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第三章
サロンにて⑤
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〈父:フリッツィSide〉
サロンは、エルが泣いて裏庭に行ってしまった時の様な重苦しい雰囲気では無く、穏やかな雰囲気にいつの間にか戻っていた。
「フリッツィよ、其方は仕事で一度王宮に戻るのであろう?
その前にエルシーアに伝えておくことがあるのなら、早めに伝えておくがよい」
そうだ。私は一度王宮に戻り、陛下に謁見の先触れをしなくてはいけない。しかも今回の謁見はただの家臣としてでは無く、“王国の裏の番犬”としての謁見だ。
謁見時間は皆が寝静まった頃となるだろう。
「シロガネ殿、お気づかいをいただき、ありがとうございます。
そうですね。明日からの事をエルとのペルル殿、シロガネ殿に話しておきましょう。
まず───
①王都の滞在期間は1週間
②明日の朝食後、転移陣を用いて王都のタウンハウスに移動
③明後日から本格的に活動開始。まずは7歳のお披露目の儀式にウィルフリードと保護者である私と妻のハリエットが参加
④お披露目の儀式の翌日に行われる、王宮でのお茶会は、ウィルフリード、バルドリック、ルイーザが参加
⑤その他残りの数日は、各自予定が組まれているお茶会やサロンに参加
⑥エルは絶対にひとりで行動しない。エルがひとりにならない様に、常にエミリーとアメリア、アンネリースが側に居る事
───大まかにこんな感じかな。エル、何か質問はあるかい?」
私はエルにわかりやすい様に、要点を掻い摘み、王都でのスケジュールを話した。
[おとしゃま、王都のタウンハウスではお庭で遊べる?]
「エル…。やっぱりエルはお外で遊びたいよね…」
我が家の王都のタウンハウスは貴族街にある。お互いの家と家とに距離はあるとはいえ、領地の庭ほど広い訳ではない。
そうすると、無いとは思うが、いつどこでエルの姿が人目に付くかわからない。
だけど、それを理由に1週間もエルを屋敷に閉じ込める訳にはいかない…。
「ペルル殿、シロガネ殿、何かいい案はないでしょうか?」
〔ん~。タウンハウスの屋敷自体には侵入者を防ぐ結界を張るつもりではいるけど。どうする?シロガネ〕
「そうだな。王都のタウンハウスに着いたら、エルには認識阻害の魔法を掛けよう。
タウンハウスの使用人達に顔合わせをした後に、認識阻害を掛ければ、タウンハウスに居る者以外には認識が出来ない、顔がぼやけて見える様になる筈だ」
[その魔法を掛ければ、お外で遊べる?]
「あぁ。ただ、顔がぼやけて見えるとはいえ、エルも十分に気をつけるのだぞ」
「うんっ!!ありがとう、シロガネっ!!」
シロガネ殿がエルの“外で遊びたい”という気持ちに配慮して、認識阻害の魔法を掛けてくださる事になった。
「シロガネ殿、ありがとうございます」
「「「「シロガネ様、ありがとうございます」」」」
私に引き続き、妻やウィルフリード、バルドリック、ルイーザが感謝の気持ちを伝える。
これで、エル以外の子ども達も安心して自分達の要件を済ませられるだろう。
「よかったわね、エルちゃん。
お母様はウィルやバル、ルイーザのお茶会やサロンに同席する事もあるから、あまり側に居てあげられないけれど、無茶をしてはダメよ?
ちゃんと、エミリーやアメリア、アンネリースの言う事を聞いてね?」
[かぁしゃま、大丈夫だよ。エミリーちゃんとはお洋服のお話をいっぱいするし、お外で遊ぶ時以外はポーション作りするのよ]
そうだった。エルはポーションの研究がしたいんだった。
何だろう…。今から物凄く不安な気持ちがするのは何故なんだろう…。
「ペルル殿、シロガネ殿。くれぐれも、どうかよろしくお願いします」
〔あ~っ…。うん…。わかったよ〕
「うむ。万事任せておけと、言い切れぬが、まぁ、任せておけ」
[う?どう言う事??]
