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おまけ 142
「愛する者と共に、生きていくんです。例えこの先が死地だったとしても、その更に先である未来を自分達の子に残すために、私は戦わなくてはならないんです」
見上げた穏やかそうな顔に存在する双眸はまるで曇りのない鏡のようにオレを写し取って、決意を口に乗せたその表情をオレに見せる。
「偉大なるコリン=ボサ神よ、私を 」
つい と傷だらけの指先が持ち上がり、クラドの肉厚な唇を押す。
それは言葉を紡ぐなと言う合図であり、オレの言葉はもうそれ以上意味をなさないと言われたも同然で……
「安心おし、時は満ちた。行っておいで ────我が巫女よ」
違う と言い返そうとしたその時、
────ドオオオオオォォォォン‼︎
ビリビリと体を震わす音量に体中を叩かれた気分がして飛び上がった。
大きく肺を膨らませて「は 」と息を吸い込んではみたものの、ドオオン ドォーン と腹に響くような音が続いているせいで、驚いて吐くことを忘れてしまいそうだった。
「くそがぁぁぁ! 落ちろぉぉぉぉぉっ!」
怒声に体をすくめて状況を見ようと辺りを見渡していると、そこはさっきまでいた場所とはまったく違う場所で、きょとんとしているとさっといい香りが漂ってきてかすが兄さんが抱き着いてきた。
体温を感じてほっとするべきなのに、先程までクラドそっくりの別人……神に会っていたので、素直に名前を呼ぶことができない。
「はるひ? ……どうした? 『クソ神にいじめられたか?』」
深い銀色の柳眉を歪めてオレの顔を覗き込み、熱を測るために手を額に置いたり脈をとったりして忙しなく周りを飛び回る。
「『クソ 神……』」
かすが兄さんの言葉を繰り返して、あの空間で出会った神の様子を思い出して跳ねそうになる胸を押さえた。
アレは神だと本能が答えているのは十分にわかっているのに、受け答えから感じることのできた神聖な雰囲気は……オブラートに包んで言うならば、好感の持てるものではなかった。
────ドォォォオンッ!
すべての音を集めたかのような大きな音が木霊して、返事の言葉を忘れてしまうくらいに驚いて飛び上がってしまう。
「兄さんっ! 兄さんっ! ……今、いま……クラド様は?」
小さなドン! ドン! ドン! と砲弾のような爆発音が聞こえて、もしやまた大群となった瘴気や魔物達が現れてこちらに向かってきているのか……と、さっと血の気の引くのを感じながら立ち上がり、横たえられていたらしい部屋からふらふらと転がるようにベランダへと出る。
目に飛び込んできたのは、銀の雷に打たれて白銀と陽光の火花を散らす爆発だった。
「 ────っ!」
その場にいた者すべてが息を飲んだ。
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