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プラネタリウムは密室(仮)ですか?

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「神と人が一緒に暮らしていた時代、からすは白銀の羽毛を持ち人の言葉を話すことができました。そして太陽の神アポロンに仕え、地上にいる奥さんの様子を毎日報告していました。ところがある日、毎日の激務に疲れたからすは仕事中につい居眠りをしてしまいます。報告の時間に遅れたからすはアポロンに理由を聞かれ、とっさに『奥様が浮気をしていたので見張っていました』と嘘を吐きました。しかしそんな嘘はすぐにばれてしまいます。嘘を吐いたからすは人の言葉と白銀の羽を奪われ、夜空に磔にされました。からす座を構成する星々は、磔にしている銀の釘の頭なのです。現代のからすが黒く、ガーガーしゃがれた声で鳴くのはこの時のことが原因だと言われています。もし春の夜空で濁った声が聞こえたなら、それはからす座の贖罪の言葉なのかもしれませんね」

真面目にアポロンに仕えていたからすだが、たった一度のミスで神に嫌われいろんなものを奪われる。素直に謝っておけばまた違った結末になっていたのかも。なんて考える。

「夜空を見渡し、紹介した星々を結んでいくと大きなカーブが出来上がりました。北斗七星の柄をのばして、うしかい座のアークトゥルス、おとめ座のスピカ、からす座、です。みなさんお気づきでしょうか。そう、しりとりになっているんです。アークトゥルス、スピカ、からす。覚えやすいですね。一般的にはからす座は含めず、北斗七星と二つの一等星を結んだ大きなカーブを、春の大曲線といいます。見渡す限りの眩い星々から星座を探しやすくするため、季節ごとにいろんな図形があります。春には大曲線。お家に帰って夜空が晴れていたら是非、今日ご紹介した星座たちを探してみてくださいね」

プラネタリウムの星空はあくまで(仮)。実際の星空に興味を持ってもらうことがプラネタリアンの務めみたいなものだ。

「本日たくさん星座を紹介していきましたが、それらは一部に過ぎず、全天にはもっと多くの星座たちがいます。どんなに地上が明るくても皆さんの上には常に星たちが、星座たちが光輝いているということを忘れないでください。それでは番組投映を開始します。今回投映いたします番組は『星空探偵の大冒険』です。最後までごゆっくりお楽しみください」

星空解説が終わりロードした番組の投映を開始する。解説をしながら事件を解く鍵をみつけたような気がした。それに尼寺に聞きたいこともできた。

幸いにも考えをまとめる時間は十分にある。

『やあ、僕は星空探偵。みんなの疑問を解決する名探偵さ――』
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