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花はいっぱい
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しおりを挟むそれを見て、瀬能が小さく頷きながら検査結果の書かれた紙を机に広げ、赤いペンで何ヶ所かに線を引く。
「こっちの数値と比べて、この線のところが数値が高いって言うのは分かりますか?」
「 はい」
適正値の範囲を振り切っている。
「ここが高いとオメガの因子に体が影響されやすいんです。ベータと仰っていましたが、数値の一部はオメガと遜色のないものもあります。そんなお子さんがベータ用の抑制剤で抑えられていたとは考えられません」
「え でも実際、普通に学校に行ってたし……」
瀬能は眼鏡を外すして目を押さえると、ふむ と唸る。
「 幼馴染か、同居人、恋人にアルファがいない?」
最初に出た言葉のどきりとした。
喜蝶が思い浮かび、思わず母と顔を見比べる。
「います」
「仲良いでしょ?部屋とかよく来たり 」
チラッと瀬能の視線が母を見て、言葉を切った。
「 スキンシップしたりするアルファ。多分、アルファらしい感じの子だと思うんだけど」
「え はい 隣同士なので、仲は良いです」
とは言え、最近は避けていてその背中しか見ていないけれど。
「じゃあ多分その子だね。アルファのマーキングについてはどれだけ知ってる?」
「えと、オメガに対して、パートナーだと主張したり、他のアルファを近寄らせない為に匂いを残すんですよね?」
辿々しい答えだったのに、瀬能は満足そうだ。
「それと他にもあってね、マーキングしたオメガのフェロモン活動を抑えるって言う報告もあるんだ」
「抑える ?」
「オメガらしくなる程、匂いが強くなる傾向にあるんだ。これをアルファがマーキングすることによって抑えて、大したオメガじゃありませんって擬装するんだよ」
「匂いを抑えたら どうなるんですか?」
「モテなくなる。あとオメガフェロモン自体を抑えるから、ヒートが軽くなる」
理屈はー……わかるような?わからないような?
「今回のは 君、喧嘩した?」
「っ ケンカって言うか 」
叶わない恋に辛くなって避けてただけで、ケンカじゃない。
むーっと顔をしかめたせいで、何かあると思われたのか、医者は小さく肩を竦めた。
「ヒートを軽くしたいならまた仲良くなるのが近道だけど、マーキングが消えてる今のうちに新しいパートナーを探すのもありだよ」
「新しい ?」
「その子がずっと傍にいると、匂いが取れないから。パートナーを見つける事ができないでしょ?」
パートナー……βの、恋人。
忠尚が思い浮かんだけれどブンブンと首を振ってかき消した。
「その子がただの幼馴染って言うなら、もうすぐ十七だし、今のうちに見つけてパートナーシップを結んじゃうのもありだよ?」
つかたる市が勧めているバース性のパートナーシップ制度は、頸を噛まれたけれど結婚年齢に達していなかったり、番をなくした片割れが新たなパートナーを持つ時に出てくる制度だったはず。
「アルファは共有を嫌うから、抑止力になるからね」
パンフレットあげる と、引き出しを漁って小さく薄い冊子を差し出してきた。
『よくわかる!パートナーシップ!』と書かれたそれは、いまいちピンと来なくて……受け取るのを躊躇っていると、隣の母がさっと受け取ってしまった。
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