完璧地球人は魔法無しで異世界を救う

前方に瓜

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第8章『最大都市アルディナ帝国』

第五十八話『炎 対 闇』

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実況が声を張り上げる。
「さぁ、世紀の死闘が終わりまして準決勝第2試合。この戦いに勝ったものが決勝でハルト選手と戦うこととなります。」

控え席でルドが心配そうに声をかける。
「ハルト。本当に休まなくていいのか?」

ハルトは立ち上がり、肩を回しながら答えた。
「ああ。リヴィアがすごい魔法を使ってくれたからな。試合前より元気なくらいだ」

決勝へ向け、舞台はすでに次の戦いへと進んでいた。次の試合を前に、控え席でルドが腕を組んだ。
「まぁ次が決勝だもんな。ちょっとでも敵の情報を知っておかないとな」

実況「まずは炎の覇者が、再び頂点を狙って立ち上がるッ!! 前々回の王者にして、灼熱の剣を操る男―――その一閃は情熱、そして勝利への執念ッ! 再び決勝の舞台に立つのはこの男かッ!?紅蓮の剣士・レオン!!」
赤い魔力を纏い、堂々と姿を現すレオン。
剣から漏れ出す熱が、空気そのものを揺らしていた。

実況「続いて登場するのは――この大会で最も危険と噂される男! その身を覆うは漆黒の鎧、 纏うは闇そのもの! どの対戦相手も、彼の前にひれ伏す。謎多き闇の剣士ルシウス! 今宵も、闇の力がすべてを呑み込むのかッ!?」
漆黒の鎧に包まれたルシウスが、音もなく闘技場へ降り立つ。
その存在だけで、観客席のざわめきが静まった。

「試合開始」
審判の声と同時に、ルシウスが剣を振る。
「ダーク・スパイラル」
闇の渦が地を這い、無数の影が蛇のようにうねりながらレオンへ襲いかかる。

だがレオンは、一歩も退かなかった。燃えるような瞳で正面から迎え撃つ。
「燃えろ《フレイム・サークル】!」
足元から紅蓮の炎が噴き上がり、迫る闇の波を正面から焼き払う。

黒と赤の魔力が激突し、爆ぜるような轟音が会場を揺らした。
実況「す、すごいッ!! 闇と炎が拮抗しているッ!! 互いに一歩も譲らないッ!!」

ルシウスが間合いを詰め、闇の刃を繰り出す。
レオンは紙一重でかわし、すぐさま炎の剣を振り抜いた。
炎の軌跡が弧を描き、ルシウスの黒鎧に一瞬だけひびが走る。

煙の中で、ルシウスが低く笑った。
「面白い………………炎の剣士よ。その炎、闇に呑まれてなお燃え続けるか。」

レオンは剣を構え直し、唇の端をわずかに上げる。
「闇がどれほど深くても、炎は消えないさ。」

次の瞬間、ルシウスの瞳が漆黒に染まった。
「シャドウ・フレイム〉!」

剣先から噴き出した黒い炎が、一直線にレオンへ襲いかかる。
観客の歓声が、息を呑んだように止まる。
実況「うわぁっ!! 黒い炎だッ!! レオン、どうなるッ!?」

しかしレオンは動かない。
腕から黒い炎が立ち上がる。
二つの黒炎が正面から激突し、空間そのものを震わせた。
火花と闇の煙が渦を巻く。

実況「な、なんとッ!? 黒い騎士の黒炎を、レオン自身の黒い炎で完全に相殺っ!!」
同質の魔力同士がぶつかり合い、互いを食い合うようにして消えていく。
一瞬の静寂。
残ったのは、闘技場に重く立ち込める黒炎の煙と、互いを睨み合う二人の視線だけだった。
――決勝への切符を賭けた戦いは、まだ始まったばかりだった。




黒い騎士が腕を振る。
その動きに合わせ、空気が裂けるように歪んだ。
闇の魔力が渦を巻き、剣先から黒紫の光刃が連続して放たれる。
「シャドウ・スラッシュッ!」
死の嵐のような斬撃が、波状になってレオンへ迫る。
空気そのものがねじれ、闘技場の地面が震えた。

実況:「うわぁっ!! 黒い騎士の闇魔法が連続攻撃ッ! しかし――」

炎の剣士レオンは退かない。
燃え盛る炎を纏った剣を正面に掲げる。
黒い斬撃が剣先に触れた瞬間、閃光と爆音が炸裂した。
闇の刃は次々と切り払われ、砕け散っていく。
「俺の炎は、どんな魔法も燃やし尽くす。効かんぞ。」
黒炎は紅蓮の剣の前で霧散し、煙だけが空に漂った。

実況:「す、すごいッ!! レオンが黒い騎士の闇魔法を完全に斬り払ったッ!」 

だが、ルシウスの動きは止まらない。
剣先に再び闇を集め、低く詠唱する。
ルシウス「カースド・マリッシュ」
次の瞬間、地面が黒く染まった。

影が沼のように広がり、レオンの足元から絡みつく。
実況「あーっと! 地面が黒く染まり、レオン選手。どんどん引きずり込まれていく。」

レオンは一瞥すらせず、鼻で笑う。
レオン「だから俺には効かねえよ」
足元から炎を噴射し、一気に宙へ跳び上がる。

空中で魔力を集中させ、剣を振り下ろした。
レオン「スコルファニクス」
巨大な炎の竜巻が発生し、闇を巻き込みながら天へと吹き上がる。

浮かされたルシウスの身体が宙に持ち上げられた。
レオンは間を置かず急降下する。
鎧越しに、宙に浮いたルシウスの腹へ強烈な一撃を叩き込んだ。
ルシウスは地面へ叩きつけられる。
その衝撃音が響く前に、レオンはすでに追撃へ踏み込んでいた。

ルシウスは即座に跳び上がり、追撃を回避して距離を取ろうとする。
だがレオンは逃がさない。炎を纏って追いすがる。

ルシウスは両腕でガードを固め、レオンの連撃を受け続ける。

ルシウスが口元を歪め、短く息を漏らす。
「フッ」

その様子を見て、レオンが眉をひそめる。
「何がおかしい」

ルシウスは肩を揺らし、嘲るように笑った。
「いやぁ、弱いなぁと思って。ククク」
一瞬、空気が張り詰める。

レオンは怒りを隠そうともせず、剣を構えたまま言い返した。
「お前は今俺に手も足も出ていないだろ! お前の方がよわいだろうが!」
次の瞬間、レオンの蹴りが炸裂する。

ルシウスの身体が宙を舞い、地面を転がった。
だが、倒れながらもルシウスは笑みを消さない。
「いやぁこの格好ではこんなやつにすら手こずるとは・・・それも笑えてくる。ククク」

レオンは足元に炎を集中させる。
爆発的な推進力で一気に間合いを詰めた。
「うおおお!」
振り抜かれた剣閃が、正確にルシウスの頭部を捉える。

甲高い音が響き、漆黒の鎧が砕け散った。

実況「ルシウス選手の強烈な剣撃に加えて強烈な腹への蹴り、そして炎魔法を使った素早い追撃! ルシウス選手の鎧が外れた! 謎に包まれたルシウス選手の素顔が明らかになります。」

舞い上がった砂埃が、ゆっくりと晴れていく。
そこに立っていたのは、
長く尖った耳、短い角、赤い肌を持つ異形の存在だった。
――魔人。
その姿を前に、会場全体が息を呑んだ。
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