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第四章 鳥像の門
地上へ3
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動かない空気の中で、作成者の肩がびくっと揺れた。手の中に青白く鋭利に光る神様の骨を静かに握ったまま、無表情で立ちつくしている。
「みんなの前ではやりにくい? 二人きりになろうか」
言い終わらない内に作成者が空中から獲物を襲う鳥の早さでシロキさんの目の前に移動した。
「おいっ……」
止めに入りかけたのに……カドが足に纏わりついて離してくれない。
シロキさんが今、文字通り、目の前にガジエアが突き立てられいるというのに。
「カド、離してくれ」
「二人に任せよう」
静かにカドが言った。
シロキさんのきれいな目が微笑んで少し細くなった。
「怖いの? もしかして生命の神様の目を失ったら僕は消える? 生命の神様は失った身体の部分を戻さないと再成しないんじゃないの?」
シロキさんの不安定だが落ち着いた声が響く度、鏡が騒めく。
「……お前を連れて行かなくても、わたしの神様は再成する。でも――門を戻すことができない」
シロキさんが優しく目を細めたまま頷いた。
「やっぱりね、移動した時の身体でないと門を引き戻せないんだね。お前が必死で取り戻しかった訳だ」
「それもある。けど、お前の目は……取り出したら再成しない。他の神様は魂を元に身体を造ったから、身体を失っても、魂の欠片があればいくらでも再成できた。でもお前は目から魂まで造ったから、それを完全に奪ったら、再成できない身体になってしまう」
シロキさんが軽い溜息をつく。
「そう。そうとわかっていて僕を造ったなんてひどいな。遅かれ早かれ、僕は目を抉り取られて消える運命だ。カドに身体を貸している時に目に大怪我をされなくて良かったよ。ねえ、僕はそれでも構わない。生命の神様が元に戻って、鳥の門が回収され、この世界がまだまだ続いてくれることを願っている」
作成者がまた少しだけシロキさんに近づき、ガジエアがシロキさんの瞼に触れた。
シロキさんが作成者の顔を両手で強く包んだ。
「シロキ、何する――」
作成者が言い終わらないうちにシロキさんが鏡と化した。
本気で鏡になる時はこうなるのか――。
全身が周囲を反射し、表面を流れる液体は固形の鏡と違い常に景色を映しては溶かし、全く落ち着かない。異様で、不気味ですらある。
流れ続ける鏡に時々自分が移り込む度、何故か恐怖を感じて心臓の動きが早まるがわかる。何も隠していることなど無いのに、もしかしたら自分でも気がついていない自分の醜態を見せつけられるのではないかと身構える。
昔、生命の神様の放った鏡を見た人間たちを思うと、胸が締めつけられる。
怖かっただろうな、かわいそうに。
目を背けようとする作成者の身体を片腕で抑え、もう片方の手では顔を掴んで、よそ見をさせないシロキさんの身体は細い。どこにあんな力があるのかと思う。本当にシロキさんの印象が定まらない。
これから何十年も一緒にいたら、理解できる日がくるのだろうか。知るのが怖いのに、知りたい気持ちにも抗えない。
「シロキ……もうわかったから」
「みんなの前ではやりにくい? 二人きりになろうか」
言い終わらない内に作成者が空中から獲物を襲う鳥の早さでシロキさんの目の前に移動した。
「おいっ……」
止めに入りかけたのに……カドが足に纏わりついて離してくれない。
シロキさんが今、文字通り、目の前にガジエアが突き立てられいるというのに。
「カド、離してくれ」
「二人に任せよう」
静かにカドが言った。
シロキさんのきれいな目が微笑んで少し細くなった。
「怖いの? もしかして生命の神様の目を失ったら僕は消える? 生命の神様は失った身体の部分を戻さないと再成しないんじゃないの?」
シロキさんの不安定だが落ち着いた声が響く度、鏡が騒めく。
「……お前を連れて行かなくても、わたしの神様は再成する。でも――門を戻すことができない」
シロキさんが優しく目を細めたまま頷いた。
「やっぱりね、移動した時の身体でないと門を引き戻せないんだね。お前が必死で取り戻しかった訳だ」
「それもある。けど、お前の目は……取り出したら再成しない。他の神様は魂を元に身体を造ったから、身体を失っても、魂の欠片があればいくらでも再成できた。でもお前は目から魂まで造ったから、それを完全に奪ったら、再成できない身体になってしまう」
シロキさんが軽い溜息をつく。
「そう。そうとわかっていて僕を造ったなんてひどいな。遅かれ早かれ、僕は目を抉り取られて消える運命だ。カドに身体を貸している時に目に大怪我をされなくて良かったよ。ねえ、僕はそれでも構わない。生命の神様が元に戻って、鳥の門が回収され、この世界がまだまだ続いてくれることを願っている」
作成者がまた少しだけシロキさんに近づき、ガジエアがシロキさんの瞼に触れた。
シロキさんが作成者の顔を両手で強く包んだ。
「シロキ、何する――」
作成者が言い終わらないうちにシロキさんが鏡と化した。
本気で鏡になる時はこうなるのか――。
全身が周囲を反射し、表面を流れる液体は固形の鏡と違い常に景色を映しては溶かし、全く落ち着かない。異様で、不気味ですらある。
流れ続ける鏡に時々自分が移り込む度、何故か恐怖を感じて心臓の動きが早まるがわかる。何も隠していることなど無いのに、もしかしたら自分でも気がついていない自分の醜態を見せつけられるのではないかと身構える。
昔、生命の神様の放った鏡を見た人間たちを思うと、胸が締めつけられる。
怖かっただろうな、かわいそうに。
目を背けようとする作成者の身体を片腕で抑え、もう片方の手では顔を掴んで、よそ見をさせないシロキさんの身体は細い。どこにあんな力があるのかと思う。本当にシロキさんの印象が定まらない。
これから何十年も一緒にいたら、理解できる日がくるのだろうか。知るのが怖いのに、知りたい気持ちにも抗えない。
「シロキ……もうわかったから」
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