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椰子ふみの

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第一章

騎士団

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「残念だったな。せっかくのデートだったのに」

 レオさんに肩を叩かれ、ジェシーさんは赤くなった。
 親切から私に街を案内しただけなのに、からかわれたら、嫌だよね。

「あの、そんなのじゃないんです」

 口をはさむと、ジェシーさんはバッと振り返って私を見た。レオさんがプッと吹き出す。レオさん、何だか、がっかりしているみたい。ここのお菓子、食べる暇なくて、残念だよね。

「ジェシーさん、かっこよかったです。お仕事、頑張ってくださいね」

 そう言うと、ジェシーさんは気を取り直したようだった。

「では、彼女のこと、くれぐれもよろしくお願いします」

 ジェシーさんはレオさんに頭を下げると、私に向かって言った。

「最後、こんなことになってごめん。また、改めてデートさせて」
「え? あ、はい」
「ありがとう」

 ジェシーさんはにっこり笑うと、私の手を取り、手の甲にチュッとキスした。うわー、破壊力抜群。店内の女性客がざわついた。

 ジェシーさんを見送ると、また、個室に戻った。ケーキ食べかけだったからね。でも、さっきのキスのせいでドキドキが止まらない。

「ジェシーさんにも食べさせたかったな。こんなに美味しいのに」
「青の騎士団に差し入れしておくよ」
「それなら、私がお礼したいので、お金を出させてもらえませんか」

 直接、差し入れるのは、落ち人ということがバレないように禁止と言われそうだから、レオさんから渡してもらえるなら助かる。

「そうか、もうきちんと稼いでいるんだもんな。偉い偉い」

 頭を撫でられた。大きな手が暖かい。それにしても、何だか子ども扱いだ。今日はそれなりに年相応の格好だと思うんだけど。でも、何だか、気持ちが落ち着く。お父さんって、こんな感じなのかな。父親がいないせいか、憧れがある。

「レオさんも騎士なんですよね。ジェシーさんの上司ですか」

 対等にしゃべっているようで、ジェシーさんはレオさんとしゃべる時、すごく気を使っているような気がした。

「違う。騎士団が別なんだ。俺は赤だ」

 ポカンとしていると、説明してくれた。

「この国の騎士団は五色に分かれているんだ。まず、金の騎士団、これは王族を守る騎士団だ。他国の貴賓が来国した時の護衛も担当する。次に白の騎士団、これは貴族の子弟を中心とした儀礼担当の騎士団。黒の騎士団、騎士団というけど、実体は他国との戦闘を行う軍隊だ。それから、青の騎士団、ジェシーが所属している騎士団だけど、国内の治安維持、犯罪の取り締まりだ。平民出身が多いので白の騎士団からは下に見られることが多い。最後に赤の騎士団。魔獣から国を守る最強騎士団だ」

 最強騎士団か。確かにすごい体格だもんね。それにしても。

「王様も他国との戦争も魔獣もいるんですね」
「普通、いるでしょう」
「私の国にはいなかったんです」
「そうか」

 レオさんは私を見つめた。よく見ると、この人も鼻筋は通っているし、ワイルド系イケメンだなあ。

「ジェシーがいない時に困ったことがあったら、連絡してくれ」

 そう言って、小さな紙を渡してくれた。

「これは?」
「飛紙だ。文字を書いて、畳むと、裏に描かれた魔方陣で指定の場所に飛ぶ。これは俺に飛ぶようになっている」

 おお、転送の魔方陣って、場所だけじゃなく、人を指定できるんだ。

「いいんですか? 私がもらって」
「非常用だ」

 でも、もう、変な人にナンパされることもないと思うけどな。

「ありがとうございます」

 受け取って、ポケットにしまった。騎士団の人って、みんな優しい。

「あの、差し入れってお菓子でいいんでしょうか? もっと、お腹にたまるようなパンとか」
「青の騎士団は平民出が多いから、あまり、甘いものを食べたことがない。だから、お菓子は喜ばれる。それにこんな可愛い店に買いに来るのは恥ずかしいと思っているんだ」
「レオさんは平気なんですね」
「美味いものを食べるのに女も男もないだろう」

 見るからに『男』という感じのレオさんが言うからおかしい。自分たちのお茶が終わったら、レオさんが店員にお菓子の見本を頼むと、ワゴンで焼き菓子が運ばれて来た。どれも美味しそうだけど、店員さんのおすすめを買ってお金を払う。
 レオさんはカードを出して払っている。量がおおいから、配達してもらうらしい。
 ギルドカードなど身分証明のカードに魔方陣を描くことでクレジットカードとして使えるらしい。落ち人の知識と魔法が融合している。すぐに魔法で対応するから、産業革命なんて起きないんだろうな。いつまでも、中世のままになりそう。

「たぶん、クレジットカードを教えなかったのはマリアさんが危いと思ったんだろう。慣れたら、カードを変えてもらったらいい」

 レオさんが青の騎士団への差し入れを持って行ってくれると言ってくれた。店を出るのに少し後ろからついていくと、ひげの先に赤い色がついているのに気づいた。

「レオさん、赤いのがひげについてますよ」

 私が手を伸ばして、ハンカチでふくと、レオさんは顔をしかめた。

「ひげは面倒だ」
「それでも伸ばされてるんですね」
「騎士団に入った時、若かったから、なめられなくて伸ばしたんだ。今は必要ないんだが」
「うっとうしいなら、切ってさしあげますよ。よかったら、髪も切らさせてください」

 絶対、短くした方がかっこよくなる。お礼のつもりで言ったら、レオさんは困った顔になった。

「まだ、教えてもらってなかったのか。このアストレイヤ国で髪を切るのは子どもか罪人だけだ」
「え?」

 髪を切らない?
 私は呆然と立ち尽くした。

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