248 / 303
おまけ 124
しおりを挟むけれど、物資も少なく隊が合流したとは言え人数も多くないこの状況で我々ができることは、生きて帰り魔人の情報を事細かに残すことだ。
そしてそれを元に対策を練り、そして改めてこの脅威となる魔人を排除しなくてはならない。
それにここには、保護しなければならない人もいる。
「先代巫女のエステスを確保しろ! 暴れるならば拘束を!」
指示を出しながら時折思い出したように振り下ろされる触手に対して火薬を投げつけ、切りかかる。
大きさのせいもあるのだろうが巨大化していく魔人の皮膚は固く、今までのようには素直に攻撃が通らなくなってきた……と言うのが率直な感想だった。
「ゃっ! 私はッ! 放せ!」
魔人の向こう、触手に守られるようにしていたため、もしや巨大化した魔人に潰されているのではとひやりともしたが、幸いだったようでエステスは隊員に捕まって逃げようと必死に身を捩っている。
「あの短剣、刺さるか?」
「……わかりません、同じ個所を狙って……そこばかりを傷つければあるいは……」
そうでなければ、安易に突き刺すと短剣の方が折れてしまいそうだ。
武器そのものが壊れてしまうと、そこに聖別で付与された力自体も霧散する。そうなってしまったら、ダンクルが言う作戦はどうにもできなくなってしまう。
「俺はこの短剣を刺してから離脱します。ダンクルは先代巫女と共に山を下りてください」
「おい、合図用の笛は私が持っているんだぞ」
「じゃあ寄越してください」
さっと手を差し出すも、ダンクルは話に出た笛を俺の手に乗せようとはしない。
すぐ傍で爆発が起こり、隊の中には遠巻きに見ていた魔物がにじり寄ってきたのに気付くのが遅れて負傷したものも見受けられる。
そんな質の悪い冗談に縋っている場合ではないのだ。
「へ ダンクルっ!」
きつい声を出すと、ルキゲ=ニアを軽々と肩に担いて魔人をしゃくる。
「俺が削ぐ、閣下がタイミングを合わせて火薬をぶち込め」
「なに をっ勝手なことを!」
「謹慎でもなんでも、甘んじて受けてやるよ」
そう言うとダンクルは男らしい、恐ろしいほど整った顔にゆったりとした笑みを見せてからさっと走り出した。
隊は、退路を確保しようと瘴気と魔物に切りかかる者と、魔人を注視する者、それからエステスを取り押さえようとする者とに分かれた。エステスは隊員が手を伸ばすと素早い動きで触手の裏に入り、まるで翻弄するように逃げ続ける。
「かぇ 帰らない! 俺は帰らないんだから!」
その声はまるで遊園地からの帰宅を嫌がる小さな子供のようだった。
「先代巫女様、ご不快は重々承知ではありますが、今このままでは御身の安全を確保しきれません」
36
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。
小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。
「マリアが熱を出したらしい」
駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。
「また裏切られた……」
いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。
「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」
離婚する気持ちが固まっていく。
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*本編完結しました
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる