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花占いのゆくえ
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しおりを挟むプシュ と空気の抜ける様子が面白い。
「ばーか。考えてみろよ。身体中、全部空気に包まれてるだろ?」
「…………」
「空気がないと、生きていけないんだって」
「…………」
「空気に生かされてるんだ」
黙って聞いていた六華の唇がツンと尖る。
「それを、もっと早く言ってあげたら良かったのに」
「はは、オレもそー思う」
首の後ろで手を組み、ぐっと体を反らすとまだ肋骨が痛んだけれど、背中はしゃんとした。六華に合わせているとどんどん前屈みになって猫背になってしまうのは困りものだ。
「おーい。話は着いたか?」
遠巻きにオレ達の様子を窺っていた奴が、オレが体を伸ばしたのを見て取って、話が終わったと思ったのか話しかけてきた。
粗っぽい作りだが、αらしい端正さのある奴だ。
オレよりもタッパがあって、バランスのいい体格をしているからかどんな立ち姿でも様になる、そんな男だ。
「うん?何?なんか用?」
六華は平然と返すが、このプレッシャーを分かっていないのか……?
αらしい圧し掛かるような、威嚇の臭いがする。
口の中が苦々しくて……痛い。
「銀花が気にしてたから様子見てた」
「えー?銀花が言ったからなの⁉︎純粋に心配してよぉ」
「お前を心配したところでなぁ……何もないならいいだろ? ───おい」
上からだ と分かるのに言い返せないのは、頭を押さえつけるようにしっかりとマウントを取られてしまったからだ。
しかも、頭を上げさせようと言う気が微塵もない。
「六華が悪い事したな、許してくれるよな?」
見下ろされ……決して下手でない謝罪は謝る気のない謝罪。
「なんで仁が言うんだよ!」
「長兄だからな」
「俺の方がお兄ちゃんなんだけど!」
「 は」
「笑うなぁぁぁっ」
気楽なやり取りがされてはいるが、オレは臭いで頭を押さえつけられて不愉快極まりない。
オレ自身のα因子は決して低くはないのに、この男に逆らえないのは場数の違いかなんなのか……
腹が立って臭いを押し退けるようにこちらも威嚇してやると、六華と漫才のようなやり取りをしながらもちらりとこちらに目を遣って……クスリ と笑った。
『肋骨以外もへし折ってやろうか?』
六華に怒られると分かっているからだろう。
仁は挑発的な顔つきで小さく唇だけ動かしてオレに伝えてきた。
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