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妹は廃人ゲーマー?
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ーー暗いとある部屋に二つの光が現れる
そして、その光の前には2人の男女の顔が映し出される。
2人の表情は険しく、片方は頭を抱え、もう片方は今にも光に飛びかかっていきそうな雰囲気を醸している。
彼らは一体何をそんなに思い詰めているのだろうか……
その光をよく見ると
「YOU LOST」
の文字が虚しくも映っていた
「だーーーーーー!!勝てねぇーーーー!!なんだこのゲーム!鬼畜すぎるだろ!!」
俺は「ヴァリスタ」と言うオンラインRPGを妹とプレイしていた。
「おにぃ!なんであそこで支援魔法撃たなかったの!!あとちょっとだったじゃん!!」
生意気にも敗因を俺のせいにしてくる妹、種崎しずくは「プンプン」と音が出てきそうなほど怒っていた。
「しょうがないだろ……まさかラストの体力ゲージで予測不能の全画面即死攻撃とかわかるわけないだろ……」
俺たちが今プレイしている「ヴァリスタ」は今日、正確には午前0時にサービスを終了するはずだった。
だった、というのはこのゲームの終了を迎える最後のクエストとして超鬼畜難易度のイベントクエストが最終日限定で始まった。
ラストイベントだけあって、盛り上げたかったのか一番初めにクリアしたプレイヤーに賞金100万円が贈られるらしい。
初めは「ヴァリスタ」プレイヤー全員がこのイベントに躍起になった。二人一組でこのイベントに参加できるので掲示板が勧誘コメントで溢れかえっていた。
正直なところ俺はこのゲームのをそこまでやり込んでおらず、たまに2chで話を聞くくらいしかこのゲームに関わっていなかった。
しかし、妹は違う。
このゲームをリリース当初から初め、地道にレベル上げをして今や、最古参プレーヤーとしてこのオンラインゲームの前線を走っていた。
だが、その歩みも今日で終わりだ。このイベントが終わったらもうログインは出来ない。
だから、最後までこのイベントをクリアして気持ちよく終わりたい、そう思ったんだろう。
……だからこそ、俺に泣きついていたんだろう
しずくは16歳の華の高校生だ。容姿もモデルだった母に似たのか、整った容姿に、綺麗な金髪をツインテールにした漫画の女の子みたいな雰囲気を持っている。
さぞ学校ではリア充しているのだろうと思われているかもしれないが、残念……
こいつは「残念」美少女なのだ
友達は何人かいるそうだが、ネトゲをやっている友達はいないらしい。
恋愛のほうは全く興味がないらしく、俺が「彼氏の一人でも作ってみろよ」と煽ったら
「彼氏作っている暇があったらネトゲのイベントポイント稼ぎ時間が減ってランキング報酬どころか、累計報酬すらもらえないに決まってるでしょ、そんなこともわからないの?」
ってキレられた。
……まぁ妹がこうなったのも少しは俺が原因であったりもする
元々は俺がいろいろなゲームをやっているのをしずくは見て、よく俺がゲームのことについていろいろ教えていた。
それがきっかけだったのかは知らないが少なくとも無関係ではないだろう。
そんなことを兄ながら思って付き合っているわけだ。
本当ならやめろと言ったほうがいいかもしれないが俺はそう思っていない。
自分が楽しいと思えることを本気になってやる。
それが俺自身のモットーであり、しずくにいつも言ってきたことだ。
だから今更、都合よくお前はダメだなんて言わないし言うつもりもない。
だけど……
「全くおにぃはこの手のゲーム本当下手くそだよね!いつも『俺はゴリ押しは嫌いだ、戦略こそ全てだ!』なんて言ってるけど、思いっきりボコられてんじゃん!もうイベント始まってから何回死んだの!?私のサブ垢だって本垢に劣らないくらいに強いんだよ?ねぇバカなの?もう8時間はやっているのにまだクリアできないとかヤバいんですけど?」
この妹は……!
人がせっかく一緒に遊ぶ友達のいない可哀想な子を思って手伝っているのになんて言い草だ!
