放課後教室

裏切り

9

　うとうととした微睡の中で千秋達の『じゃあ帰るからなー』と言う声を聴いたような気がした。 


　ああそうか、また威と二人きりになれたのだと思いながらその微睡から再び深い眠りに入るまでそう時間はかからなかった。 





　幼い頃の事をつらつらと夢に見た。 

　手を繋いで幼稚園に行き、滑り台でふざけていて突き飛ばした事。 

　勉強すると言いながら結局は部屋でゲームをしていて怒られた事。 

　空手の大会で決勝に進めたとはしゃぐ威を電話で応援した事。 

　両親の離婚で不安的な時、ずっと傍で話を聞いていてくれた事… 


　長い長い、巡るその記憶のような夢にほ…と気持ちが和らいだ気がした。 

　威はどんな時も傍らにいた。 
　どんな時もよき理解者として、友人として傍に居てくれる。 


　それがずっと続くと思っていた。 



　好きだと言った威も、 
　代わりだと言って裕也を抱く威も、 
　眉間に皺を寄せて黙り込む威も、葉人は知らなかった。 



　オレは、今まで何を見てきたんだろう… 



　そう呟くと同時にふと目が開いた。 

「………ここ、どこ…」 

　意識の中では、威との変わらない生活を続けているものだと思っていた。けれど、動こうとした際の体の痛みで一気にすべてを思い出す。