エルがキョトンと小首を傾げる。
エルは毎回自分がやらかしているという、認識が薄いからね。
今回はどうなる事やら…。
サロンは、エルが泣いて裏庭に行ってしまった時の様な重苦しい雰囲気では無く、穏やかな雰囲気にいつの間にか戻っていた。
「フリッツィよ、其方は仕事で一度王宮に戻るのであろう?
その前にエルシーアに伝えておくことがあるのなら、早めに伝えておくがよい」
そうだ。私は一度王宮に戻り、陛下に謁見の先触れをしなくてはいけない。しかも今回の謁見はただの家臣としてでは無く、“王国の裏の番犬”としての謁見だ。
謁見時間は皆が寝静まった頃となるだろう。
「シロガネ殿、お気づかいをいただき、ありがとうございます。
そうですね。明日からの事をエルとのペルル殿、シロガネ殿に話しておきましょう。
まず───
①王都の滞在期間は1週間
②明日の朝食後、転移陣を用いて王都のタウンハウスに移動
③明後日から本格的に活動開始。まずは7歳のお披露目の儀式にウィルフリードと保護者である私と妻のハリエットが参加
④お披露目の儀式の翌日に行われる、王宮でのお茶会は、ウィルフリード、バルドリック、ルイーザが参加
⑤その他残りの数日は、各自予定が組まれているお茶会やサロンに参加
⑥エルは絶対にひとりで行動しない。エルがひとりにならない様に、常にエミリーとアメリア、アンネリースが側に居る事
───大まかにこんな感じかな。エル、何か質問はあるかい?」
私はエルにわかりやすい様に、要点を掻い摘み、王都でのスケジュールを話した。
[おとしゃま、王都のタウンハウスではお庭で遊べる?]
「エル…。やっぱりエルはお外で遊びたいよね…」
我が家の王都のタウンハウスは貴族街にある。お互いの家と家とに距離はあるとはいえ、領地の庭ほど広い訳ではない。
そうすると、無いとは思うが、いつどこでエルの姿が人目に付くかわからない。
だけど、それを理由に1週間もエルを屋敷に閉じ込める訳にはいかない…。
「ペルル殿、シロガネ殿、何かいい案はないでしょうか?」
〔ん~。タウンハウスの屋敷自体には侵入者を防ぐ結界を張るつもりではいるけど。どうする?シロガネ〕
「そうだな。王都のタウンハウスに着いたら、エルには認識阻害の魔法を掛けよう。
タウンハウスの使用人達に顔合わせをした後に、認識阻害を掛ければ、タウンハウスに居る者以外には認識が出来ない、顔がぼやけて見える様になる筈だ」
[その魔法を掛ければ、お外で遊べる?]
「あぁ。ただ、顔がぼやけて見えるとはいえ、エルも十分に気をつけるのだぞ」
「うんっ!!ありがとう、シロガネっ!!」
シロガネ殿がエルの“外で遊びたい”という気持ちに配慮して、認識阻害の魔法を掛けてくださる事になった。
「シロガネ殿、ありがとうございます」
「「「「シロガネ様、ありがとうございます」」」」
私に引き続き、妻やウィルフリード、バルドリック、ルイーザが感謝の気持ちを伝える。
これで、エル以外の子ども達も安心して自分達の要件を済ませられるだろう。
「よかったわね、エルちゃん。
お母様はウィルやバル、ルイーザのお茶会やサロンに同席する事もあるから、あまり側に居てあげられないけれど、無茶をしてはダメよ?
ちゃんと、エミリーやアメリア、アンネリースの言う事を聞いてね?」
[かぁしゃま、大丈夫だよ。エミリーちゃんとはお洋服のお話をいっぱいするし、お外で遊ぶ時以外はポーション作りするのよ]
そうだった。エルはポーションの研究がしたいんだった。
何だろう…。今から物凄く不安な気持ちがするのは何故なんだろう…。
「ペルル殿、シロガネ殿。くれぐれも、どうかよろしくお願いします」
〔あ~っ…。うん…。わかったよ〕
「うむ。万事任せておけと、言い切れぬが、まぁ、任せておけ」
[う?どう言う事??]
エルがキョトンと小首を傾げる。
エルは毎回自分がやらかしているという、認識が薄いからね。
今回はどうなる事やら…。
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