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告白
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しおりを挟む「葉…俺…」
「お願い…オレも威もこのまま我慢なんて…やだよ?」
その言葉が、誘っている事は重々承知していたが、弄られた部分が威を欲しがって仕方がなかった。
「…オレ……威ならいいよ?…それとも…やっぱり汚い?」
ブンブンと首を振り、威は葉人を力一杯抱き締めた。
「ちが…違うんだ……俺、言わなきゃいけないことがあって……」
「…な…に?」
ぎゅっと掴まれた肩の痛みと不安から涙目になった瞬間、
───ガラ
「あ」
開いた扉の隙間から、この保健室の持ち主がこちらを見てポトリと禁煙用の煙草を落とした。
「あっあの…」
取り乱し気味に威が何か言おうとすると、保健医は落とした禁煙用煙草を拾い上げながらポツリと尋ねる。
「合意?」
こくこくっと二人でうなずいて見せると、面倒そうに腕時計を見て茶髪をかき上げた。
「あと1時間で何とかしろ。シーツは各自持ち帰って洗って来い」
そう言い捨て、保健医は鍵をかけて行ってしまった。
呆然と二人抱き合い、きょとんと見つめあう。
「………ぷっ」 どちらからともなく笑いが漏れる。
「…あ…あははは…っ!!」
「ぷっ…」
「わら…笑ってる場合じゃないよ!…見られちゃったよ!どうしよ!」
「どうしよって言われても…なぁ」
くすくすと笑い合い、滲んだ涙を拭う。
「1時間じゃ…終わんないと思う」
「……うん」
小さく笑いながら、威は葉人をベッドに腰掛けさせた。
「俺のこと、好きでいてくれる?」
「…うん」
こくりとうなずき、不安げにこちらを見る威に微笑みかける。
「葉…」
「…ん?」
「…ありがとう」
そう言うと威は、互いが落ち着くまで葉人をじっと抱き締めていた。
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