「仕方ないだろ!俺はこういうゲームより『ポヨポヨ』とか『優雅王』とかのパズルとかカードゲームとかの方が得意なんだよ!アクションゲームは下手だって言ったろ!!」
「だからって私が言ったことすぐ忘れてんじゃん!モンスターの形態が変化するとき気をつけてねーって言ったじゃん!!」
「知ってるわ!だが形態中にポーション飲んで回復するのは普通だろ!わざわざダメージ受ける覚悟で全回復のポーション飲んだのに即死なんて飛んでくるなんてわかるか!!?」
「それで死んだら元も子もないでしょーーおにぃってバカなの?」
「こいつ二回も言いやがった!?」
一回目はわざわざスルーしたのに!!
「はーー、もう無理なのかなこのイベクエ。未だクリア数0だし」
「おう、諦めろ諦めろ。俺はもう眠いんだ。おやすみーー」
時刻はもう3時を回っている。悪い子もそろそろ眠くなる時間だ。俺はしずくのベッドに寝っ転がる
眠気には勝てなかったよ……
「まだよ……まだよおにぃ!!」
しずくが叫ぶと俺を無理やり起こし口にモンスターエネルギー、通称「モンエナ」を無理やり飲ませる。
「ぷっは!!何すんだ妹よ!」
「ふふふふふ、これを飲んだからにはあと2時間はいけるよね?そうだよねーー!?」
アカン。妹が完全におかしくなってしまった……
「勘弁してくれよ……明日大学の講義もあるんだぞ……」
「いいからほら座って」
俺の言うことはお構いなしですか……
「まったく、せっかくクリア数0だから運営さんがイベントの時間を延ばしているのに寝るなんて失礼でしょ。ほら、クエスト受注したから受けて」
「はいはい……」
もう0時をとっくに回っているのにプレイできているのはまだ誰一人イベントクエストをクリアしていないからだ。
最初のうちはみんな盛り上がっていたが、あまりにも鬼畜なため、時間までにだれもクリアできず、それじゃキリが悪いということで延長したんだと思う。
今ではあんなに盛り上がっていた掲示板もただの愚痴を言うだけのスペースになっている。
そして、俺のとっても延長の知らせは悲報となった。
「じゃあ、出発するわよ!」
「へーいへい」
ゲームの受付のお姉さんに「行ってらしゃい!」とこれで何回言われただろうか?
もう嫌味にしか聞こえない……
「さあおにぃ!次こそ勝つよ!」
「ほーいほい」
何度も見たこのラスボス、「ヴァリスタ」
ゲームタイトルと同じ名前ということは運営は最後のモンスターは決めてあったんだろう。
最後にふさわしい名前ですごく好きだ。
だが、それ以外はクソだ。
このラスボスは全能力がバカみたいに高く、弱点を攻撃しなきゃまともにダメージも通らず、爪の攻撃でかすっただけで致命傷という。何より予測不可能な動きをしてくるので回避しずらいったらありゃしない。
しずくは長年の経験と勘で回避しているが俺にはそんなものはない。
「おにぃ!くるよ!」
「うお!あぶね!」
モンスターの一撃で目が覚めた。
適当にやって勝てる相手なんかじゃない。
ラスト一回……集中するぞ
集中した甲斐があったのかラスト体力ワンゲージ前までなんとかやってきた。
「おにぃ!これ使って!」
「これは……『イージスの盾』か!」
効果はあらゆる即死攻撃を無効化する盾だ。だけどこれは……
「お前はなくて大丈夫なのか?」
「大丈夫!2個あるから!」
えっへん!とない胸を突き出してドヤる。
「つか持ってるなら最初から渡せよ……」
「だっておにぃ『限定的な効果など不要だ!』とか言ってたじゃん」
「まぁそうだけど……」
だって攻撃、防御、回避が上がるこの防具のほうが強いし……
「てりゃーーー!!」
しずくが渾身の一撃を与えるとモンスターは倒れ、最終形態へと変わった。
即死の波動攻撃も「イージスの盾」で防いだ。
「さあ、ここから何もわかんないぞ……」
最終形態の行動は 未知の領域だ。だけどもうリトライはしたくない!
「おにぃ……ここまでついてきてくれてありがとね」
「ふっ、何をいう妹よ。お兄ちゃんは妹のためならなんだってできる最強の相棒さ!」
俺が笑って答えるとしずくは可愛い笑顔を浮かべる。
そうか……こいつも俺に感謝するということを覚えたか……
「ありがとう!じゃあおにぃ……頑張って回避して行動のパターン解析してね」
「…………じょーーーーとーーーだよ!!ここまで来たからにはやってやるよ……クリアしてやるよ!!!!」
妹に軽く期待を裏切られてもうヤケだ!
