246 / 303
おまけ 122
しおりを挟む化け物だとは思っていたけれど、かろうじて人の形を保っていたそれを脱ぎ捨てて……魔人はもう化け物そのままだ。
「う゛ 」と、低く音が聞こえた時、まるで大地が唸るかのような辺りを震わせるそれが叫びの始まりだとはわからなかった。
「ぅ゛ぁ゛ぁ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛────っ!!!」
どっと叫び声が衝撃となって体にぶち当たる。
反射的に耳を覆ったけれど、それでも至近距離で聞いた魔人の叫びはぐらぐらと脳を揺さぶるような強さだ。
「 ────閣下っ!」
わんわんと音が残る耳に確かに聞こえたのはラムスの声だった。
後から俺の隊が着く と言ってはいたが……
「まさか、全員来たのか……?」
山だと言うのに、俺の……いや、本当ならば元俺の隊の全員が整列してさっと敬礼をした。
もう俺は騎士であることを放棄し、まとめるべき団長と言うわけでもないのだからそんなことをする必要もないのに……
「勿論です! 閣下直属部隊『漆黒』、全員馳せ参じましたよ」
ハンネスがなつこい目に力を入れてそう宣言すると、俺の方に全員の視線が集まったのが感じ取れて……
「 っ、敵は神の力を摂取した魔人! これまでのものより大きく、かつて都を襲ったものと同じだと思え!」
手早くそれだけを告げて火薬玉を取り出す。
例え大きくなろうとも、今現状俺達が知っている対処の仕方なんて、聖別された火薬で焼き、そこを削ぎ、そして再生しないようにそこをまた聖別された火薬で焼くと言う手順しかない。
魔人が火に炙られることに弱いと発見できたのはよかったことではあるが、いかんせんこれでは長期戦を免れなかった。
「クラ 閣下! それを!」
隊員達がさっとスリーマンセルを組み散っていく中で、ダンクルは俺に駆け寄るとスティオンが投げてよこした鞄を指さす。
「怪我でもされましたか⁉︎」
「違う! その中の短剣を取れ」
どうして短剣だったんだろうと思っていたが、言葉通りそれを取り出して見せる。
なんの変哲もない増産された短剣だと思ったけれど、わざわざこうして言うのだからもしかしたら特別なものなのだろうか?
「これは?」
「それはミロクが聖別したものだ」
そう言われて、はるひと試した際の反発を思い出してさっと眉間に皺が寄った。
もしも戦闘の最中にあんなことが起こったら と思うと、これを持たせた意味が分からずにダンクルを見るしかできない。
俺の視線に頷きながら、ダンクルは「刺せ」と簡潔に告げる。
刺す? どこを? 誰を?
答えは魔人のどこかをこれで刺せ と言うものなのだろうが、どうしてそれをしろと言われたのかがわからない。
「どう言うことですか?」
26
あなたにおすすめの小説
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる