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沈黙の日々
14.山賊は恐怖する【楽】
山賊のカシラは思い出した記憶にぞっと背筋が凍る思いで粗末な毛布を頭にかぶる。
彼は出来が悪いと親に罵られた。
親は他の兄弟をかわいがった。
変わりに彼はやさぐれ続けた。
仕事もしたが、何もなせず、色々と重なって犯罪者となった。
そして居場所のない人間をまとめ上げて山賊の頭となった。
はぐれ魔術師を仲間に入れたとき、獣たちを捉えて売る商売が一番いいと気づいた。
彼は山賊ながら嘆きの森で暮らした。
明日獣に襲われて死ぬかもしれないと思いつつも。
魔術師のおかげで生き延び、それが当たり前になっていた。
だが今日、久々に恐怖した。
あの何も浮かばない茶色の瞳。
こちらをただ見て観察して、憐れむ瞳。
その奥にもう一つあった何も浮かんでいない無の瞳。
まるでこちらを認識していない。
上辺だけの感情の奥。
ただただ恐怖した。
何が怖いかはわからなかったが。
母親の名を呼んで助けを求めかけた。
そんなことできるはずもなく何度も飲み込みつつ。
殴りつけても、蹴り飛ばしても。
踏みつけるだけで折れる骨も。
悲鳴どころか呻き声一つ上がらなかった子供とも大人とも言える子供。
そこらのホラーより恐怖する。
一人では太刀打ちできないティーガルよりもあの目が怖い。
眼帯に浮かんだ氷雪の王の文様で止めたが言い訳に過ぎない。
もう関わりたくない。
あの部屋の獣たちの食われてくれないだろうか。
あの部屋で餓死してくれないだろうか。
もう関わりたくない。
暗い闇。
少しでも深入りしたら二度と戻ってこれない。
ただただ言い知れぬ何かが、恐ろしかった。
思考を振り払い、眠りにつく。
明日にはここを引き払おう。
夢を見た。
あの子供が自分を殺す夢。
目を開けて、そしてふうと息を吐き出す。
がお腹に重みを感じて見下ろす
見えた光景に、反射的に叫び声を上げて、声が出ないことに気づく。
ひゅうと笛のような声が耳に届いた。
手も足も動かない。
血が流れ落ちているのだけは視界の端で理解する。
にやりと笑う閉じ込めていたはずの獣。
ぴちゃぴちゃとお腹を舐めている。
はらわたが見える。
助けを呼ぶのに聞こえるのは笛の音。
入り口を見れば手を伸ばしている魔法使いの部下。
助けてくれと思念を飛ばすが彼もまた手足から血を流している。
その背後には這ってきたのか血が流れ落ちている。
ひゅっとまた笛の音。
魔法使いの部下はこちらを見て口を動かすが笛の音しか聞こえない。
助けてくれと助けなければと二つが浮かぶ。
しかし、肉食獣の一匹がローブを加えて引きずって連れて行っている。
血の痕跡がそこにいたと言うことだけ物語る。
絶望に汗が流れ落ちて行く。
人影がドアの前にあるのに気づいて、希望が浮かんですぐ消える。
奴だ。
こちらを見て口元が歪んでいる。
「楽しいなぁ?自分らでやったことのツケなんだからよ。自分らはほんと、憐れだなぁ」
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
関わるんじゃなかった。
関わるべきじゃなかった。
異邦人が高く売れるからって。
異邦人なんてろくなものじゃなかった。
助けてくれ。頼む。頼むからあぁ。
もうしない。しないから。
歪んだ口元に、見つめてくる瞳は彼から希望を奪う。
心が折れる音。
意識を徐々に失っていく彼には、ただいつ終わるともわからない。
楽な死を望むことしか出来ない。
最期迄、叶えてはくれなかったが。
明け方近く、王国軍がやってきた。
たった一人生き残った山賊だけが助かり、恐怖で錯乱しながらも獣に襲われたと告げた。
残った山賊の遺体は獣たちに遊ばれたのか、死に慣れている国軍すらも忌避するものだったという。
幸か不幸か、遺体は全員その場にあり、一人として持ち帰っていなかったという。
彼は出来が悪いと親に罵られた。
親は他の兄弟をかわいがった。
変わりに彼はやさぐれ続けた。
仕事もしたが、何もなせず、色々と重なって犯罪者となった。
そして居場所のない人間をまとめ上げて山賊の頭となった。
はぐれ魔術師を仲間に入れたとき、獣たちを捉えて売る商売が一番いいと気づいた。
彼は山賊ながら嘆きの森で暮らした。
明日獣に襲われて死ぬかもしれないと思いつつも。
魔術師のおかげで生き延び、それが当たり前になっていた。
だが今日、久々に恐怖した。
あの何も浮かばない茶色の瞳。
こちらをただ見て観察して、憐れむ瞳。
その奥にもう一つあった何も浮かんでいない無の瞳。
まるでこちらを認識していない。
上辺だけの感情の奥。
ただただ恐怖した。
何が怖いかはわからなかったが。
母親の名を呼んで助けを求めかけた。
そんなことできるはずもなく何度も飲み込みつつ。
殴りつけても、蹴り飛ばしても。
踏みつけるだけで折れる骨も。
悲鳴どころか呻き声一つ上がらなかった子供とも大人とも言える子供。
そこらのホラーより恐怖する。
一人では太刀打ちできないティーガルよりもあの目が怖い。
眼帯に浮かんだ氷雪の王の文様で止めたが言い訳に過ぎない。
もう関わりたくない。
あの部屋の獣たちの食われてくれないだろうか。
あの部屋で餓死してくれないだろうか。
もう関わりたくない。
暗い闇。
少しでも深入りしたら二度と戻ってこれない。
ただただ言い知れぬ何かが、恐ろしかった。
思考を振り払い、眠りにつく。
明日にはここを引き払おう。
夢を見た。
あの子供が自分を殺す夢。
目を開けて、そしてふうと息を吐き出す。
がお腹に重みを感じて見下ろす
見えた光景に、反射的に叫び声を上げて、声が出ないことに気づく。
ひゅうと笛のような声が耳に届いた。
手も足も動かない。
血が流れ落ちているのだけは視界の端で理解する。
にやりと笑う閉じ込めていたはずの獣。
ぴちゃぴちゃとお腹を舐めている。
はらわたが見える。
助けを呼ぶのに聞こえるのは笛の音。
入り口を見れば手を伸ばしている魔法使いの部下。
助けてくれと思念を飛ばすが彼もまた手足から血を流している。
その背後には這ってきたのか血が流れ落ちている。
ひゅっとまた笛の音。
魔法使いの部下はこちらを見て口を動かすが笛の音しか聞こえない。
助けてくれと助けなければと二つが浮かぶ。
しかし、肉食獣の一匹がローブを加えて引きずって連れて行っている。
血の痕跡がそこにいたと言うことだけ物語る。
絶望に汗が流れ落ちて行く。
人影がドアの前にあるのに気づいて、希望が浮かんですぐ消える。
奴だ。
こちらを見て口元が歪んでいる。
「楽しいなぁ?自分らでやったことのツケなんだからよ。自分らはほんと、憐れだなぁ」
嘘だ。嘘だ。嘘だ。
関わるんじゃなかった。
関わるべきじゃなかった。
異邦人が高く売れるからって。
異邦人なんてろくなものじゃなかった。
助けてくれ。頼む。頼むからあぁ。
もうしない。しないから。
歪んだ口元に、見つめてくる瞳は彼から希望を奪う。
心が折れる音。
意識を徐々に失っていく彼には、ただいつ終わるともわからない。
楽な死を望むことしか出来ない。
最期迄、叶えてはくれなかったが。
明け方近く、王国軍がやってきた。
たった一人生き残った山賊だけが助かり、恐怖で錯乱しながらも獣に襲われたと告げた。
残った山賊の遺体は獣たちに遊ばれたのか、死に慣れている国軍すらも忌避するものだったという。
幸か不幸か、遺体は全員その場にあり、一人として持ち帰っていなかったという。
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