昨日の自分にサヨナラ

林 業

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クリスタ王国

4,昔々(嬉々)

フリザードはアヤの頭だけでなく手や足など怪我している部分を撫でながら説明する。

この世界はガルーアという。

昔、女神、ガルーアが暗闇の世界を訪れた。
その暗闇にいた男神と結ばれ、六柱の精霊を産んだ。

六柱の精霊はその空間に一つのガルーアという空間を作り、両親に贈った。
六柱の精霊は大精霊と呼ばれ、彼らが作った生命と暮らした。
女神と男神は子供たちとその生命の営みをのんびりと眺め見守った。

そのうち生命は国を作り出し、大精霊と呼ばれた彼女たちは国の代表者、王と契約して、守護した。

だがある時は、光の大精霊の守護する国が反乱を起こし、男神を殺した。

女神は愛しい人と切り裂かれた故に嘆き悲しみ世界を引き裂いた。
そのなまガルーアとアースと呼ばれる二つの異世界に分かれた。
そうして女神は世界へ目を向けることは二度となかった。

光の大精霊の国は滅び、人を簡単に蹂躙する獣が跋扈した森となった。
それが嘆きの森である。
その森には別世界の人間が迷い込む。


ある時、大精霊たちは王に告げた。

「異世界の人間を保護せよ。
嘆きの森で死なせるな。
期間は一年。
その間に知恵と能力を与え、この世界で生きていけるように育て上げよ」

王となった制約の一つである。
百年から二百年周期で各国の国に現れる。
王はその制約を守るため、異世界人の保護に力をかける。


今回の国軍もまたその制約のために嘆きの森を訪れていたのだという。



アヤは聞き終えてから色々と気になる事を一旦飲み込む。
ウロは耳を立てて話を聞いている。
「ん、つまり、人間は馬鹿なことして女神怒らせた。結果、別世界ができてそっからいろんな人くる。大精霊たちはさすがにこのままはまずいと偉い人に独り立ちするまで保護申し出た」
「そういうことだ。ここまでで説明あるか?」
「一年間だけ?」
「保護はな。一応来週の頭から勉強が始まり、そこから半年後に各国の王や商人との顔合わせが行われる。その頃から独り立ちした、その後の就職先に有利になる知識を与えることとなる」
「決まってない場合は?」
「通常授業も続ける。専門の授業を申請してくれたら受けてもいい」
それからと懐からカードを取り出して向けてくる。
「これに触れてくれ」
アヤが受け取り、何も書かれていないカードを見る。
「それに文字が浮かんだら身分証明書に」
あっという間に燃え尽きるカード。
アヤは灰となったカードを見てからフリザードを見る。
「嫌がらせ?」
目には感情が消えており、フリザードは宥めつつ手を取り魔術で出した水で洗う。
アヤはウロを見れば丸くなったまま。

「二重防止の魔術が発動したようだな」
「に、何?二重防止、魔術?ふぁんたじー」
「あー。一度身分証のカードを作っている場合、二つ目は作れないんだ。紛失時にはその二重防止の魔術を撤廃して作り直すんだが。アヤ。もう持っていたりとか誰かから似たようなものを持ったことは?」
「ない。ここに来てからも意識朦朧は度々あったけど人が来ればわかる」
「そうか。じゃあ、魂が二つ以上ある場合か?しかし」
アヤは胸を握りしめており、フリザードはその手を握る。
「まぁよいか。身分証についてはとりあえず調べておこう。アヤの身分証はどうにかこっちで用意する。そうそう。衣食住は用意する。それ以外でほしいものは来週から月一で小遣いを渡すので受け取ってくれ」
本来は身分証から受け取れるらしいが。
「異邦人同士の貸し借り、献上は厳禁。見つけた時点で、貢がれた側の小遣いは来月は間引きされると思えまた物を買って貢ぐのも禁止だ」
「共同購入は?」
「ちゃんと分け合えるものならば。時と場合による。何かあるのか?」
「皆和食、故郷のご飯食べたいって。アルカンシェルなら故郷のものある、って噂話聞いた。もし皆食べたいって言うなら、と」
「まぁ、そのぐらいならばいいだろう」
「後フリザードにお礼に作りたい。こっちの料理知らないから、自分の故郷の味贈る」
「?毎晩食べていたのはこっちの料理だろう?」
「作り方知らない。覚えたらおいおい作る」
「アヤの手料理か。楽しみだな。先にこれを渡しておこう」
お菓子を手渡され、思わず受け取り首を捻る。
「早く元気になるために良さげなお菓子をアルカンシェルから購入した」
「ありがとう。でも依怙贔屓?」
「医者から退院後には食わせろと言われているからな」
裏を突こうとする彼にアヤはとりあえず食べる。
ウロのはと顔を上げるが、これは駄目。と止める。

ちなみにアヤは今回の怪我に加え、栄養失調などもあったために入院が長引いているのだが本人には伝わっていない。


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