言えない言葉

Kokonuca.

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言えない言葉

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「そんな事、ないだろ…」 

 二人の関係がバレた次の日に、片方が他所に遣られるなんて、作為以外の何者でもない。 

「………」 

 白衣の袖を掴んで引くと、視線を合わせないままに章が振り向いた。 
 俯いた視線を拾おうとするも、章の視線は掴めない。 

「偶然ですよ」 
「そんな訳あるかっ!!」 
「鏑木院長が公私混同をされない事はよく知っています。だから、偶然です」 

 視線が絡まないのは、章自身そう思っていないからだろう。 
 腕を掴んで揺さぶった。 

「ちが…「それを認めてしまうと」 

 静かな声だったのに、言葉を遮られる。 

「院長と貴方の仲が誤解ではなかったと、なってしまいます」 
「……」 
「あんな時間に部屋を訪ねたり、名前で呼ばれていたり、貴方が院長の家族に気兼ねしなくてはならなかったりする。そんな関係を…認めなくてはならなくなってくるんです」 

 ぎゅっ…と抱き締められ、 息が止まる。 

「やはり、貴方が院長の愛人だったと、認めなくてはならなくなる」 

 止まった息が、吐き出せずに胸の中で石になる。 
 違うと言う言葉も、塞がれた唇では告げることもできない。 



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