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藤の女
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しおりを挟む優しく髪を梳きながら頬に口づけると、ほっと微かな吐息が耳を打つ。
柔らかに鼻をくすぐる翠也の体臭と、心地のよい体の重さを堪能しているとおずおずと手が伸びてくる。
「うん?」
「あ……」
「構わないよ、君のやりたいようにしてごらん」
そう言って後ろ手を突くと乱れた襟元を搔き集めながら「ありがとうございます」と律儀に頭を下げた。
今までされるがままだった彼の変化が面白く、何をしてくれるのかと期待で胸が高鳴る。
つ と指先が動く。
俺の服の釦を一つ外すと窺うようにこちらを見上げ、小さく逡巡の動きを見せた。
「失礼、します」
珊瑚色の舌を出すと俺の首元をつぃと舐める。
途端、はっと身を竦めて複雑そうな表情で言葉を探す。
「どうした?」
「あの……甘い、です」
意外な返事に面食らう。
翠也の狐に抓まれたような顔が面白くて、けれど笑うと気を悪くするかもしれないから真面目そうな顔を作って仰々しく頷いた。
「……不思議、です」
そうぼんやりと感想を言う彼の後頭部に手を差し込んで床へと倒す。
「あっ!」
「脱がせても?」
俺にそう問われ、彼は握り締めていた襟をゆっくりと手放した。
そうすると、はだけた胸元からさっと皓が溢れる。
夜明けに見る白い花のようなそれに指を這わせ、後を追うように舐めて行く。
「もっと服を広げてくれないか?」
「え?」
手を襟に運んでやると、自ら服を開く行為に抵抗があるのか拳を作ってしまった。
「どうした? 舐められないよ」
「じぶ……自分からは恥ずかしいです」
皓に朱が混じり、鮮やかさが増す。
「それに……そこを弄るのは、だ 男女の、色事のようで……」
「嫌かい?」
「そ、そうではなくて……そこが良いと思う僕はおかしいのではないかと……」
そこから快感が得られると分かっているのに、そのことに戸惑う彼の反応が新鮮だった。
「じゃあ、ここは触らないようにしよう」
「あ 」
離れる手に向けてあげられた追い縋るような声。
目だけで窺うと、彼はきゅっと唇を噛んで服の釦に手をかけて震える指先で一つ一つ外していく。
「どうしたらいい?」
「え……?」
そんなことを聞かれると思ってなかったのか、ぽかんと見上げてきて……
焦らすわけでも意地悪をしたいわけでもなかったのだけれど、何も答えないまま微笑を見せると彼は意を決した顔を見せる。
「 ────舐めてください」
震えたままの指先が、けれどはっきりとした意志をもって薄い胸の上に置かれた。
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