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落ち穂拾い的な 幼い王太子の初恋
漆黒を纏う絶望の守護者と言う噂を聞かされた時は、剣聖の称号を得るために作り上げられたただの飾りだと思っていた俺は、実際にその戦いっぷりを見て腰を抜かしたことがある。
次々と敵を薙ぎ払いながら駆けていく小さな少女は、けれどその戦場では誰よりも強かった。
細く華奢な体なのに自分よりも大きな大剣を振りかざし、黒い髪と尾を靡かせて父に敵対するものすべてを蹂躙する姿は確かに絶望がふさわしかったし守護者でもあった。
それは、俺の心を奪って離さない美しさだった。
「……父上、ロニフを行かせたと言うのは本当でしょうか?」
聖シルル王国で剣聖と呼ばれていても、それが他国でもそうかと言われれば違う。
だから真の剣聖を目指す者は世界に認められるために聖シルル王国を含む五大大国にその力を認めさせに旅立たなければならなかった。
それぞれの国で認められるため……とは言え、それは同時に剣聖になりうる力量を持つ者を他国に流出させる危険性を伴う行為でもあって……
それをわかってはいないはずはないのに、父は別段慌てた様子もなく長い尾を優雅に揺らすだけだ。
「だからどうした」
次の王を継ぐ息子だと言えど父は俺に対して興味はなかった。
うるさいとばかりに視線を上げずに告げられた言葉は短く冷たくそっけない。
「ロニフを手放しても 」
「お前はあれが戻らないとでも」
俺の言葉を遮るようにため息交じりに返された言葉は、逆にどうしてそれほど言い切れるのか聞き返したくなるほどだ。
ロニフほどの剣士ならばどの国も厚遇でもてなす。
そうなればあの漆黒の騎士は二度とここには帰ってこないことになる。
父の興味があるのはミロクだけだ。
「どうしてそんな 」
「では逆に、出ると言うロニフを留めておけると思うのか」
威圧的な父の言葉に俯くしかできなかった俺は、そのことに対してそれ以上話すことができるわけもなく……
とは言え、ロニフは俺の心配を他所に半年で四国の王にその実力を認めさせて帰ってきたのだけれど。
まるで買い物から帰ってきたかのように乱れも疲れもみせない姿で戻ってきた時には、父とロニフとの間にある見ることができない信頼とかそう言ったものに悔しさを覚えた記憶がある。
父はロニフが帰ってくることを疑わなかった。
ロニフも真っ直ぐに帰ってきた。
父とロニフの関係が王と騎士と言う立場から逸脱していないことはわかってはいたと言うのに、ロニフを捕らえて離さないそのあり方にいらつきを感じた。
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