9 / 166
第一章
神界で…⑥
しおりを挟む
「さて、どこからか話そうかのう。紗代や、そなたがこの神界で目覚めるまでに、妾は閻魔大王に会いに行き、座敷わらしたち─」
「お話を割って申し訳ありません。天照大御神様。僕たちのことは『いつき』『みつき』とお呼びください」
突然話に割り込んだいつきちゃんに気を悪くすることもなく、天照大御神は「そうかえ」と頷く。
「では話の続きじゃ。妾が閻魔大王に会いに行っている間に、いつきとみつきは紗代の職場近くにおったモノノケや妖怪たちなどに何が起こったか話を聞いて回っておったんじゃ。そして、紗代の亡骸の前でオロオロとしておるアヤツを見つけ、紗代が亡くなった原因を突き止めたんじゃ。
ここまでは良いな、紗代」
「はい。天照大御神様」
「うむ。では、妾が閻魔大王に会いに行った訳じゃが、紗代の今後の事を相談しに行ったんじゃ」
「わたしの今後…?でもわたしは死んじゃったから今後も何も…」
今後の事をなんて…
死んじゃったから、天国か地獄行きのどちらかだよね…
「紗代、落ち着きなんし。それを今からちゃんと説明する」
天照大御神様がわたしの目を見つめ頷く。
「はい」
わたしはいったん深呼吸して、気持ちを落ち着ける。
「よし。ではな、紗代。紗代の本来の寿命はまだまだあったんじゃ。だが、アヤツのせいで紗代は突然に亡くなった。本来全うすべき寿命を多く残してな」
「ふぅっ…ほんにのう…」とつぶやきながら天照大御神様がため息をもらす。
「あの…天照大御神様?」
「あぁ、すまんな。紗代、いらん心配をかけたな」
「いえ、わたしは大丈夫です」
「そうかえ?
さて、紗代や、人は死ぬとその魂はどうなると思う?」
「どうなるって…黄泉の国へ行って三途の川を渡るイメージでしょうか??」
わたしは戸惑いながらも、天照大御神様の問いかけに答える。
「そうじゃ。正解じゃよ、紗代。よく知っておるな。
人は死ぬとその魂は黄泉の国へと送られる。そして最初の審判として三途の川を渡るんじゃ。
三途の川の橋を無事に渡れた者は極楽浄土へ。それ以外の者は生前に犯した罪状をもとに裁かれ、それぞれの地獄へと堕ちる。地獄へ堕ちた者は生前の罪状の分だけそこで己の罪を償うんじゃよ。そして償い終わった魂は極楽浄土へ。
極楽浄土で癒やされた魂は輪廻転生の輪へと巡るんじゃ。
ただな…紗代。今回の件はまったくのイレギュラー。そなたは本来の寿命を多く残して亡くなった。本来の寿命を全うせず、本来の死因とはまったく別の亡くなり方をした紗代の魂は黄泉の国へと送る事もてきず、輪廻転生の輪へと巡らせる事もできぬ…。それが閻魔大王が出した答えじゃ…。
申し訳ないの…紗代…。
こうして紗代の魂は今この神界にある」
天照大御神様は話終えると深々と頭を下げた。
「えっ…天照大御神様…っ!?頭をお上げくださいっ!!!!天照大御神様が悪いのではありませんっ…!!
でも…でもぉ…っ、それじゃあ、わたしはどうなるの…」
こわい…こわいょ…っ
わたしはこのままだとどうなる…
突然死んで、天国へも地獄へも行かず、輪廻転生の輪にも巡れない…
それじゃぁ…わたしは…っわたしは…消える…??
