昨日の自分にサヨナラ

林 業

文字の大きさ
19 / 148
クリスタ王国

3,久しぶりで始めまして(歓喜)

狼は看護士に撫でられ更に機嫌が悪そうである。

抱き上げて慰めていれば、ドアが叩かれる。
誰か来たと首を捻る。

基本的には面会謝絶。
一日目に同窓のアホどもが突撃してきて色々とやらかした結果。
カヤマ、サガラ、タミヤのみが面会を許可されている。
最後に来るときに次はいつ来ると報告してくれていたはずだが。
サイドテーブルを叩いて返事をする。

うぅうと唸り威嚇するウロ。
看護士になんだかんだで撫でられて、人間不信になりかけているらしい。
入ってきた人に、威嚇しているので撫でて宥めて、そして目の前の相手に体が硬直する。

ありえない。
そんな相手に、それでも理解できる。

「う、ぁ」
思わず飛び出し、ベッドから崩れ落ちる。
地面に激突する前に抱き締められる。

「あ」
腕から伝わる温もりに。
心音に。
会えたんだと心から湧き上がるまま口にする。
「アヤ。光る、野を彩る。こうの、あや」
「こうの、アヤ?」
聞き返され、青い瞳に頷き返す。
フリザードがベッドに座らせてくると隣に座る。
「そうか。私はフリザード。フリザード、ヴィッサー」
「ふりざーど、ヴィッサー」
「フリザード。そう呼んでくれ」
「じゃあ、アヤ。そう呼んで」
「アヤ」
「フリザード」
お互いに見つめ合い、思い出したように名前を呼ぶ。
完全に二人っきりの世界。

「きゃん」
だが唐突に現実に戻される鳴き声。
忘れないでとアヤに頭を押し付けてくる狼。
アヤは慌てて抱き上げてフリザードに示す。
「あ。フリザード。この子、ウロ。木の根本にいたから」
「あ、あぁ。そうか。ウロ」
威嚇するウロにフリザードは微笑む。
「はじめまして。ヴァーナルガンドの子。ウロ。私はフリザードだ」
驚いたように目を見開き、アヤとフリザードを見比べる。
「ん?どうした?ウロ」
「最近、勝手に撫でられて、すごく人間不信だった。声の一つもかけられず撫でられて、すっごく嫌だったみたい」
「そうか。噛みつかず偉いな。ウロ。我慢したんだな」
初めての対応に驚いたのかウロは困ったようにきゅうと鳴く。
「ウロ。おいで」
手を出すフリザードに、アヤが差し出せば、ウロは渋々と行った感じでフリザードに向かう。
フリザードはすぐに膝の上に乗せて様子を伺う。
ウロは膝に上で歩き回っている。
「フリザード。ウロどうなる?せめて、大人になるまでは」
「きちんと躾をしておけば問題ない。ついでに国有として登録しておこう。異邦人が親だと文句を言う人間も少なくない。私との連名にしておけばそのあたりの対応できる」
「そっか。じゃあウロ。これからよろしくね」
「きゃん」
「連名するに当たって下の名は私が考えていいか?ウロ」
「下?」
アヤ共々首を捻るウロ。
「所謂セカンドネームだな。国有ということで登録するときに必要だ」
「ウロ、いい?」
ウロはフリザードを見上げてから蹲る。
「いいって」
「そうか。そうか」
嬉しそうなフリザード。
触りたそうだが、遠慮しているのかアヤに手を伸ばす。

アヤの髪の毛に触れて、眼帯に触れて満足そうにしている。
「これを使ってくれているのだな」
「あ、ありがとう。ずっと言えなかった」
「いいぞ。アヤが喜んでくれるなら」
「これから一杯恩返す」
楽しみだとフリザードは微笑む。
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑される悪役令息に転生したらなぜか推しの騎士団長がグイグイ近づいてくる

猫に小判
BL
交通事故で死んだはずの会社員・田中悠人は、気がつくとBL小説『恋と陰謀~はじまりは夜に~』の世界に転生していた。 しかも転生先は、原作で処刑される悪役令息エリオット。 当然そんな未来は回避したい。 原作知識を頼りに慎重に立ち回るつもりだったのに、気づけば王宮を揺るがす事件に巻き込まれていき――。 さらに困ったことに、原作で一番の推しだった騎士団長ガイウスがやたらと距離を詰めてきて……? 平穏に生きたい元悪役令息と、過保護な騎士団長がじれじれ距離を縮める話。 ガイウス(騎士団長)×エリオット(元悪役令息)

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

恋愛騎士物語1~孤独な騎士の婚活日誌~

凪瀬夜霧
BL
「綺麗な息子が欲しい」という実母の無茶な要求で、ランバートは女人禁制、男性結婚可の騎士団に入団する。 そこで出会った騎兵府団長ファウストと、部下より少し深く、けれども恋人ではない微妙な距離感での心地よい関係を築いていく。 友人とも違う、部下としては近い、けれど恋人ほど踏み込めない。そんなもどかしい二人が、沢山の事件を通してゆっくりと信頼と気持ちを育て、やがて恋人になるまでの物語。 メインCP以外にも、個性的で楽しい仲間や上司達の複数CPの物語もあります。活き活きと生きるキャラ達も一緒に楽しんで頂けると嬉しいです。 ー!注意!ー *複数のCPがおります。メインCPだけを追いたい方には不向きな作品かと思います。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け 完結しました。 たまに番外編更新予定です。

売れ残りオメガの従僕なる日々

灰鷹
BL
王弟騎士α(23才)× 地方貴族庶子Ω(18才) ※ 第12回BL大賞では、たくさんの応援をありがとうございました!  ユリウスが暮らすシャマラーン帝国では、平民のオメガは18才になると、宮廷で開かれる選定の儀に参加することが義務付けられている。王族の妾となるオメガを選ぶためのその儀式に参加し、誰にも選ばれずに売れ残ったユリウスは、国王陛下から「第3王弟に謀反の疑いがあるため、身辺を探るように」という密命を受け、オメガ嫌いと噂される第3王弟ラインハルトの従僕になった。  無口で無愛想な彼の優しい一面を知り、任務とは裏腹にラインハルトに惹かれていくユリウスであったが、働き始めて3カ月が過ぎたところで第3王弟殿下が辺境伯令嬢の婿養子になるという噂を聞き、従僕も解雇される。