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声
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――寸分の狂いもなく、一定のリズムを刻み、電子音は病室に鳴り響く。
ベッドに横たわる男の周りには、数人の男女の人影が見える。神妙な面持ちで顔を覗き込み、祈る様に名前を呼んでいた。
意識があるのか、それともないのか。状況を飲み込めないベッドの男は思った。
『声が聞こえるな……』海面の上を彷徨う小舟みたいに体を浮かせいる男は、辛うじて聞こえる声に耳を傾ける。しかし、耳がこもっているのか、はっきりと響かない。
でも、妹の声だとわかる。
やがて、男の意識は深海へと落ちていくようにゆっくりと沈み、名前を呼ぶ声も聞こえなくなった――
電子音は一定の音を鳴らし始めた。
医師は瞳孔を調べ、時刻を確認する。
その合間に男の手を強く握りしめ、祈る様に呼んでいた名前は叫び声に変わり、幾度も病室内に響き渡った。
2028年 8月14日 午後11時14分
男は23年の生涯を経て、静かに息を引き取った。
ベッドに横たわる男の周りには、数人の男女の人影が見える。神妙な面持ちで顔を覗き込み、祈る様に名前を呼んでいた。
意識があるのか、それともないのか。状況を飲み込めないベッドの男は思った。
『声が聞こえるな……』海面の上を彷徨う小舟みたいに体を浮かせいる男は、辛うじて聞こえる声に耳を傾ける。しかし、耳がこもっているのか、はっきりと響かない。
でも、妹の声だとわかる。
やがて、男の意識は深海へと落ちていくようにゆっくりと沈み、名前を呼ぶ声も聞こえなくなった――
電子音は一定の音を鳴らし始めた。
医師は瞳孔を調べ、時刻を確認する。
その合間に男の手を強く握りしめ、祈る様に呼んでいた名前は叫び声に変わり、幾度も病室内に響き渡った。
2028年 8月14日 午後11時14分
男は23年の生涯を経て、静かに息を引き取った。
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