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「ぃ 」
「あっヒロっ手を離しなさい!」
本人に悪気がないのはわかってはいるが、それと痛みがないのは別問題で、ぶちぶちと音を立てる髪を二人がかりでヒロから引き離すと、それが不満だったのかヒロの手がばたばたと暴れ回り、何か言いたいことでもあるのか大きな声を上げた。
「随分とやんちゃだな」
「すみません……」
ベッドに腰掛けて不満の声を上げているヒロの頬を突くと、気が逸れたのか今度は俺の指を掴んでご機嫌だ。
「なんだ、俺の指が気に入ったのか?」
「すっかり、懐いてますね」
肩が触れるほどの距離で身を寄せ合いながら膝の上の赤ん坊をあやすひと時は、このまま家族になれるんじゃないかと錯覚させるほどで、俺の指に執着して懸命に追いかけようとするヒロを見て笑い合う瞬間はこれ以上ないほど幸せだった。
立ち上がって部屋を出て行こうとする俺に向けて、小さな手を広げて「うぅー!」と低い声が出る。
戻ってこい と言う意思表示なのだろうが、そう言うわけにはいかない。
「悪いな、これから仕事なんだ」
「お仕事……ですか?こんな時間から?」
眉尻を落とし、心配だ と言う顔をするはるひに笑い返す。
「これからゴトゥスの残党の報告と今後の対策について話し合わなければならないからな。今からなら終わるのは深夜だろう。昼間は普段の仕事でいっぱいいっぱいで会議を捻じ込めなかったそうだ」
「まだ……見つからないんですか?」
あの森ではるひを襲おうとした魔人の生死は元より、行方もわからない今、はるひの不安をぬぐい切ることはできないようで、自分の力の無さを痛感するばかりだ。
「今、各地に伝令を送って探させている、近い内にいい報告ができるだろうし、もしかしたら隣国へ逃げているのかもしれない」
ちょいちょい とヒロの頬を突く。
「どちらにせよ、はるひが心配することは何もない。俺が護ると言っただろう」
ヒロに触れたようにはるひの髪に触れたくなったけれど、あの日宿で何もしないと誓ったのを思い出した。
こちらを見上げるはるひの目が熱を含んでいるように見えるのは俺の錯覚だろうか?
触れて欲しそうに少し顎を上げて伸び上がるのは、触れていいとの許可だろうか?
赤みを含んだ頬に、掌を添わせて誘うようなこの匂いに素直に従ってもいいのだろうか?
「あーっ」
気まぐれに上がったヒロの笑い声にはっとして姿勢を正す、名残惜し気に絡んでいた視線を振り切り、良く休め と言って扉に向かう。
ヒロの俺を呼び戻そうと上げる声と、はるひの視線を背中に感じながら扉のノブに手をかける。
「クラド様」
はっきりとした呼び止めに思わず振り返った。
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