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おまけ 56
しおりを挟む「私もです!閣下!」
ディアもラムスのことで気が気ではなかっただろうに、文句の一つも言わずによく仕えてくれた。
「私はもうそう呼ばれる身分ではない。二人とも、いや、俺の隊の皆は俺にとって誇りだ、他の者達にもそう伝えてくれ。そして、これからも王によく仕えてくれ」
「嫌ですっ!」
間髪入れずに返された言葉に苦笑が漏れそうになるが、それをぐっと堪えて歩き出す。
「お待ちくださいっ!」
王城ののどかさを裂くような声に耳がぴくりと動いた。
破られた静けさが戻るのを待ちきれないように、ラムスは両手を拳の形に握って怒鳴るように声を張り上げる。
「ヒロ様はどうされるんですか!はるひ様だけでなく閣下までっ」
「ラムスっ!」
ディアのラムスを咎める声も鋭い。
「……そうだな、大きくなったら思い出話でも語ってやってくれ」
その名前を出せば思い直すと思ったのかもしれない。
俺だってそう思う。
あれだけ望んだはるひとの子だ。
他と比べて成長が遅いことを悩んだりもしたが、利発そうにこちらを見る二人に似た黒い瞳は愛しくて仕方がない。
叶うならば、巣立つその時を祝ってやりたかったが……
だからと言って、生きている可能性のあるはるひを死んだものとして諦めることなんてできない。
もう一度俺を呼び止める声が上がったけれど、今度は足を止めずに歩き続ける。
ラムスが出したヒロの名に後ろ髪を引かれる思いで城を見上げると、今はどの部屋にいるんだろうかと自然と幾つもある窓の一つ一つを視線でなぞった。
かすがに気付かれないようにと、ミロクの居る棟で世話をしていると報告されたから、あちらの方にある棟だろう。
そこには怪我を負った母と陛下もいるとスティオンが言っていた。
話ではそこまで酷い怪我ではないから気にする必要はないと言っていたが、護り切れなかったのには変わりない。
「不甲斐ない 」
平和ボケと謗られても仕方がないのに、はるひが連れ去られたからかそのことで陛下は俺を責めるようなことを言いはしなかったが、騎士としてその場に居ながら何も護ることができなかった自責の念は消えることはなかった。
伴侶を護れなかったこと、
陛下を護れなかったこと、
そんな俺の話を成長した際にヒロはどう言う話を聞くだろうか?
甲斐性のない親と憤るだろうか?
それとも、傍にいて欲しかったと嘆くだろうか?
「……情けない親ですまないな、いつまでも愛してるぞ」
視線の先のどこかの窓にいるヒロに向かってそう言葉を零すことしかできなかった。
食料の補充を頼むと、店主は怪訝な顔をした。
この村は一本道の終点にあり、明らかにさっき村に辿り着いたばかりでここからどこに向かうのか……と問いたげな目でこちらを窺うも、目深に被ったフードを引っ張って顔を隠すと、仕事と割り切っているからか何も言わずに黙って商品を並べていく。
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