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おまけ 33
カァ と顔の熱さを手の甲で確認してから、部屋に一人だけと言う特権を生かして尾をバタバタと振り回す。
はるひ曰く、太くて黒くて立派な尾が風を送ってくれて少しは涼むが、それでも顔の赤みは引いてはくれていないように思える。
「なんなんだ 母上も 」
母への思いを見透かすようなはるひも!
小さく呻いて、赤い顔を隠すように突っ伏した。
とんとんとん と押し殺してはいるが、俺の耳ははっきりとはるひの足音を拾ってぴくりと自然に動く。
顔 は……
「 っくそ」
まだ熱い気がする顔を隠すために頭からベッドに潜り込み、寝ているふりを装うことにする。
せっかくいつもとは違う状況なのだから、二人のんびりと様々な話をすることもできるだろうけれど、この顔をはるひに見られるのはどうにも気恥ずかしかった。
本来なら、はるひに母のことを尋ねるべきなのだろうが……
「 ────クラド様が寝てるから、しぃーだよ?」
小さくピンク色の唇に指を押し当ててヒロに言い聞かせているのかと思うと、艶を含むはるひの唇が指に押されているのを見たくてたまらなくなったけれど……ぐっと我慢して寝たふりを続ける。
「 」
小さく軋む音はヒロを赤ん坊用のベッドに寝かせた音だろうか?
はるひがヒロをベッドに寝かせ、最後に愛おしそうに頭を撫でて離れていく光景を見るのが好きだ。はるひの産んだ俺の子に溢れんばかりの愛情を持ってくれているのだと、見る度に思えるから。
それを見たくて、むずむずとするけれど振り返ることは出来ず、そっと顔に触れてみるけれど頭を覆っているせいか顔がまだ赤いのかそれとも熱がこもって熱いのか判断できなかった。
どうにかできないものかと思案していると、ベッドがギシ と微かな軋みを上げて少しだけ沈み込んだ。
「クラド様、起きてらっしゃるんでしょう?」
少し咎めるようでもある声音は、けれど完全にからかいのそれだった。
「……ばれていたのか」
「だって普段、団子になって寝るなんてことないじゃないですか?」
なるほど と思いながら起き上がった俺を見て、はるひは小さく笑って見せる。
かすがのような銀でできた薔薇が咲くような笑みではなく、温かな色合いの可愛らしい花があたり一面に咲き誇るような、どこまでも俺好みの笑い方だ。
「顔が赤いですよ?熱ですか?」
そっと小さな手が顔を包み込んできて、恥ずかしいから触れて欲しくないと思いつつも、反面では嬉しくて今にも尾を振ってしまいそうになる。
もう子供もいるし、兄に婚姻許可証を出してもらって正式な伴侶だけれど、やはり幼い頃から言い聞かされていたせいか人の前で尾を振るのは行儀が悪いと思ってしまうのはしかたがない。
理性を総動員させて尾を宥めながら、頬を包む手を取って口付ける。
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