細やかな愛情

林 業

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引っ越してきて部屋を一つ貸してくれた。
「一応ここ寝室兼職場だから」
掛かっているドアプレートを示す。
入室禁止と書かれた部分、そして裏返すと入室許可と書かれている。
「これ見て判断してくれると嬉しい。掃除もプレートで頼む」
「わかった」
「この部屋だけはゴミ箱以外の物は捨てないでほしい」
捨てないとまずそうなものは聞けばいいかと頷く。
「他はとりあえずは大丈夫だと思うけど。足りないものとかあったら声かけてくれ。後タカシが足貸してくれるから買い物遠くに行くときは連絡するといい」
「自転車買うか」
近くに安そうなスーパーがない。かと言って毎回タカシを呼ぶわけには行かないだろう。
今日は大学終わりに来てくれるらしいけど。
「そういえばアオイは免許持ってないのか」
「十八歳になったばっかりだしお金なくて」
「あぁ。親とモメてるとか言ってたっけ」
一応不法に居座っているという形なのだがわかっていないらしい。
保護者としていると言うが害悪でしかないのでお金を出してくれるはずもない。
何より免許を取りに行くとなった時点で色々と言われるだろう。
証拠を集めてあるのでそろそろ裁判を起こす予定なのでお金は置いておきたい。
「金出すから免許取ってきたらどうだ?資格取得のなんやかんやで」
「いや。そこまで世話になるわけにはいかない。一応貯蓄はあるから」
「なくて困るものじゃないだろ。うちには車もあるからな」
「考えとく」
ところでと彼を見る。

「今日の晩御飯何がいい?今から買い物行く予定だけど」
「んー。目玉焼き乗ったハンバーグ。半熟だといいな」
「承知、なぁ、一応確認なんだけど半熟は黄身がとろとろでいいんだよな」
「むしろ何を想像した。なぁ!」
「いや。別に」
「まさか珍味料理とかじゃないだろうな。向こうだと生卵食べれないんだよ。だから日本来たときの卵かけご飯とか好きなんだよ」
「へぇ」
意外だなぁと眺める。

「それとホビロンはベトナムだろうが。作っても俺は食わないからな!」
「いや。うん。意外と美味しいんだけど、流石に無理かな」
「食ったのか」
「お客さんに紹介されてタダシとタカシ犠牲に」
「俺は日本食のほうが好みです」
念をおされたのでいじるのは止める。

「エッグベネディクトは?」
「卵料理好き」
「朝ごはんそれにするか」
「作れるのか」
「そのへんは料理人に聞いたからある程度は」

やったーと喜ぶ姿に食べ過ぎ注意なと警告しておく。


台所を確認してからネットでチラシを漁り食材を何を買うか考えておく。
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