目がハルトに駆け寄ってくる。

ハルトはその胸ぐらをガシッとつかみ上げた。

「当たってたら死んでんだよ。『ごめん』じゃねえだろ」

「ほ、本当にすまねえ! 俺が勢い余って……同士を殺しかけるとか最低だ……」
一人目が深々と頭を下げる。

ハルトは剣を下ろさず言った。
「ところで……お前ら何者だ? さっき別の同じ格好した連中が民間人を殺してるのを見たぞ」

短い沈黙。
一人目がぽつりと漏らした。

「……反乱です」

「おい、お前! 何を部外者に勝手に──」
三人目が慌てて制止するが、

ハルトは再び胸ぐらをつかみ、今度はさらに持ち上げた。

「なんだと?」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
二人目が慌てて両手を広げる。
「全部話す! 全部話しますから、そいつを下ろしてくれ……!」

「お、おいお前まで勝手なこと──ぎゃああ! 言う! 言います! 全部話します! すみません!!」

ハルトはようやく三人目を地面に下ろした。

三人組の話をまとめると──
どうやら 魔力弱者による大規模な反乱 が起きているらしい。

この国には魔力量を示す 魔力指数 という基準があり、

1~50:魔力弱者(青)

50~90:平民(黄色)

90~100以上:上級国民(オレンジ)


といった具合に、魔力量がほぼ“色”として見えるのだという。
……もちろん、魔力ゼロの俺には何も見えないのだが。

魔力弱者は、上級国民からはもちろん、平民からも露骨に差別されている。
特にこの街は魔法省と魔法王の本拠があるため上級国民が多く、弱者への扱いはひどいものらしい。

三人組の話は続く。

> 「今回の反乱の目的は──魔法王の殺害。
それから、上級国民の排除だ」



「……もういいだろ、兄ちゃん」
Cが息を吐きながら言った。
「アンタも虐げられてきたんだろ? だったらさ、早く俺たちを行かせてくれよ」

「いや、まだだ」
ハルトは淡々と言う。
「そのお前らの服……何なんだ?」

三人は同時に口をつぐんだ。

「これだけは言えねえ。万が一にも兵士や上級国民、魔法省に渡っちゃいけねえんだ」
Aが眉を寄せる。

「……そうか。ならもう一つ」
ハルトは視線を細める。
「魔力弱者のお前らが、どうやってあんな炎魔法を使える?」

「これでさぁ」
Cが袋から一枚の紙を取り出した。

「魔法陣だよ。これがあれば、魔力弱者の俺らでも上級国民と変わらねえ炎魔法が撃てるんだ。……まあ、一回きりだけどな」

その魔法陣を見て、ハルトは小さくつぶやいた。

「……これは」

Aが急かすように言う。
「さあ、これで全部だ。相手は上級国民だけじゃねえ」

「平民だって、弱者を見下してるやつらは根絶やしだべ」
Bが拳を握る。

「魔法王を殺って、魔力弱者が強いって証明するんだよ」
Cがにやりと笑う。
「そしたら兄ちゃんもよ、この国でもっと生きやすくなるぜ?
これは兄ちゃんのためでもあるんだ、な?」

「……そうだな」

その瞬間、ハルトの声色が変わった。

「じゃあ──お前らは、ここで寝ててもらおうか」

「は?」
三人が同時に振り向いた瞬間。

──ドンッ。
──ガッ。
──ゴッ。

三人の顎に軽く拳を入れ、まとめて気絶させた。

「悪いな。これでも一応、命の恩人だからよ」

ハルトは三人の袋から魔法陣を全部回収し、Cの黒いローブをはぎ取ると、
三人の手足を縛り、宿の自室に放り込んだ。

黒ローブに袖を通し、フードを深くかぶる。

「……よし。行くか」

夜の炎のゆらめく街へ、ハルトは静かに歩き出した。
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