【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの

文字の大きさ
20 / 45

生徒会

しおりを挟む
「か、可愛い! 抱きしめていい?」

 興奮して尋ねているのは生徒会の一員、アネモネ様。思わず、様を付けたくなる、栗色の豊かな巻き毛でグラマーな美女だ。

「いえ、結構です」

 ブランは前足を差し出し、ピシリと断った。

「えー。ねえ、ちょっとだけでいいから」

 アネモネ様が体をよじると、胸が揺れる。年齢を聞いたら、十七歳だって。
 ヴィオラはどう考えても五年後の自分がそんな成長をとげるとは思えなかった。

「私を抱いていいのはヴィオラだけだから」

 何だか、語弊のある言い方をするドラゴンだ。

「ふむ、従魔契約をしているのにヴィオラと呼び捨てにするのだな」

 ジョージ王太子がブランをじっくり眺める。

「主人のマナーがなっていないからですわ」

 ジョセフィンが口をはさむと、ジョセフィンの従魔、マオルが大きくうなずく。

「あの、ブランよりはマシだと思うのですが」

 ヴィオラがおそるおそる言うと、ジョセフィンは扇子で口元を隠した。

「努力は認めますけど、まだまだ、合格点は出せませんわ」

 まあ、認めてもらえたのなら、いいかとヴィオラはのんきに考える。

「先輩方はどんな魔獣と契約しているんですか?」

 従魔契約できた生徒はお互いの絆を深めるため、常に一緒に行動するようにミューラー先生から言われている。ただ、絆が深まった後は離れていても、一瞬で召喚できるらしい。

「ボルガ」

 アネモネ様が呼ぶと、足元に茶色の毛並みの狼のような魔獣が現れた。

「も、もしかして、フェンリル?」

 憧れのモフモフだ。

「あ、あの、触っていいですか?」
「いきなり、頼むのは失礼ですよ」

 ヴィオラは思わず、手をワキワキさせながら頼んで、すぐにジョセフィンから注意されてしまった。

「構わないわよ。その代わりにブランを触らせもらえるならね」

 アネモネ様の言葉にヴィオラは素早く空中のブランを捕まえた。

「大人しくしてね」

 ブランは顔をしかめながらもうなずいた。
 ヴィオラはブランをそのまま、アネモネ様に渡すと、ボルガに向かった。

「さわらせてくださいね」
「どうぞ」

 と言われたとたんに顔からモフモフの中にダイブする。

「ああ、最高」

「ジョセフィンさん、すごいですよ」

 モフモフしながら、顔を上げると、ジョセフィンさんがうらやましそうな顔をしていたので、声をかける。

「ジョセフィンさんも構わないわよ」

 アネモネ様はブランを抱きしめ、優しく撫でながら言った。断っていたくせに気持ちいいのか、ブランは目を細めている。

「私にはマオルがいるから」
「ジョセフィン様」

 感動したようにマオルがジョセフィンにヒシと抱きついた。

「あの、そろそろ、生徒会の仕事をしませんか」

 イアンが言った。

「そうだね、そのままでいいから聞いてくれるかな」

 ジョージ王太子の言葉に遠慮なく、ヴィオラはモフモフ活動を続けた。

「来月の武闘会だが、イアンがすでに出場者のリストをまとめてくれている」

 作業分担の決定などが進んで行く。
 ヴィオラは不思議な気持ちだった。
 本当に悪役令嬢のルートから脱却できたのかもしれない。
 ヒロインのアリアナはどうしているのだろう。
 ゲームの美麗なスチルを思い起こして、気づいた。スチルではジョージ王太子もイアンももっと、大きかった。今より五歳ぐらい、上の姿だったような。
 生徒会のメンバーにもアネモネ様のような歳上の方はいなかった。というか、攻略対象者だらけだった。
 つまり、まだ、乙女ゲームはスタートしていない? 開始はアネモネ様たちが卒業してから?
 そうだ、アリアナは途中で入学してくるんだった。だから、最初、ハーモニー学園に馴染めず、苦労したんだった。
 つまり、今、悪役令嬢になる心配は無い?
 ヴィオラはホッとした。
 そして、嬉しくなって、いろんな作業の担当に手を挙げてしまった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら、乙女ゲームの悪役令嬢だったので現実逃避を始めます

