昨日の自分にサヨナラ

林 業

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平和な日々

3,子供(助力)

呑気なアヤの提案に、二人は顔を見合わせる。

魔王の庇護下に居るはずの二人。
鬼人族のアイヴァーン、ことアイア。
猫人族のフィーロネ、こと、フィー。

アヤのお城に相談に来ない?という提案。

元々二人は人族に誘拐され、アイアに至っては生まれ故郷を滅ぼされてしまった。
奴隷として連行される直前でアイアたちは逃げ出すことが出来たのは運が良かった。

他にもいた子供たちを助けたいとは思っているが子供であることを歯痒くも思っていた。
「フリザードおーは、本人たちが望むようにって」
おにぎりを一緒に食べつつ告げるアヤ。
大分心を開き始めた二人は戸惑う。

アヤの言うことは正しいのか。
それとも、奴隷落ちにさせる嘘なのか。

人族は知恵や魔法を使って進化して来た。
対して獣人などは己が身体能力を使って進化して来たのだ。

獣人たち一人に対して、人族十人近くの働きが出来る。
と噂されているほど。

だからこそお互いその昔奴隷として使われてきたし、使ってきた過去がある。
今では違法奴隷は許されていないが、それでも馬鹿な奴は多い。
アイアとフィーは、王様か、異邦人や、子供の保護をしてくれる樹の大精霊の国、アルカンシェルに駆け込むつもりだった。
そんな中でアヤは子供を気遣ってくれる人だ。

王様に謁見と言われて喜ぶものの、それが罠ではないという保証はできない。

呑気におにぎりを食べている姿に、それを分けてくれる彼を疑いたくはない。

疑いたくはないが。
「フリザード、おー。連れて来ようと思ったけど、外出ると色々と面倒だから連れておいでって、これもらった」
王様連れてくんな。
アイアはそう思う。
アヤは鞄を探り、二人にカードを渡す。
「通行許可書だ」
驚く二人は太陽に翳したりと本物かと言い合う。
「あ、アイア、ガサツだから私が持つ」
「お前持ったら弱いんだから奪われるだろ。俺が持つ」
二人がぎゃあぎゃあと絡まるのをアヤは眺める。
(僕が持つの!)
(やだ。持つ!)
(アー君。ヤト君。いけません)
浮かんだ思い出を慌てて打ち消す。
もう、戻ってこない懐かしいのだから。
「行くところ、あるならお話するって」
ただと付け足す。
「行くとこないなら、出来たらウロの護衛、あ、ウロは子供なんだけどその子の護衛というお世話をしてほしいと思って。ちゃんと給金出す。お城の侍従もしてくれたら嬉しいけどそこはお話してね」

「わかった。でも、信用できないから後ろこっそりつーーーー」
「し、信用はしてるけど、お城行くまで何あるかわかんないから、こっそりついていっていい」

フィーが慌ててアイアの口を塞ぐ。
「うん。じゃあ、終わったら行こう」
ご飯を示して二人はそうだったとお弁当を口に運ぶ。
「この、塩辛さが美味しいけど、黄色いこの、箱みたいなのが好き」
「俺、こっちの茶色のがいい」
フィーは卵焼きを、アイアはハンバーグを示す。

昨日、再び異邦人たちで集まって作ったのがハンバーグ。
実習で猪もどきや、牛擬きを狩りに行ったお礼のお肉を使ったものである。
その時知った香辛料は異世界ならではというか、高かったので、カレーはまた後ほどになりそうである。

「なぁ、これ、本当に金払わなくていいのか?」
「いい。子供が飢えるのを見るのは嫌なんだ」

(おなかすいた。じいちゃん)

この子達を見ると自分たちを思い出す。
まだ頼っていた祖父を亡くしたころの。
力のない頃。
大事な片割れを守れない力ない自分を。

だから。
償いではない。
憐れみでもない。
ただ、助けてほしくて、手を差し伸べてくれる人がいてほしかった。
あの時は不思議な空間でフリザードに出会えたから良かったものの。

自分ができることをできる範囲でやりたいと願う。

だから手を出して、彼らが立ち上がれる力の源を渡す。
「自分が受けた恩を他人に返せばいいんだ。そしたら巡り巡って自分に返ってくる」

祖父がそう言っていたから。


    
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