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狼の枷
落ち穂拾い的な 煙草
しおりを挟む小さな物音で目が覚めるのは、職業のせいなのか……
床を極力音を消した足運びでこちらにやってくるのが分かった。直江は忍び寄らないようにと言い聞かせてある為こう言った事はしない。
レヴィならばもっと上手く音を消すだろう。
と と と と軽い音はセキしかいない。
現にベッドの傍に立ったらしい時には、セキの甘い匂いが漂って来た。
「ん しょっと 」
何をするつもりだろうと、そのまま寝たふりを決め込んでやると、ベッドに上がり込んできたのが沈み込む具合で知れた。
そのまま俺がとっくに起きているとも思わずに、腰の上に跨ってくる。
ち ち と小さな音は……
「 っ」
微かな火の燃える臭いと瞼の向こうの明るさ、そして微かに漂って来たいつまで経っても馴染まない香りが鼻を擽る。
「 ────おい」
微かに掌に熱を感じたがどうと言うことはない。
「あっ あああっ」
咥えていた物を取られて、セキは暗い中でも分かるほど大袈裟に顔を歪めた。
手の中を見遣れば一本の煙草が握り潰され、微かな匂いだけをさせている。
「 っお前は」
「だっ だって!」
日本では馴染まないきついこの香りは俺の煙草だ。
しかもこれは、もう一方の煙草。
「何を考え……」
……ているか なんか分かりきっている。
セキはこれで俺を欲情させようとしたのだろう。
相変わらず、何をしでかすか分からない。
「手……大丈夫ですか?」
「問題ない。まだ暗い、寝ろ」
そう言って掌の中の煙草の残骸を灰皿に投げ込んだ。
普段吸っている物と違い、こちらの方は更に製造数が少ないらしく……無駄遣いしたと知られれば、また瀬能からチクチクと小言を言われそうだ。
「ちょ ちょっとでも吸い込みませんでしたか?」
俺の上に跨って、セキは降りる気配を見せない。
「残念だが、こっちはオメガにしか効かないそうだ」
「ぇ ええええ 」
「残念だったな」
頭を枕に落ち着けてふぅ と一息つくが、セキは降りようとはしなかった。
重さだけで言うなら気にも留めない重さだが、ゆるゆると体を揺らされては寝にくい事この上ない。
「 おい」
「っ ぅ 」
きゅっと体を反らして、腰を擦り付けては小さく上がる声を堪えている。
「 だって 」
「吸い込んだのか」
すぐに取り上げたと思ったが、遅かったのか……
「少し待て」
手探りでいつも枕元に置くシガレットケースを引き寄せると、熱を含んだ指がそれを押さえ込んだ。
血液の流れが良くなっているのか、指先だと言うのに鼓動が分かりそうなほど熱い。
「こっちじゃ嫌です」
「我が儘言うな」
「だって また大神さん出掛けるじゃないですか」
帰りはいつになるか分からない と、昨夜伝えておいた。
「 それで?」
明るければ、セキは俺の意地の悪そうな顔に気づいたかもしれない。
「さ 寂しいじゃないですか」
「だから?」
殊更突き放すような硬い声で言ってやると、僅かに怯んだ気配がした。
「さみ 寂しい……」
寄る方なさげにぽつりと呟かれると、思うままに抱き締めてやりたくなるが、そんな事をすればセキは潰れてしまう。
「 寂しい と思うのは俺だけですか?」
「だから と聞いている」
戸惑う気配がして、小さく呻く様な声が聞こえた。
「お 」
「お?」
「 おっきいのでズポズポして、奥にいっぱい種付けしてニオイ染み込ませてください!ナカを大神さんの改造◯んちんの形になるまで犯して、このやらしいぐちょぐちょのタテワレマ◯コがちゃんと大神さんの性奴隷だって教え込んで欲しいです!」
眉間に皺が寄った気がして、思わず指で押さえて呻いた。
「えっ あっ ダメですか? ビンビンに立ったピンクの雌ちく──── 」
「もういい」
俺の手で塞ぐと、顔全体を覆ってしまうんじゃないかと心配になるが、どうやら口だけを押さえる事が出来たらしい。
ふがふがと何かを言っていたが、静かになるまでこのままだと悟ったのだろう、すぐに大人しくなって項垂れてしまった。
何も言い出さないのを確認してから、灰皿を引き寄せて中の煙草を探る。
「お前はどこでそんな言葉を覚えてくるんだ 」
目的の煙草は少しへしゃげてはいるが、濡れている訳じゃなし、十分使える様だった。
「直江さんが、勉強しときなさいってデータくれたから……」
「あいつは 」
見つけた煙草に火をつけて、一度深く吸ってからセキに向けて吐き出した。
馴染まない香りに一瞬顔を顰めた様だったが、消えて行く煙の向こうに嬉しそうな表情が見て取れた。
火が消えない様にそっと灰皿に戻して、は は と息が上がり始めたセキを引き寄せる。
仕方がない。
多少スケジュールが遅れたとしても、直江がなんとかするだろう。
END.
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