昨日の自分にサヨナラ

林 業

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アヤの心

5,シンクロ(痛)

アヤは唸り声をベッドの上で上げる。
「大丈夫ですか?」
「痛い」
アヤは額を抑えつつ呻く。
「アヤさんが痛いと言うなんて!」
「成長ですね」
はしゃぐフィーとアイアに、アヤは否定する。
「違う。これ。アヤトが怪我したんだ。それだ」
「アヤト、さん?」
アヤは痛いとうつ伏せになる。
だがすぐ仰向けに戻る。
「双子だからか昔から痛みとかシンクロしちゃうことがあって」
「痛み止め飲みます?」
「むりぃ。アヤトが治療しない限り続く。最近は伝わってくること殆どなかったから油断した」
「双子って不思議だな」
アイアの言葉にアヤは眺める。

「そうじゃないと生き残れてない」

ウロがベッドに顔を乗せてくるのでアヤは頭を撫でる。

(アヤトの気配が近くなった気がする。前までは遠かったのに)
走った激痛に悲鳴を上げる。
(もう少し優しく治療して!)
心配する二人に枕に顔を押し付けて悲鳴を殺す。
(久々に痛みが伝わるのしんどい)

「アヤ。体大丈夫か?」
サガラがおかゆ片手に顔を出す。
「おじやがいい」
「味噌はコウノが持ってるだろ」
おじや?と首を捻る三人に、後から入ってきたカヤマが告げる。
ウロも美味しいの?とアヤの顔色を伺う。

「うぅ。お粥味ない。苦手」
「はいはい。そう言うと思って梅を砕いて混ぜたぞ」
サガラがフィーによろしくとおかゆを渡す。
「せんせー。オジヤってなんですか?」
アイアが不思議そうにカヤマに聞いている。
「雑炊」
「味噌汁に冷や飯と卵入れて温めたもの」
カヤマが答えてアヤは続ける。
ん?とカヤマは首を捻る。
フィーがふーと冷やしてアヤの口に運ぶ。
「あれ、美味しいの。ばあちゃんが熱出すとささっと作ってくれて、どっちかが熱だすと必ず貰いに行って。ばあちゃんがしょうがないって言って冷やしながら一口くれて」
どうしようもない些細な記憶。
だけど幸せだった記憶。
「あの味、どうしても出せないの。ばあちゃんのおじや食べたい」
喋っていれば眠気が襲ってくる。
「ばあちゃんに、じいちゃんに会いたいな」
よしよしとサガラは頭を撫でてくれる。


「あや」
心配そうに果物を持って入ってくるフリザードを見てから眠りに落ちる。


(この世界に来ちゃったの?アヤト。まだ死んで、ないよね。きっと血を見て気絶しただけだよね)

黒い猫が鳴いている。





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