62 / 147
時戻り
温泉
しおりを挟むトップは鼻歌交じりに温泉を楽しんでいる。
やれやれと呆れた様子で付き合ってくれている虎獣人のグル。
傷だらけの皮膚を持つトップと、毛皮が水で濡れて少しほっそり、しかし筋肉が目立つグル。
満足そうに鼻歌を奏でるトップ。
ご機嫌に異邦人ならではの聞いたことのない音を奏でる。
(えらくご機嫌じゃなぁ)
グルは額に乗せたタオルの場所を整える。
元々トップは温泉が好きな人。
あっちこっち温泉に入ったかと思えば、お気に入りなのか決まった場所を選ぶこともある。
そういう場合は八割、面倒が起こる。
(今日はそうでないとよいのだが)
考えていれば、この国の王が顔を出す。
「なんじゃ。お主!」
「お。本当にいるじゃん」
「ん?」
トップが彼を見て首を捻る。
「なんで来た?」
どうやら把握していなかったらしい。
確かに貸切にはしていなかったが、トップは基本人がいない時間を狙う。
「まぁ。そう言うなって。別に邪魔しに来たわけじゃねぇしな」
「ふーん」
「お前にザードが探している人間を見つけてほしくてな。俺って友達思いだし」
「その探索中の人って異邦人?じゃあもういるよ」
「そんな投げやりでなくてな」
「未来の結果を見るとその未来で固定化されちゃうから見たくない。変えられない固定された現在に意味はない」
「そういうものか?」
「それなら貴方が結婚しているかどうか確定の未来見てあげようか?」
「それで未婚であったらどうなるんだ!」
「未婚のままだね」
「断る!」
「そういうとこだよ。全く」
湯船から上がり、脱衣所へと向かう。
グルと王も追いかけ、着替えを始める。
その背中にある傷跡は何処か痛々しい。
「なぁ。お前は何を望んでるんだ?」
「あぁ。王様にはまだ内緒」
グルはくすりと楽しそうに笑ったのに気づく。
「秘密主義でやっていけるのか?」
「好きで秘密にしているわけじゃないけどね」
じっと見つめてくる王は、続ける。
「何処かで会ったことあるか?」
彼は何か思考を働かせて告げる。
「今は春終わり。うん。まだ会ったことないね」
「どういう」
「大変です」
兵士が、悲報を告げてくる。
「リヴァイアサンがでました!」
「なん、いますぐ出兵の」
「あ。忘れてた。グル」
「討伐ですね!おまかせを!」
服を来たグルは胸を叩く。
「行くよー」
咄嗟にグルの肩を掴み、一緒に転移する。
目の前には沿岸部で暴れ狂う海龍。
「おぉ。あれだ。あのどこの部位を切り落としても美味しく、部位ごとに各魚の旨味が溢れ出してきた伝説の魚」
「食ったことあるのか?」
何百年かに一度出現するという海竜。
そのたびに兵士が犠牲となる天災である海龍、リヴァイアサン。
もし本当に食べたことがあるというのならば一体この男は何歳なのだろうか。
「わしが参りましょう」
「待て待て待て!あいつらは国の兵士が」
「皆死ぬのと、無傷どっちがいい?」
「そりゃあ後だが」
王が止めようとするがトップはだよねと頷いた瞬間、リヴァイアサンの頭の上にいる。
「な、なんでぇえええ!お前死ぬ気か」
「わ、わしの出番じゃないのかああああ!」
絶叫を上げる二人の側で、リヴァイアサンはほぼ瞬間的に凍りつく。
「わし、わし活躍。たまには活躍したかった」
落ち込むグルに思わず同情する。
「二、三日様子をみたら死ぬと思うからそっから解体しよう。王様。何キロかうちに頂戴。討伐報酬」
「お前はこいつに活躍させないのか?」
「活躍させたらあの子が泣く」
今泣きそうな武人がいるんだが?
と隣に視線を落とす。
そしてを出すトップに、交渉に城へ来いとそれだけ伝える。
来たのはラゥナだったのはまた別の話。
後日、アルカンシェルでは刺身が乗った丼が振る舞われたという。
0
あなたにおすすめの小説
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
僕に双子の義兄が出来まして
サク
BL
この度、この僕に双子の義兄が出来ました。もう、嬉し過ぎて自慢しちゃうよ。でも、自慢しちゃうと、僕の日常が壊れてしまう気がするほど、その二人は人気者なんだよ。だから黙って置くのが、吉と見た。
そんなある日、僕は二人の秘密を知ってしまった。ん?知っているのを知られてしまった?が正しいかも。
ごめんよ。あの時、僕は焦っていたんだ。でもね。僕の秘密もね、共有して、だんだん仲良くなったんだよ。
…仲良くなったと、そう信じている。それから、僕の日常は楽しく、幸せな日々へと変わったんだ。そんな僕の話だよ。
え?内容紹介が内容紹介になってないって?気にしない、気にしない。
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
幸せごはんの作り方
コッシー
BL
他界した姉の娘、雫ちゃんを引き取ることになった天野宗二朗。
しかし三十七年間独り身だった天野は、子供との接し方が分からず、料理も作れず、仕事ばかりの日々で、ずさんな育て方になっていた。
そんな天野を見かねた部下の水島彰がとった行動はーー。
仕事もプライベートも完璧優秀部下×仕事中心寡黙上司が、我が儘を知らない五歳の女の子と一緒に過ごすお話し。
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
祖国に棄てられた少年は賢者に愛される
結衣可
BL
祖国に棄てられた少年――ユリアン。
彼は王家の反逆を疑われ、追放された身だと信じていた。
その真実は、前王の庶子。王位継承権を持ち、権力争いの渦中で邪魔者として葬られようとしていたのだった。
絶望の中、彼を救ったのは、森に隠棲する冷徹な賢者ヴァルター。
誰も寄せつけない彼が、なぜかユリアンを庇護し、結界に守られた森の家で共に過ごすことになるが、王都の陰謀は止まらず、幾度も追っ手が迫る。
棄てられた少年と、孤独な賢者。
陰謀に覆われた王国の中で二人が選ぶ道は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる