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平和に

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のんびりと人にとっては年の離れた、神に取っては当たり前の年齢差の兄弟を膝の上に乗せて日向ぼっこ。
自身の嫁であるモリヒトはこらえ・・・と木工加工中。
「ねーねー。にーさま。なんでらーくんって嘘つかないの?」
膝の上で聞いてくる兄弟に、頭を撫でる。
そんな彼も好きだと思う。
「らーちゃん。嘘つけないんだよ」
適当なことを言った瞬間、こらえ・・・が盛大な溜息を零すと近づいてくる。
「付けないわけじゃないです。適当なことを言うのはやめなさい」
「だって、こと兄ちゃんだって、言ってたし、俺のときだって嘘ついたところ見たことないって。父様だって言ってたしさ」
「僕は、言霊を信じていますし、何よりあなた達が嘘を見抜けるからですよ。殊更嘘を言わないのは」
ぎょっと目を見開いて親を見る。
「えっと父様?」
「あの方はそういうことは言いませんよ。神の力については聞かなければほとんど話されません。人の身に余ることを聞く必要もありませんしね」
そういえば神の力についてはほとんどこらえ・・・は山神に聞くよう伝えてきた。
「じゃあなんで?」
「勘?ですかね」
不思議そうに言われるが、その勘が当たっていたりするから怖い。
「まぁ、だからといって、わからないからと嘘をついていい、言い訳にはなりませんよ。わかってますか?」
ちらりと兄弟を見たこらえ・・・に、視線をそらす兄弟。
また何かやったなぁと頭を撫でる。
後で聞けば、盗み食いをして、誤魔化そうとしていたらしい。
そりゃあ諌められると頷く。
「まぁ、子供の頃は嘘を吐くのも親である僕らが諌めれるからいいですけどね」
「でもさ。らーちゃん。いい嘘と悪い嘘があるじゃん。使わないの?モリヒトは嘘上手じゃないから隠し事とかはわかるけどさ」
「いい嘘も悪い嘘もどちらも結局嘘ですからね。それにいい嘘は人を想う心が産むものです。あなた達神の子供に対して、人の知識を持つ僕の善悪でいい嘘をついても、ねぇ」
悩ましそうなこらえ・・・
「でもさ。善悪を言うなら大神様に怒ったり、風神の姉さんを怒ったりしないよね」
未だにた眷属や大神の謝罪が届き、仕事を頼みたそうにしているが一切断っていると聞く。
山神は、どうなのかと思えば嫁を独り占めできる上に、山神自身は仕事をこなしているから問題ないとしている。
元々こらえ・・・が係るのは気が進まなかったと言う。
本来、神の嫁に自ら進んではなく大神からお願いすること自体非常識なことではある。
こらえ・・・も大神には色々とあるらしいが多くは語ってくれない。
「大神様に対しては、約束を破ったことを怒っているのですよ。風神様に関しては、怒っているのではなく、どうして、辞めてほしいかを理詰めしたら怖がられただけなんですよ?」
「らーちゃん。約束、破らないようにします」
「他者に迷惑かけない程度なら破っていただいていいんですよ。自身で片付けれる。もしくはそれ専門の知恵者がいて頼れる程度ならば」
「大神様は違ったの?」
「山神様への伝言を頼んだのは、山神様が友人知人へ突撃をするとわかっていたからですよ。なのに伝言をせず、そのため、迷惑をかけなくても良い方々に面倒をかけてしまいました」
「大神にも言い分があったと思うけど」
「時間稼ぎですよね。それならば息子であるあなたに伝言を伝えれば良いことです。あなたの言う事ならば山神様の暴走も収まるでしょう。迷惑もあなた一人に収まりました」
「僕には迷惑」
「どちらにせよ。山神様はあなたも巻き込みますので諦めなさい」
「否定できない」
まぁ、それもしょうがないかと兄弟の頭を撫でる親を見る。
「後は謝罪の割には楽しそうに事の顛末を眺めて、誠意がなかったのもあります」
「あの時、生まれ変わったばっかりだったしなぁ」
大神は一度生まれ変わり、若くなっていたための出来事ではあった。
あったのだが、あの謝罪はなかったな。と頷く。
若気の至りだろう。
記憶は思い出を消して、神力と知識だけを残す。
「その辺は聞かなかったことにしましょう」
「じゃあ、らーちゃん。僕らもらーちゃんのように大神への信仰をしなきゃいけないの?ほら。らーちゃんの家って大神様の言うこと聞かなきゃいけないんでしょう?」
「えっと大神様からの啓示は聞くよう言われていますよ。だからあの時も引き受けましたし、山神様を待つと僕では、あれ以上の祟り神への対処できないので急ぎ参りました」
「というか祟り神を鎮めたこと自体すごいんだけどなぁ」
本人は当たり前のように思っている様子に呆れるしかない。
「ただ、あなた達に限っては一応上司が大神様ですから。教えを伝えなくても同じだと思ったんですが」
「あっ!」
「むしろ教えて反抗されても大神様を困らせるだけですからねぇ」
それもそうだと額を押さえる。
「らーちゃんってすごいね」
「それは、あなたの親ですからね」
優しく頭を撫でてくる。

「それにしても、俺も早く子供欲しいなぁ」

モリヒトが反応して顔を真っ赤にする。

「子は授かるものですよ」
「らーちゃんたちに孫見せたいもんね」
「僕も!」
「みたいですけど無理は禁物ですよ」
はしゃぐ二人は頑張ってお勤めしようと微笑み合う。


山神は賑やかだと楽しそうにしながらお団子とお茶を持ってくる。
「あー。とーさま。僕も手伝うの!」
飛び出し持つと両手を広げる。
「足元に注意しなさい」
山神が渡して、その姿を見た親は微笑み合う。
「モリヒト。おやつにしましょう。手を洗ってきましょうか」
「あ、はい」
笑顔で嫁が駆け寄ってくる。

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