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21xx年のある日
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少子高齢化が進み過ぎた21xx年。
AI搭載のアンドロイドは労働力としてだけではなく、人間の話し相手となり、遊び相手となり、時に相談相手へと進化していった。
昔は高価だったアンドロイドも、あれこれオプションをつけなければ手が出ない価格ではなくなり、今では最高級の掃除機と同等くらいで手に入れる事ができる。
デフォルトの機能としては、簡単な会話、簡単な家事といった最低限の作業ができ、購入後は各オーナーが必要だと思う機能を追加する事が可能だ。
たとえばもっとたくさん会話がしたいから言葉や知識を増やしたい、美しい歌声機能がほしい、子供の為に家庭教師機能がほしい…などなど、そういった場合はネット上からそれらをダウンロードすればいいし、力仕事をしてほしいなら、メーカーからデータを買って、マッスルパーツを3Dでプリントアウトをすればいい。
人間に対して決して危害を加えないようにプログラムされているから安心して一緒に暮らせるし、穏やかで、品があり、疲れを知らず、愚痴や不満を言う事もない。
今や一家に1台が当たり前、アンドロイドは人間にとってなくてはならい存在になったのである。
とある企業の研究所。
ここでは主にAIの研究開発と、個人所有のAIのチューリングテストも行っていた。
これだけアンドロイドが普及した今、ネット上には気軽に判定できるチューリングテストサイトが溢れかえっていた。
だがオーナーの中には、時間をかけて少しずつカスタマイズした(オーナーは『育てた』と言うのだが)大切なアンドロイドがどれだけ人間に近いのか、高いテスト費用を支払っても正確に判定してほしいという人も少なくない。
それゆえ余所行きのきれいな服を着せてもらったアンドロイドとオーナーである人間が研究所内を仲良く歩く姿がよく見かけられた。
コンコンコンコン!
せわしないノックの音のすぐ後に、慌てた様子の研究所職員が所長室に入ってきた。
「所長! 失礼します! 大変です! どうしましょう!」
「なんだね、騒々しい。何が大変なのだね? 入ってくる早々『どうしましょう』と言われても何の事だかわからんのに返答はできないよ」
「大変失礼いたしました! 今、予約の無いチューリングテスト希望者が受付に来ていまして、どうしても今日テストをしてくれと騒いでいるのです!」
「予約の無い客が来た? なんだそんな事か。融通をきかせてテストを受けさせてやればいいじゃないか。それとも今日は予約でいっぱいなのかね?」
「いえ、予約にはまだ余裕があります。ですが今受付で騒いでいるのはオーナーではありません。というか、オーナーがいないのです。AI搭載のアンドロイドしかいません!」
「アンドロイドが? オーナーも無しに単独で来ていると言うのか? それで? 自分にテストを受けさせろと?」
「そうです! しかもテストの判定者には、うちの職員の坂田を付けろと指名しています。坂田が何か事情を知っているのかもしれないので、今呼び出してはいるのですが……」
「ふむ……アンドロイドが単独で行動する事はあるが、大抵は買い物などオーナーの命令でだ。オーナーがテストを受けさせたいのなら一緒にいないのは変だな」
「そうなんです。女性型のアンドロイドで腕の識別コードを読み取っても『オーナー不明』と出てきます。それと少々バグが生じているようでして……」
「というと?」
「暴力的な行動はとりませんが、その…えらく言葉使いが悪いです。まったくAIらしくありません…」
AI搭載のアンドロイドは労働力としてだけではなく、人間の話し相手となり、遊び相手となり、時に相談相手へと進化していった。
昔は高価だったアンドロイドも、あれこれオプションをつけなければ手が出ない価格ではなくなり、今では最高級の掃除機と同等くらいで手に入れる事ができる。
デフォルトの機能としては、簡単な会話、簡単な家事といった最低限の作業ができ、購入後は各オーナーが必要だと思う機能を追加する事が可能だ。
たとえばもっとたくさん会話がしたいから言葉や知識を増やしたい、美しい歌声機能がほしい、子供の為に家庭教師機能がほしい…などなど、そういった場合はネット上からそれらをダウンロードすればいいし、力仕事をしてほしいなら、メーカーからデータを買って、マッスルパーツを3Dでプリントアウトをすればいい。
人間に対して決して危害を加えないようにプログラムされているから安心して一緒に暮らせるし、穏やかで、品があり、疲れを知らず、愚痴や不満を言う事もない。
今や一家に1台が当たり前、アンドロイドは人間にとってなくてはならい存在になったのである。
とある企業の研究所。
ここでは主にAIの研究開発と、個人所有のAIのチューリングテストも行っていた。
これだけアンドロイドが普及した今、ネット上には気軽に判定できるチューリングテストサイトが溢れかえっていた。
だがオーナーの中には、時間をかけて少しずつカスタマイズした(オーナーは『育てた』と言うのだが)大切なアンドロイドがどれだけ人間に近いのか、高いテスト費用を支払っても正確に判定してほしいという人も少なくない。
それゆえ余所行きのきれいな服を着せてもらったアンドロイドとオーナーである人間が研究所内を仲良く歩く姿がよく見かけられた。
コンコンコンコン!
せわしないノックの音のすぐ後に、慌てた様子の研究所職員が所長室に入ってきた。
「所長! 失礼します! 大変です! どうしましょう!」
「なんだね、騒々しい。何が大変なのだね? 入ってくる早々『どうしましょう』と言われても何の事だかわからんのに返答はできないよ」
「大変失礼いたしました! 今、予約の無いチューリングテスト希望者が受付に来ていまして、どうしても今日テストをしてくれと騒いでいるのです!」
「予約の無い客が来た? なんだそんな事か。融通をきかせてテストを受けさせてやればいいじゃないか。それとも今日は予約でいっぱいなのかね?」
「いえ、予約にはまだ余裕があります。ですが今受付で騒いでいるのはオーナーではありません。というか、オーナーがいないのです。AI搭載のアンドロイドしかいません!」
「アンドロイドが? オーナーも無しに単独で来ていると言うのか? それで? 自分にテストを受けさせろと?」
「そうです! しかもテストの判定者には、うちの職員の坂田を付けろと指名しています。坂田が何か事情を知っているのかもしれないので、今呼び出してはいるのですが……」
「ふむ……アンドロイドが単独で行動する事はあるが、大抵は買い物などオーナーの命令でだ。オーナーがテストを受けさせたいのなら一緒にいないのは変だな」
「そうなんです。女性型のアンドロイドで腕の識別コードを読み取っても『オーナー不明』と出てきます。それと少々バグが生じているようでして……」
「というと?」
「暴力的な行動はとりませんが、その…えらく言葉使いが悪いです。まったくAIらしくありません…」
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