昨日の自分にサヨナラ

林 業

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君と過ごす日々

3,双子(感動)

魔王は一人の青年を引き連れて、フリザード、ラゥナを含む各国の王を前にしている。
「その青年が、世界を渡るスキルを持っている。じゃと」
「正しくは帰りたい場所に帰れる場所、です。女王陛下」
メガネを押し上げつつ青年は告げる。
「とはいえ、帰りたい異邦人たち全員を帰すには、俺には魔力が足りない」
「トップがお渡しした魔法陣は?あれは補助魔法陣だと申しておりました。ということは期間の補助を」
「あれは、なぁ」
一度目を通したらしいが、言葉を濁してから続ける。
「魔法陣の詳しい原理はわかんないんで、今は明言を避けますが、絶対的に足りないんです」
「こやつはな。魔力が本当に枯れた泉のようだからな。無理だろうな」
「これでも無理して増やしたんですけどね」
あいつが、いれば。
等と聞こえてくる声に、リリーアが反応する。
「ほう?あいつとは?」
悩みつつも口にする。
「トップさんとやらにお会いすることは?」
「残念ですが運命に阻まれるから来るのは無理と伝言を受けております」
「フリザード、ヴィッサーという方はご存知ですか?」
フリザードは全員の目が向いたのを感じながら私だと告げる。

「え、っと。王様、ですか?」
「だな」
「えっと」
額を抑えてから顔を上げる。
「では、片目に変な眼帯。手足がいびつな茶色の目の少年に心当たりは」
「まぁあるな」
「当たりかよぉ」
はぁあと盛大な溜息に、眼鏡を押し上げると続ける。
「会わせていただけますか?」
「まさか。恋人とかいわないだろうな」
「はっははは。止めてください」
笑い声を上げるが顔は笑っていない




アヤは城へと戻って来るとアイアとフィーを探す。
(二人にお土産)
城に入ってすぐ、振り返る。
「呼んだ?」
全員が左右に首を振っているがアヤは唐突に走り出す。

ドアを開けたばっかりのフリザードがアヤを見る。
「あ。アヤ」
フリザードがよかったと呼び止める。
「話があるのだ」
アヤはフリザードの隣を通り過ぎ、青年へと抱きつく。
「あ、あや!」
驚くフリザードに青年も抱きしめ直す。

「や、やっぱ。やはりそ、そういうそういうそういう」
フリザードが混乱している横で、ほうとリリーアが感嘆の声を、ラゥナはなるほどと頷く。
落ち着けとロバートが肩を叩くが、絶望に片足を突っ込み始めている。
「うん。ただいま。あーくん」
優しい笑顔を浮かべた青年に、アヤは見上げる。
「うん。おかえり」
混乱しつつもフリザードはアヤを引き剥がす。
アヤはこの人はと呆れながら告げる。
「フリザード。片割れのあやと」
「どうも。光る野原を彩る人、コウノアヤト。っす」
眼鏡を押し上げつつ告げる。
アヤはその仕草に首をひねる。
「いや。この眼鏡は、アルカンシェルの人から貰ったもん。認識阻害的な魔術あるらしい」
「ヴィッサー陛下。男の嫉妬は醜いですよ。しかも兄弟相手に」
アヤを背後から抱きしめている未だ混乱中のフリザードに、ラゥナが代表して止める。
「アヤ。本当に兄上なのか?」
「兄言っても双子なんでどっちでもいっすけどね。アヤのほうがしっかりしてるしなぁ。そ、れ、よ、り」
「ん?」
「想い人が王様なんて聞いてないぞ」
アヤはドヤ顔を示す。
「言ってねぇえ!じゃねぇよ。俺は本気で焦ってんだぞ。てっきり一般人かメーランっちみたいに商人とか、宮廷魔術師とかと思ってたんだからな。あ?俺といるときは知らなかった?わかった。じゃあ後でじっくり聞かせてもらおうか」
めーらんっち?とラゥナは首を傾けている。
「まぁ、落ち着け。えっと」
魔王は戸惑いつつも、アヤとアヤトを見る。
「会話は念話でも使っているのか?後こうの。本当にこれは兄でいいんだな?」
「そうっすよ。魔王様」
アヤはこくりと頷く。
「念話は使わないけどお互い言いたいことは伝わる」
双子だからとアヤは手を伸ばすがフリザードに、阻まれている。
「アヤは一時期本気で喋んなかったので。大体わかりますよ」
「それで?其奴がいると魔力の補助ができるのか?」
「アヤ。手貸して」
アヤが手を出し、アヤトはその手を握る。
「はい。女王陛下。可能です。アヤの力を借りれば帰郷を望む異邦人の帰還ができます」
「面倒な」
「言うな。俺が一番理解している」
アヤの呟きにアヤトは即答する。


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