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第1話「助けてくれる幼なじみ」
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このとき私は、まだ何も知らなかった。
教室でスマホが震えた。
画面に表示された通知は、見覚えのないアカウントからだった。
『昨日、駅前のカフェにいたよね。授業、サボっちゃだめだよ』
一瞬、息が止まる。
昨日のことを知っているのは、私と親友の星野みあだけのはずだった。
続けて、また通知が届く。
『ダンス、上手だったよ。あんな時間に練習してるなんて意外』
『うさぎのキーホルダー、まだ見つからない?大事な友達にもらったんでしょ』
指先が冷たくなる。
誰にも話していないことばかり。
カフェも、ダンスも、なくしたキーホルダーのことも。
「……なに、これ……」
声に出したつもりはなかったけれど、喉が震えた。
スマホを握りしめたまま、私は俯く。
どうすればいいのか、分からない。
誰かに見られている気がして、教室のざわめきが遠くなった。
そのとき。
「まどか、帰ろ!」
背後から、聞き慣れた声がした。
振り向くと、久世まひろが立っていた。
いつもの穏やかな笑顔で、少し首を傾げている。
「どうしたの?なんか元気ない気がしてさ」
「僕の勘違いだったらごめんね」
その瞬間、張りつめていたものが切れた。
視界が滲んで、こらえていた涙が一気に溢れ出す。
「……まひろ……」
言葉にならない声で名前を呼ぶと、
まひろは何も聞かず、そっと私の肩を抱いた。
「大丈夫だよ。ほら、深呼吸」
小さい頃から、そうだった。
困ったとき、怖いとき、必ずまひろは隣にいてくれた。
――どうしようもない時、いつも助けてくれる人。
私のヒーロー。
「……ありがとう」
「まひろは、ほんとに……私のヒーローだね」
胸の奥で、そんな言葉が浮かぶ。
まひろは何も言わず、静かに微笑んだ。
その腕は、あたたかかった。
けれど。
(大丈夫。全部、うまくいってる)
彼の心の中で、別の声が囁く。
(怖がってくれた。ちゃんと僕を頼ってくれた)
教室のざわめきの中で、
まひろの口元が、ほんのわずかに歪む。
(自分のものにできるなら……なんだってする)
誰にも気づかれないように、
彼は私を抱き寄せる力を、少しだけ強めた。
(僕たちを邪魔する人間なんて、いなくても平気だよね)
だって。
(まどかには――僕だけいればいいんだから)
私はその腕の中で、
ただ「安心」を感じていた。
それが、
すべての始まりだとも知らずに。
教室でスマホが震えた。
画面に表示された通知は、見覚えのないアカウントからだった。
『昨日、駅前のカフェにいたよね。授業、サボっちゃだめだよ』
一瞬、息が止まる。
昨日のことを知っているのは、私と親友の星野みあだけのはずだった。
続けて、また通知が届く。
『ダンス、上手だったよ。あんな時間に練習してるなんて意外』
『うさぎのキーホルダー、まだ見つからない?大事な友達にもらったんでしょ』
指先が冷たくなる。
誰にも話していないことばかり。
カフェも、ダンスも、なくしたキーホルダーのことも。
「……なに、これ……」
声に出したつもりはなかったけれど、喉が震えた。
スマホを握りしめたまま、私は俯く。
どうすればいいのか、分からない。
誰かに見られている気がして、教室のざわめきが遠くなった。
そのとき。
「まどか、帰ろ!」
背後から、聞き慣れた声がした。
振り向くと、久世まひろが立っていた。
いつもの穏やかな笑顔で、少し首を傾げている。
「どうしたの?なんか元気ない気がしてさ」
「僕の勘違いだったらごめんね」
その瞬間、張りつめていたものが切れた。
視界が滲んで、こらえていた涙が一気に溢れ出す。
「……まひろ……」
言葉にならない声で名前を呼ぶと、
まひろは何も聞かず、そっと私の肩を抱いた。
「大丈夫だよ。ほら、深呼吸」
小さい頃から、そうだった。
困ったとき、怖いとき、必ずまひろは隣にいてくれた。
――どうしようもない時、いつも助けてくれる人。
私のヒーロー。
「……ありがとう」
「まひろは、ほんとに……私のヒーローだね」
胸の奥で、そんな言葉が浮かぶ。
まひろは何も言わず、静かに微笑んだ。
その腕は、あたたかかった。
けれど。
(大丈夫。全部、うまくいってる)
彼の心の中で、別の声が囁く。
(怖がってくれた。ちゃんと僕を頼ってくれた)
教室のざわめきの中で、
まひろの口元が、ほんのわずかに歪む。
(自分のものにできるなら……なんだってする)
誰にも気づかれないように、
彼は私を抱き寄せる力を、少しだけ強めた。
(僕たちを邪魔する人間なんて、いなくても平気だよね)
だって。
(まどかには――僕だけいればいいんだから)
私はその腕の中で、
ただ「安心」を感じていた。
それが、
すべての始まりだとも知らずに。
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