「このクソリスタだか!覚悟しろーー!!」
そして、その光の前には2人の男女の顔が映し出される。
2人の表情は険しく、片方は頭を抱え、もう片方は今にも光に飛びかかっていきそうな雰囲気を醸している。
彼らは一体何をそんなに思い詰めているのだろうか……
その光をよく見ると
「YOU LOST」
の文字が虚しくも映っていた
「だーーーーーー!!勝てねぇーーーー!!なんだこのゲーム!鬼畜すぎるだろ!!」
俺は「ヴァリスタ」と言うオンラインRPGを妹とプレイしていた。
「おにぃ!なんであそこで支援魔法撃たなかったの!!あとちょっとだったじゃん!!」
生意気にも敗因を俺のせいにしてくる妹、種崎しずくは「プンプン」と音が出てきそうなほど怒っていた。
「しょうがないだろ……まさかラストの体力ゲージで予測不能の全画面即死攻撃とかわかるわけないだろ……」
俺たちが今プレイしている「ヴァリスタ」は今日、正確には午前0時にサービスを終了するはずだった。
だった、というのはこのゲームの終了を迎える最後のクエストとして超鬼畜難易度のイベントクエストが最終日限定で始まった。
ラストイベントだけあって、盛り上げたかったのか一番初めにクリアしたプレイヤーに賞金100万円が贈られるらしい。
初めは「ヴァリスタ」プレイヤー全員がこのイベントに躍起になった。二人一組でこのイベントに参加できるので掲示板が勧誘コメントで溢れかえっていた。
正直なところ俺はこのゲームのをそこまでやり込んでおらず、たまに2chで話を聞くくらいしかこのゲームに関わっていなかった。
しかし、妹は違う。
このゲームをリリース当初から初め、地道にレベル上げをして今や、最古参プレーヤーとしてこのオンラインゲームの前線を走っていた。
だが、その歩みも今日で終わりだ。このイベントが終わったらもうログインは出来ない。
だから、最後までこのイベントをクリアして気持ちよく終わりたい、そう思ったんだろう。
……だからこそ、俺に泣きついていたんだろう
しずくは16歳の華の高校生だ。容姿もモデルだった母に似たのか、整った容姿に、綺麗な金髪をツインテールにした漫画の女の子みたいな雰囲気を持っている。
さぞ学校ではリア充しているのだろうと思われているかもしれないが、残念……
こいつは「残念」美少女なのだ
友達は何人かいるそうだが、ネトゲをやっている友達はいないらしい。
恋愛のほうは全く興味がないらしく、俺が「彼氏の一人でも作ってみろよ」と煽ったら
「彼氏作っている暇があったらネトゲのイベントポイント稼ぎ時間が減ってランキング報酬どころか、累計報酬すらもらえないに決まってるでしょ、そんなこともわからないの?」
ってキレられた。
……まぁ妹がこうなったのも少しは俺が原因であったりもする
元々は俺がいろいろなゲームをやっているのをしずくは見て、よく俺がゲームのことについていろいろ教えていた。
それがきっかけだったのかは知らないが少なくとも無関係ではないだろう。
そんなことを兄ながら思って付き合っているわけだ。
本当ならやめろと言ったほうがいいかもしれないが俺はそう思っていない。
自分が楽しいと思えることを本気になってやる。
それが俺自身のモットーであり、しずくにいつも言ってきたことだ。
だから今更、都合よくお前はダメだなんて言わないし言うつもりもない。
だけど……
「全くおにぃはこの手のゲーム本当下手くそだよね!いつも『俺はゴリ押しは嫌いだ、戦略こそ全てだ!』なんて言ってるけど、思いっきりボコられてんじゃん!もうイベント始まってから何回死んだの!?私のサブ垢だって本垢に劣らないくらいに強いんだよ?ねぇバカなの?もう8時間はやっているのにまだクリアできないとかヤバいんですけど?」
この妹は……!
人がせっかく一緒に遊ぶ友達のいない可哀想な子を思って手伝っているのになんて言い草だ!
「仕方ないだろ!俺はこういうゲームより『ポヨポヨ』とか『優雅王』とかのパズルとかカードゲームとかの方が得意なんだよ!アクションゲームは下手だって言ったろ!!」
「だからって私が言ったことすぐ忘れてんじゃん!モンスターの形態が変化するとき気をつけてねーって言ったじゃん!!」
「知ってるわ!だが形態中にポーション飲んで回復するのは普通だろ!わざわざダメージ受ける覚悟で全回復のポーション飲んだのに即死なんて飛んでくるなんてわかるか!!?」
「それで死んだら元も子もないでしょーーおにぃってバカなの?」
「こいつ二回も言いやがった!?」
一回目はわざわざスルーしたのに!!
