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フェネクス
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しおりを挟むそして司郎が、間近に迫った空手道の大会の練習の為に練習に出なければならない威の代わりについてきたのだった。
「先輩…退屈そう」
時折気になる本でもあったのか、立ち上がって物色するもぺらぺらと数ページ捲ってからまた本棚に返す…を繰り返している司郎は、やはり図書に馴染がないようだ。
「所で、何を調べてるんだ?」
「あ…」
以前に調べるな…と言われていた事を思い出し、思わず言葉が詰まる。
「その……」
何か良い言い訳を思いつく前に、気だるげに立ち上がった司郎が葉人の手の中を覗き込む。
「ふ?…………」
「ぁっ」
ぱたんと慌てて辞書を閉じるも、司郎の顔は険しい。
「調べるなって…言った事がなかったか?」
低い声に、掌に汗が滲んだ。
「だっ……だって…」
「あいつにはもう、手出しはさせないから」
その固い声にちくりと痛んだ胸を押さえ、葉人は司郎を見上げた。
「どうして、庇うんですか?」
その声は自分自身でも低く聞こえ、葉人ははっと口を押える。
「俺が庇ってんのはハナトだ」
「じゃあ、フェネクスの正体を教えてくれてもいいじゃないですかっ!先輩が教えてくれないから、こうやって自分で調べてるんでしょ…んっ!?」
司郎の大きな手が口を塞ぎ、葉人は自分が大きな声を上げていたのに気が付いた。
「っ…すみません……」
肩を落とし、口を覆っていた手をそっと外して温かな手の体温に寄り添うように頬をつける。
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