昨日の自分にサヨナラ

林 業

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アヤの心

12,退屈なウロ(心配)

ウロは、人形を咥えて、二人が帰ってくるのを待つ。

時々通り過ぎていく人は無視して寝転がり、上向きになっては戻る。
繰り返しつつ、人形で遊ぶ。


時々、脳内で覚えた鼻歌を交えつつ、早く帰ってきてと念じる。

「うろ」

少し遠くから話しかけてくるお兄ちゃんサガラに対して、ウロは飛び起きる。
どうしたの?とすり寄り、頭をなでてくる彼に首を捻る。

このお城の勇敢な人たちの中でも未熟者の着る服を見て、ウロの遊び場で、遊んでたのかと考える。
正しくは、中庭の演習場で、兵士になるための訓練であるが、ウロが気にすることはない。
「お前、どこでアニソン覚えたんだよ」
(アニソン?なにそれ)
「お前時々鼻歌垂れ流してるだろ。それだ」
(あ、おかーさんがね。誰もいないときとか、ウロがお昼寝しているときとかに歌ってたりするの!うろ覚えちゃった)
えらい?と見上げる。

「アヤって鼻歌歌うのか」
大人しいが、時々派手に動くアヤを思い出す。
我がないというか、知識欲以外は自己主張しないタイプだと思っていたが。
「ちょっと認識変えるか。それよりウロ。部屋で休まないのか?」
(おかーさん戻ってこないの?まだかな)
「あ、あー。もうちょっとかかるな。一緒にいるか?」
(うろ、ここで待ってる。おとーさんとおかーさんお帰りなさいするの!)
嬉しそうにはしゃぐウロに、五歳児じゃんと内心で考えつつ、いい子だなぁと褒める。

「一緒に行けばよかったのに」
(ウロ、いい子だから!お父さんとお母さんを取り持つ、かすかになるの!)
「かすか?かす。あぁ。かすがい。誰にそんな難しい言葉を」
(おかーさんじゃない人!おかーさんより色々教えてくれるの。おかーさんは言葉選ぶけど違うの!)
にぱーっと嬉しそうな表情のウロ。
「あー。会ったことあるんだ」
(あるよ!)
怒りっぽい人は寝ているお父さんの額はたく。
悲しそうな人は隅っこで泣いてるけどぎゅってしてくれる。
喜んでいる人は撫でてくれる。
楽しい人は一杯面白いお話をしてくれる。
そんな人。でも怒りっぽい人は滅多に現れない。
一番出てくるのは喜びと悲しみの人。
楽しい人は?って聞くと出てくるけど怒りっぽい人は聞いても気まぐれでしか出てこない。
「へぇ。今度俺もお話してみたいな。誘ってくれよ。その人」
(イロドリ。って言うお名前らしいの)
「あぁ。そっか」
首を捻ればじゃあ、演習に戻るからと離れていく。



んーっと伏せてうたた寝を始める。


カラカラと馬車の音に飛び起きる。
(おかーさん!おとーさん!)
「わん」
吠えてその手を待つが何も無い。
「?」
あれーと首を傾けて眼の前に誰もいないのを見て、しょんぼりと項垂れる。

だが目の前にいるおかーさん。
「うろ。どうした?」
そっと顎に手が当てられ、そのまま頭へと撫で回される。
帰ってきたと頭を押し付ける。

「わん。わぉん」
「うん。ただいま」
「今戻ったぞ」
おとーさんからは馬のお兄ちゃんの匂いがする。
「リグ君の匂いするって」
「お前の兄なのだから先に土産を与えていただけだ」
「!」
じゃあ、じゃあとはしゃぐ。
「色々と買ってきたから部屋行こうか」
やった!と人形を咥えて先に向かう。
「ウロ。毛布忘れてる」
おかーさんは毛布を持ち上げて追いかける。


    
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