「はーー、もう無理なのかなこのイベクエ。未だクリア数0だし」
「おう、諦めろ諦めろ。俺はもう眠いんだ。おやすみーー」
時刻はもう3時を回っている。悪い子もそろそろ眠くなる時間だ。俺はしずくのベッドに寝っ転がる
眠気には勝てなかったよ……
「まだよ……まだよおにぃ!!」
しずくが叫ぶと俺を無理やり起こし口にモンスターエネルギー、通称「モンエナ」を無理やり飲ませる。
「ぷっは!!何すんだ妹よ!」
「ふふふふふ、これを飲んだからにはあと2時間はいけるよね?そうだよねーー!?」
アカン。妹が完全におかしくなってしまった……
「勘弁してくれよ……明日大学の講義もあるんだぞ……」
「いいからほら座って」
俺の言うことはお構いなしですか……
「まったく、せっかくクリア数0だから運営さんがイベントの時間を延ばしているのに寝るなんて失礼でしょ。ほら、クエスト受注したから受けて」
「はいはい……」
もう0時をとっくに回っているのにプレイできているのはまだ誰一人イベントクエストをクリアしていないからだ。
最初のうちはみんな盛り上がっていたが、あまりにも鬼畜なため、時間までにだれもクリアできず、それじゃキリが悪いということで延長したんだと思う。
今ではあんなに盛り上がっていた掲示板もただの愚痴を言うだけのスペースになっている。
そして、俺のとっても延長の知らせは悲報となった。
「じゃあ、出発するわよ!」
「へーいへい」
ゲームの受付のお姉さんに「行ってらしゃい!」とこれで何回言われただろうか?
もう嫌味にしか聞こえない……
「さあおにぃ!次こそ勝つよ!」
「ほーいほい」
何度も見たこのラスボス、「ヴァリスタ」
ゲームタイトルと同じ名前ということは運営は最後のモンスターは決めてあったんだろう。
最後にふさわしい名前ですごく好きだ。
だが、それ以外はクソだ。
このラスボスは全能力がバカみたいに高く、弱点を攻撃しなきゃまともにダメージも通らず、爪の攻撃でかすっただけで致命傷という。何より予測不可能な動きをしてくるので回避しずらいったらありゃしない。
しずくは長年の経験と勘で回避しているが俺にはそんなものはない。
「おにぃ!くるよ!」
「うお!あぶね!」
モンスターの一撃で目が覚めた。
適当にやって勝てる相手なんかじゃない。
ラスト一回……集中するぞ
集中した甲斐があったのかラスト体力ワンゲージ前までなんとかやってきた。
「おにぃ!これ使って!」
「これは……『イージスの盾』か!」
効果はあらゆる即死攻撃を無効化する盾だ。だけどこれは……
「お前はなくて大丈夫なのか?」
「大丈夫!2個あるから!」
えっへん!とない胸を突き出してドヤる。
「つか持ってるなら最初から渡せよ……」
「だっておにぃ『限定的な効果など不要だ!』とか言ってたじゃん」
「まぁそうだけど……」
だって攻撃、防御、回避が上がるこの防具のほうが強いし……
「てりゃーーー!!」
しずくが渾身の一撃を与えるとモンスターは倒れ、最終形態へと変わった。
即死の波動攻撃も「イージスの盾」で防いだ。
「さあ、ここから何もわかんないぞ……」
最終形態の行動は 未知の領域だ。だけどもうリトライはしたくない!
「おにぃ……ここまでついてきてくれてありがとね」
「ふっ、何をいう妹よ。お兄ちゃんは妹のためならなんだってできる最強の相棒さ!」
俺が笑って答えるとしずくは可愛い笑顔を浮かべる。
そうか……こいつも俺に感謝するということを覚えたか……
「ありがとう!じゃあおにぃ……頑張って回避して行動のパターン解析してね」
「…………じょーーーーとーーーだよ!!ここまで来たからにはやってやるよ……クリアしてやるよ!!!!」
妹に軽く期待を裏切られてもうヤケだ!
「このクソリスタだか!覚悟しろーー!!」
応援ありがとうございます!
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