狼騎士は異世界の男巫女(のおまけ)を追跡中!

Kokonuca.

文字の大きさ
266 / 303

おまけ 142




「愛する者と共に、生きていくんです。例えこの先が死地だったとしても、その更に先である未来を自分達の子に残すために、私は戦わなくてはならないんです」

 見上げた穏やかそうな顔に存在する双眸はまるで曇りのない鏡のようにオレを写し取って、決意を口に乗せたその表情をオレに見せる。

「偉大なるコリン=ボサ神よ、私を      」

 つい と傷だらけの指先が持ち上がり、クラドの肉厚な唇を押す。
 それは言葉を紡ぐなと言う合図であり、オレの言葉はもうそれ以上意味をなさないと言われたも同然で……

「安心おし、時は満ちた。行っておいで  ────我が巫女よ」

 違う と言い返そうとしたその時、


 ────ドオオオオオォォォォン‼︎


 ビリビリと体を震わす音量に体中を叩かれた気分がして飛び上がった。
 大きく肺を膨らませて「は 」と息を吸い込んではみたものの、ドオオン ドォーン と腹に響くような音が続いているせいで、驚いて吐くことを忘れてしまいそうだった。

 
「くそがぁぁぁ! 落ちろぉぉぉぉぉっ!」

 
 怒声に体をすくめて状況を見ようと辺りを見渡していると、そこはさっきまでいた場所とはまったく違う場所で、きょとんとしているとさっといい香りが漂ってきてかすが兄さんが抱き着いてきた。
 体温を感じてほっとするべきなのに、先程までクラドそっくりの別人……神に会っていたので、素直に名前を呼ぶことができない。

「はるひ? ……どうした? 『クソ神にいじめられたか?』」

 深い銀色の柳眉を歪めてオレの顔を覗き込み、熱を測るために手を額に置いたり脈をとったりして忙しなく周りを飛び回る。

「『クソ  神……』」

 かすが兄さんの言葉を繰り返して、あの空間で出会った神の様子を思い出して跳ねそうになる胸を押さえた。
 アレは神だと本能が答えているのは十分にわかっているのに、受け答えから感じることのできた神聖な雰囲気は……オブラートに包んで言うならば、好感の持てるものではなかった。


 ────ドォォォオンッ!


 すべての音を集めたかのような大きな音が木霊して、返事の言葉を忘れてしまうくらいに驚いて飛び上がってしまう。

「兄さんっ! 兄さんっ! ……今、いま……クラド様は?」

 小さなドン! ドン! ドン! と砲弾のような爆発音が聞こえて、もしやまた大群となった瘴気や魔物達が現れてこちらに向かってきているのか……と、さっと血の気の引くのを感じながら立ち上がり、横たえられていたらしい部屋からふらふらと転がるようにベランダへと出る。

 目に飛び込んできたのは、銀の雷に打たれて白銀と陽光の火花を散らす爆発だった。

「  ────っ!」

 その場にいた者すべてが息を飲んだ。


感想 0

あなたにおすすめの小説

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

​転生したら最強辺境伯に拾われました

マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。 ​死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。

人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます

七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。 歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。 世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。 気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

俺は夜、社長の猫になる

衣草 薫
BL
冤罪で職を追われた葵は、若き社長・鷹宮に拾われる。 ただし条件は――夜は“猫”として過ごすこと。 言葉を話さず、ただ撫でられるだけの奇妙な同居生活。 タワマン高層階の部屋で、葵は距離を崩さない鷹宮に少しずつ惹かれていく。 けれど葵はまだ知らない。自分が拾われた本当の理由を。