昨日の自分にサヨナラ

林 業

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沈黙の日々

4,アルカンシェル(思)

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トラママと虫の案内でやってきた馬車。
近くに人の死体。
悪臭が漂うらしく虫とトラママは近づこうとせず、腕に抱えた狼もまた服に顔を押し付けている。

先程の湿った布で、念の為にと鼻と口を庇う。

トラママに狼を向ければ、がうと首根っこを咥えて子どもたちと距離を取る。
このまま連れて行ってくれないかと眺めるが近くでくつろぐトラママたち。

幼子の狼は引き取るかと今後の予定に入れる。


変えの靴がないので死体を踏まないよう注意して馬車へ向かう。
死体は獣に食われたのか腸を抉られている。
こういうのをエグいとか言うのかと悩むが嫌悪する感覚は現代人とは違って持てない。
精々衛生面や、常識として行動する。
到着した馬車の中へとよじ登る。

幌付きの馬車。
布の一部が不自然に切れているのでこれが先程、川で受け取った布だろう。
確認はしたいが衛生的な問題を考えて、また容疑者にされたくないと止める。
お邪魔します。と内心で声をかける。
あるのは山積みの鞄。そして細長い木箱。
木箱に耳を当てて、叩く。

返ってくるがちゃんと響く金属音に木箱の蓋を開く。
ノコギリ、トンカチ、ハサミ、縄。
サバイバルに必須そうな物が多い。

有り難い。
だが手に取ろうとして、歪な手では持ちにくく、床に突き刺さる。
悪戦苦闘しつつも床に刺さったのが取れず、見なかったことにして蓋を閉じる。

鞄を手に取ろうとして手紙に気づく。
大樹と虹の印章が付いた封蝋。

裏を見て思わず右目を細める。


「異世界人のあなた達へ

       アルカンシェル」
日本語と見知らぬ言語なのに理解できる文字。
記憶しつつ手紙を開く。
「前略、この度は異世界へ招かれたあなた方へこの手紙を書く。
 あなた方のことは今後異邦人と呼ばせてもらう。
 この世界での異世界人の正式名称だからだ。
 我々は異邦人の先の杖となるため、この世界での生きる手助けをするため存在している。
 自ら運命を掴め。
 いくつかの運命を示す。
 一、そこにある鞄にはそれぞれ、一週間分の食料が入っている。
 一、同じカバンでも入っているものは異なる場合がある。だが全てにおいてサバイバル期間には必要になるだろうものが入っている。
 一、消耗品を除き、国の保護下に入れば返却してもらう。
 一、川上へ行けば魔王の国へ。
 一、川下へ行けばクリスタ国へ。
近くの国へ行くことができたならば王に保護を申し出るといいだろう。
その時鞄を渡せば我々の下へ戻ってくる。
その他は自分で考えて行動しろ。
      以上 それでは命運を祈る」

何故?と疑問が浮かぶ。
何故その二国へ行ける川を発見していることがわかっているのか。
それともこの周辺にはこの川しかないのか。

たまたま発見したがたまたまではなかったのか。
何故同じカバンに同じように入れないのか。

考え続けてから、運命。と言う文字が頭をよぎる。
とりあえず借りれるなら借りようと結論づける。

馬車の中のカバンを探り良さげなカバンを手に取る。
両手サイズ。
腰につけるウェストポーチ。
この中で一番小さい。

この辺ならと腰に付ける。
せっかくなので持っているものをポケットから出して調べる。

隠し持っていたおやつ、キャラメルや飴が山のように出てくる。

こんなに隠してたっけと首を捻り、彼の仕業もありそうだと眺める。
元に戻し、鞄の中を探る。
出てくるのは
テイマー幼獣用ご飯。
と書かれた瓶と、注射器。
飼育、もしくは動物使いのような存在が在るのだと頭を過ぎりつつも、幼子への食事は問題なさそうである。

そして一週間分と書かれた保存食。
七日間の食料には見えない片手程度の包み。
封を開ければ程々の大きさになるらしい。

水筒らしき筒は一週間分の水が入っているらしいが、どう見ても現代でもあるところにはありそうな四百のペットボトル程度の金属の水筒。
入っているのかと蓋を外して一口。
美味しい。
キャンプ用具にもありそうな、キャンプポット。
後は火付け用にファイアースターター。
岩塩。

よしと一人頷く。


鞄の下にあったのか目に入った水晶と、その横の手紙。
手紙を拾って読む。
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