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枷
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しおりを挟むびくっと身をすくませると、苦笑いを返してくる。
「何があったか話してくれるかな?」
手の中の空き缶を取り上げ、微かに震える葉人の両手を握り締める。
「…オレ、先生のこと、凄く…好きなんですけど……」
続ける言葉を探すために、ゴクリと唾を飲み込むと、珈琲の苦味がまだ舌の上に残っているのに気が付いた。
「でも…なんか…」
言葉がうまく紡げず、葉人は視線を定まらせることができないまま考え続ける。
「その…やっぱり、違うのかなって…」
「…………違う?」
穏やかな問い掛けに励まされ、顔を上げて息を吸い込む。
「好きだけど、…威に対するものとは違うかなって…」
「うん…」
「………だから、このまま……つきあって、たら…らめかな…っ!?」
呂律の回らなくなった口をはっとなってつぐむ。
頭の奥の痺れに気付いて、すがるような目を光彦に向ける。
「どうした?」
「……ぁ…のぅ……らんか……」
ぼんやりとした意識に、喝を入れるために首を振り、靄が掛かり始めた頭で何かを考えようともがく。
重いまぶたを持ち上げて見た光彦の笑みに、不気味さを感じ取って手を振り払った。
「…ぁ……」
その勢いで体が傾ぐ。
「危ないよ。抵抗せずに目を閉じてごらん?」
倒れ掛けた体を光彦に受け止められながら、葉人は何かを喋ろうとして意識を失った。
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