放課後教室

Kokonuca.

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フェネクス

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 後ろめたい思いのまま、目の前で不機嫌そうにしている威を見上げた。 
 せっかく頼んだきつねうどんも喉を通りそうにもなく… 

 仕方なく箸を置いた。 

「怒ってるの?」 
「ああ。…お前は…警戒心がなさすぎる。何かあってからじゃ遅いって言ってるだろ?」 

 そう言ってじろりと葉人の隣の司郎を睨みつける。 

 その目に、上等だとばかりに司郎が笑い返す。 

「ナニかあってから…ね」 
「………」 
「あんまりがんじがらめにすると、息苦しくて嫌われるぜ?」 
「…何度も言うように、関係ないんだから俺達の事に先輩が口を挟まないで下さい」 
「はぁ?関係ないのはお前だろ?俺達は関係があるもんな?」 

 そう言って葉人の肩を抱き寄せる司郎の手を、威が弾いた。 

 忌々しそうに睨み下ろし、自分と葉人の盆を持って立ち上がる。 

「行こう」 
「た…威!?待って…」 
「じゃあ俺は、お守にでも戻るか」 

 ふぅ…と席を立つ司郎を振り返った。 

 お守? 

 欠伸を噛み殺しながら面倒そうに歩き出す司郎に、誰の…と問いかけようとしたが、食器を片づけてきた威に肩を押されてそれは叶わなかった。 

「司郎先輩は誰のところに行ったんだろう?」 
「………」 

 じろりと冷たい目が見下ろしてくる。 

「威?」 
「…本命だろうさ」 

 つんと素気無く言われ、その薄情さに思わず唇を尖らせた。 

「本命?なんでそんな事…」 
「本当だから」 
「…」 
「葉は先輩の事、何も知らない」 
「じゃあ威は知ってるのかよ!」 

 威と司郎が知り合ったのは最近ことで… 
 司郎に近しいと言うならば肌を重ねた事のある自分の方が詳しい筈だった。 

「あの人には、お前より大事な奴がいる」 
「………」 

 ぐっと言葉が喉に詰まった。 

「な、なんだよ…それ。だって先輩はオレの事好きって…」 
「信じるの?先輩の言葉。………俺の言葉と、どっちが本当だと思う?」 

 挑むような、試すような表情に心の内がひやりと凍る。 

 威は何を言いたいのか、その真意を諮れないままに重苦しく口を閉ざしたままだった。 



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