山見月あいまゆ
恋愛
私が前世を思い出したのは前世のことに興味を持った時だった 「えっ!前世って前の人生のことなの。私の前の人生はなんだろう?早く思い出したい」 そう思った時すべてを思い出した。 ここは乙女ゲームの世界 そして私は悪役令嬢セリーナ・グランチェスタ 私の人生の結末はハーッピーエンドなんて喜ばしいものじゃない バットエンド処刑されて終わりなのだ こんなことを思い出すなら前世を思い出したくなかった さっき言ったこととは真逆のことを思うのだった…

転生令嬢シルヴィアはシナリオを知らない

潮海璃月
恋愛
片想い相手を卑怯な手段で同僚に奪われた、その日に転生していたらしい。――幼いある日、令嬢シルヴィア・ブランシャールは前世の傷心を思い出す。もともと営業職で男勝りな性格だったこともあり、シルヴィアは「ブランシャール家の奇娘」などと悪名を轟かせつつ、恋をしないで生きてきた。 そんなある日、王子の婚約者の座をシルヴィアと争ったアントワネットが相談にやってきた……「私、この世界では婚約破棄されて悪役令嬢として破滅を迎える危機にあるの」。さらに話を聞くと、アントワネットは前世の恋敵だと判明。 そんなアントワネットは破滅エンドを回避するため周囲も驚くほど心優しい令嬢になった――が、彼女の“推し”の隣国王子の出現を機に、その様子に変化が現れる。二世に渡る恋愛バトル勃発。

一度もクリアできなかった乙女ゲームの世界に転生しました

柚木ゆず
恋愛
 ある日命を落としてしまったわたし里村七海は、気が付くと大好きだった乙女ゲーム『満月を君と』の主人公・子爵令嬢アデライドとして転生していました。 『満月を君と』は異常なくらい攻略が難しくて、一度もハッピーエンドにできなかったゲーム。何度やってもバッドエンドになってしまって、攻略対象である推しの子爵令息エリク様を救えずにいました。  だからゲームの世界に居ると気付いたわたしは、今度こそエリク様を救うと決意。彼をバッドエンドに向かわせてしまう3人の『敵』に挑むため、作戦を練り始めるのでした。  生前は一度もクリアできなかったわたしだけど、ゲーム内に居るからこそできることが沢山ありました。転生者という強みを使って、今度こそハッピーエンドに辿り着きます。

乙女ゲームっぽい世界に転生したけど何もかもうろ覚え!~たぶん悪役令嬢だと思うけど自信が無い~

天木奏音
恋愛
雨の日に滑って転んで頭を打った私は、気付いたら公爵令嬢ヴィオレッタに転生していた。 どうやらここは前世親しんだ乙女ゲームかラノベの世界っぽいけど、疲れ切ったアラフォーのうろんな記憶力では何の作品の世界か特定できない。 鑑で見た感じ、どう見ても悪役令嬢顔なヴィオレッタ。このままだと破滅一直線!?ヒロインっぽい子を探して仲良くなって、この世界では平穏無事に長生きしてみせます! ※他サイトにも掲載しています

無自覚人誑し天然ヒロインは攻略対象に好かれる。※本人は気づいていない。

ゆう
恋愛
物心ついた頃乙女ゲームのヒロイン、ミーティア・セレンスであることに気づく。 ヒロインと難ありの攻略対象達の通う学園でミーティアは友達をつくり、全力で楽しむぞ!と決意する。 何故か攻略対象達に好かれ始めるのだが、本人は気づかない。 逆ハーの予定です。

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

乙女ゲームのヒロインに転生したのに、ストーリーが始まる前になぜかウチの従者が全部終わらせてたんですが

侑子
恋愛
 十歳の時、自分が乙女ゲームのヒロインに転生していたと気づいたアリス。幼なじみで従者のジェイドと準備をしながら、ハッピーエンドを目指してゲームスタートの魔法学園入学までの日々を過ごす。  しかし、いざ入学してみれば、攻略対象たちはなぜか皆他の令嬢たちとラブラブで、アリスの入る隙間はこれっぽっちもない。 「どうして!? 一体どうしてなの~!?」  いつの間にか従者に外堀を埋められ、乙女ゲームが始まらないようにされていたヒロインのお話。

処理中です...