転生幼女の怠惰なため息

(◉ɷ◉ )〈ぬこ〉

文字の大きさ
162 / 166
第四章

大人達の会議⑧

しおりを挟む
〈父:フリッツィSide〉



〔ただいま〕
【只今戻った】

白銀と黄金の淡い光の粒子と共に、ペルル殿とシロガネ殿がサロンのテーブルの上に現れる。

「ペルルちゃん、シロガネちゃん、エルシーアは大丈夫なのよね…?」

妻が不安そうに瞳を揺らしながら、おふたりに問い掛ける。
そんな妻の質問に対し、ペルル殿とシロガネ殿が目を合わせると、

〈特に問題はないよ。ただ、穢に触れたせいでちょっと魘されてただけ。それも解決して今はウィルフリードと一緒に熟睡してる。後はお腹が減ったら起きてくるんじゃない?〉

「そうですか…。よかった…」

ペルル殿の言葉に安堵した様で、妻がほっと息を吐き出す。
しかし、ペルル殿とシロガネ殿は何かを伏せている様にも感じる。
必要とあらばおふたりから話があるだろうし、今はまだその時ではないのかも知れない。

【それで?話はどこまで進んだ?】

「そうですね。聖神国で新たな邪神が誕生した事、カーラ嬢がその邪神に精神操作を受けていた事を説明したところです。後はエミリーに協力してもらい、カーラ嬢とハンナ夫人から今回の記憶を消す事を説明しました」

【そうか。カーラは人が心の奥底に持つ負の感情を増幅させる香水『惑わす者』と、人を享楽や欲望のままに行動させる禁薬『堕落の雫』を使用していた。
恐らくアーデルハードの話に出てきた、カーラが懇意にしていた占い師と言うのが邪神で、惑わされて使用したのだろう。
アーデルハード、家に帰ったらカーラの部屋を捜索しろ。『堕落の雫』はカーラがウィルフリードに渡そうとしていた焼き菓子に使われたため残っていないかも知れないが、『惑わす者』はまだ残っているはずだ。浄化してからでないと処分できない故、我らが王都に滞在している1週間の間に持ってくるのだ】

「かしこまりました。家に戻り次第調べたいと思います」

シロガネ殿の指示にアーデルハードが頷く。

「それじゃあ、今後の方針を決めようか。
まずはアーデルハード。シロガネ殿の指示通り、まずはカーラ嬢の部屋を捜索。また、屋敷の使用人からの情報収集だ。期限は1週間。いいね?」

「はい、兄上」

「次にエミリー。君にはこの後、カーラ嬢とハンナ夫人の記憶操作をしてもらう。エミリーには頼りっぱなしだけど、お願いしたい。後、王都に滞在中はなるべくエルシーアの側に居てもらえると安心かな」

「はいはぁ~い♪OKよん☆」

「ハリエットはお茶会やサロンでの情報収集だ。収集する内容は、ここ1年間で話題になっている占い師と、性格または態度が変わった者の情報だね。
精神操作を受けているのがカーラ嬢だけとは限らないからね。
アーデルハード、君にも自身の演奏会などで情報収集をしてみてくれ。
だけど、決して無理や無茶はしない様に。自分自身の身の安全を最優先にして欲しい」

「えぇ、わかったわ」

「十分に注意します、兄上」

「よしっ、今後の方針としてはこんな感じかな?後は集まった情報は随時共有していこう。
私は後で陛下に新たな邪神が誕生した事を報告しておくよ」

【フリッツィ、聖神国は新たな邪神が誕生した事に気がついていない。そのため奴らは先の邪神を復活せんと躍起になっている。引き続き聖神国の動きにも注意せよ】

「かしこまりました」

確かに聖神国は不穏な動きを見せている。
愛しい我が子だけでなく、王国全ての子ども達を護るためにも、聖神国の監視を怠らない様にしなくては。

だけど、今は──

「今後の方針も決まったし、お昼ごはんにしようか。
アーデルハード、カーラ嬢もハンナ夫人もまだ眠っている。お昼ごはんはウチで食べて行きなさい」

「ありがとうございます、兄上。ではお言葉に甘えさせていただきますね」

「ではベアティ、私達は食堂に移動するから、バメイに昼食の準備をする様に伝えてくれるかい?」

「かしこまりました。では、失礼いたします」

ベアティが一礼をし、サロンから退室する。

「さて、私達も移動しようか」

私が声をかけると、妻がペルル殿を、エミリーがシロガネ殿を抱き上げる。
私はそんな妻をエスコートしながら食堂まで移動する。

しかし、王都に着いてまだ半日しか経っていないのに疲れたな…。
明日はお披露目の儀式で、明後日は王宮で王妃主催のお茶会だ。
お披露目の儀式もお茶会も、何事もなく無事に終わって欲しいものだ。



しおりを挟む
感想 221

あなたにおすすめの小説

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

裏の林にダンジョンが出来ました。~異世界からの転生幼女、もふもふペットと共に~

あかる
ファンタジー
私、異世界から転生してきたみたい? とある田舎町にダンジョンが出来、そこに入った美優は、かつて魔法学校で教師をしていた自分を思い出した。 犬と猫、それと鶏のペットと一緒にダンジョンと、世界の謎に挑みます!

公爵令嬢やめて15年、噂の森でスローライフしてたら最強になりました!〜レベルカンストなので冒険に出る準備、なんて思ったけどハプニングだらけ〜

咲月ねむと
ファンタジー
息苦しい貴族社会から逃げ出して15年。 元公爵令嬢の私、リーナは「魔物の森」の奥で、相棒のもふもふフェンリルと気ままなスローライフを満喫していた。 そんなある日、ひょんなことから自分のレベルがカンストしていることに気づいてしまう。 ​「せっかくだし、冒険に出てみようかしら?」 ​軽い気持ちで始めた“冒険の準備”は、しかし、初日からハプニングの連続! 金策のために採った薬草は、国宝級の秘薬で鑑定士が気絶。 街でチンピラに絡まれれば、無自覚な威圧で撃退し、 初仕事では天災級の魔法でギルドの備品を物理的に破壊! 気づけばいきなり最高ランクの「Sランク冒険者」に認定され、 ボロボロの城壁を「日曜大工のノリ」で修理したら、神々しすぎる城塞が爆誕してしまった。 ​本人はいたって平和に、堅実に、お金を稼ぎたいだけなのに、規格外の生活魔法は今日も今日とて大暴走! ついには帝国の精鋭部隊に追われる亡国の王子様まで保護してしまい、私の「冒険の準備」は、いつの間にか世界の運命を左右する壮大な旅へと変わってしまって……!? ​これは、最強の力を持ってしまったおっとり元令嬢が、その力に全く気づかないまま、周囲に勘違いと畏怖と伝説を振りまいていく、勘違いスローライフ・コメディ! 本人はいつでも、至って真面目にお掃除とお料理をしたいだけなんです。信じてください!

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

おせっかい転生幼女の異世界すろーらいふ!

はなッぱち
ファンタジー
赤ん坊から始める異世界転生。 目指すはロマンス、立ち塞がるのは現実と常識。 難しく考えるのはやめにしよう。 まずは…………掃除だ。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

処理中です...