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しおりを挟む「こちらの世界では後唇が自然と潤う雄は子を成すことができますから 貴男の話を聞くと、可能性がない訳ではなさそうですね」
ただ……とエルは眉間に皺を寄せた。
「召喚についてきた只人が子を成したと言う話は聞かないので、どうでしょうか?あちらの世界の男性は全員が妊娠しないと聞きますが……」
神が他世界より使者を召喚した際に巫女以外の人間が共に来ると言うことは、長い歴史上この国にも他国にもやや見られる現象で、まったくない訳ではないと言う位置づけだ。そして、その際に一緒にこちらの世界に来た人間の男が子供を産んだと言う報告や文献の類は一切ないそうで……
言葉の端々に胡乱な感情を滲ませるエルに強く出れないのは、俺を受け入れたはるひの体の奥が滴るほどに蜜を零していたと言ったからだ。
それが、俺が頭に血を登らせた結果の幻だとしても。
はるひに行ったことの罰として犯罪奴隷に堕ちる覚悟ではあったが、もしはるひが子を成せるのだとしたら、いや……もしかしたらその腹の中にすでに宿っている命があるのだとすれば、責任の取り方が変わってくる。
「 ────あちらの世界では、雄も子を成すのでしょうか」
尾を梳く手が一瞬止まりかけて、すぐに何事もなかったように動き出す。
「向こうは基本、男は子供を産まないよ。こちらでは違うと聞いて未だに驚いているんだ」
くぃ と毛を引っ張る力が強まり、思わず体が跳ねた。
「こちらは僕の世界の常識が通用しないよね、本当に本やゲームの中の世界みたいだ。オーパーツも多いし、生態も違う、何より神様がちゃんといる」
いる?
不思議な物言いだと思う。
神はいるものだ、だからこちらの願いを叶えるために奇跡を起こされる。
こうして瘴気や魔物を払うために巫女を異界から呼ぶのも、雄でも子が産めるように取り計らったのも、神の御業だ。
「 では、子を成さないと思ってよろしいのでしょうか?」
是と言って貰えたならば、はるひに対して行ってしまったことへの不安材料が一つ減る。
「…………ああ、男巫女以外はね」
呟くように答えたかすがは俺の尾を膝の上に乗せたまま手を止めてしまった。
滑らかで血の気のない白い顔を遠くに向けている様子は、俺の質問が何らかの波紋をかすがに投げかけたようだった。
「 クラドを使ってまで確認してくるって、ホント性格悪いね」
「な、なに 」
「言っておいてくれる?僕が子供を産むのはすべてが片付いてからだって!」
ぱし と尾を振り払われて思わずつんのめりそうになるが、かすがは構う様子はない。濃い銀色の柳眉をきつく寄せて、不快感をあらわにしている。
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