「紗代っ!?!?落ち着けっ!!!!落ち着くんだ、紗代っ!!!!」
「紗代ちゃんっ!?!?大丈夫っ!?落ち着いて、紗代ちゃん…っ!!!!」
このまま消えてしまうのではという恐怖で、あとから後から涙を流すわたしを、いつきちゃんとみつきちゃんが再びぎゅっと抱きしめてくる…
「お話を割って申し訳ありません。天照大御神様。僕たちのことは『いつき』『みつき』とお呼びください」
突然話に割り込んだいつきちゃんに気を悪くすることもなく、天照大御神は「そうかえ」と頷く。
「では話の続きじゃ。妾が閻魔大王に会いに行っている間に、いつきとみつきは紗代の職場近くにおったモノノケや妖怪たちなどに何が起こったか話を聞いて回っておったんじゃ。そして、紗代の亡骸の前でオロオロとしておるアヤツを見つけ、紗代が亡くなった原因を突き止めたんじゃ。
ここまでは良いな、紗代」
「はい。天照大御神様」
「うむ。では、妾が閻魔大王に会いに行った訳じゃが、紗代の今後の事を相談しに行ったんじゃ」
「わたしの今後…?でもわたしは死んじゃったから今後も何も…」
今後の事をなんて…
死んじゃったから、天国か地獄行きのどちらかだよね…
「紗代、落ち着きなんし。それを今からちゃんと説明する」
天照大御神様がわたしの目を見つめ頷く。
「はい」
わたしはいったん深呼吸して、気持ちを落ち着ける。
「よし。ではな、紗代。紗代の本来の寿命はまだまだあったんじゃ。だが、アヤツのせいで紗代は突然に亡くなった。本来全うすべき寿命を多く残してな」
「ふぅっ…ほんにのう…」とつぶやきながら天照大御神様がため息をもらす。
「あの…天照大御神様?」
「あぁ、すまんな。紗代、いらん心配をかけたな」
「いえ、わたしは大丈夫です」
「そうかえ?
さて、紗代や、人は死ぬとその魂はどうなると思う?」
「どうなるって…黄泉の国へ行って三途の川を渡るイメージでしょうか??」
わたしは戸惑いながらも、天照大御神様の問いかけに答える。
「そうじゃ。正解じゃよ、紗代。よく知っておるな。
人は死ぬとその魂は黄泉の国へと送られる。そして最初の審判として三途の川を渡るんじゃ。
三途の川の橋を無事に渡れた者は極楽浄土へ。それ以外の者は生前に犯した罪状をもとに裁かれ、それぞれの地獄へと堕ちる。地獄へ堕ちた者は生前の罪状の分だけそこで己の罪を償うんじゃよ。そして償い終わった魂は極楽浄土へ。
極楽浄土で癒やされた魂は輪廻転生の輪へと巡るんじゃ。
ただな…紗代。今回の件はまったくのイレギュラー。そなたは本来の寿命を多く残して亡くなった。本来の寿命を全うせず、本来の死因とはまったく別の亡くなり方をした紗代の魂は黄泉の国へと送る事もてきず、輪廻転生の輪へと巡らせる事もできぬ…。それが閻魔大王が出した答えじゃ…。
申し訳ないの…紗代…。
こうして紗代の魂は今この神界にある」
天照大御神様は話終えると深々と頭を下げた。
「えっ…天照大御神様…っ!?頭をお上げくださいっ!!!!天照大御神様が悪いのではありませんっ…!!
でも…でもぉ…っ、それじゃあ、わたしはどうなるの…」
こわい…こわいょ…っ
わたしはこのままだとどうなる…
突然死んで、天国へも地獄へも行かず、輪廻転生の輪にも巡れない…
それじゃぁ…わたしは…っわたしは…消える…??
「紗代っ!?!?落ち着けっ!!!!落ち着くんだ、紗代っ!!!!」
「紗代ちゃんっ!?!?大丈夫っ!?落ち着いて、紗代ちゃん…っ!!!!」
このまま消えてしまうのではという恐怖で、あとから後から涙を流すわたしを、いつきちゃんとみつきちゃんが再びぎゅっと抱きしめてくる…
193
あなたにおすすめの小説
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~
あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい?
とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。
犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!
公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜
咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。
元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。
そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。
「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」
軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続!
金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。
街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、
初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊!
気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、
ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。
本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走!
ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!?
これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ!
本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
転生幼女は幸せを得る。
泡沫 呉羽
ファンタジー
私は死んだはずだった。だけど何故か赤ちゃんに!?
今度こそ、幸せになろうと誓ったはずなのに、求められてたのは魔法の素質がある跡取りの男の子だった。私は4歳で家を出され、森に捨てられた!?幸せなんてきっと無いんだ。そんな私に幸せをくれたのは王太子だった−−
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる