4 / 7
4.
しおりを挟む
フクロウは、空がぼんやり明るくなるまで、猫にねだられるままに話をしました。
猫は、フクロウのしてくれる外の話に夢中になりました。
フクロウが帰る時、猫は最初に会った時と同じことを聞きました。
「また来てくれる?」
「会いたきゃ君がくればいい」
フクロウは大きな翼で少し先に見える背の高い木を指して言いました。
「あそこが俺のよくいる木だ」
猫は驚きました。
まさか、こんなに近くに住んでいたなんて思わなかったからです。
その木は、猫のいつも見ている窓からよく見えるところに生えていました。
フクロウが帰ってからも、猫はその木をしばらく眺めていました。隣を見れば赤い小さな実が小枝にかかっています。猫はなんだかとても安心して、その日は久しぶりにゆっくり眠りました。
次の日、フクロウは来ませんでした。猫は向こうに見える高い木や、小枝にかかった赤い実を見て過ごしました。赤い実を見ていると、あの夜の事や綺麗なさくらの話を思い出すからです。猫は、それだけで幸せでした。
そんな日が続きました。フクロウとの思い出は色あせませんでしたが、赤い実は猫の見ている前で、だんだんと小さくしぼんでいきました。
それを見続けるうち、猫もだんだんと元気をなくしていきました。
猫は思いました。
あの実を地面に埋めれば、綺麗なさくらが見られるのに……と。
夜になるにつれ、風が強くなってきました。
赤い実は小枝の上で何度も大きく揺れています。
猫は、赤い実が下に落ちてしまうのではないかと、ハラハラしながら見守っていました。
月の光も空一面の薄い雲に邪魔されて、辺りは薄暗くなっています。
猫は、赤い実を見失わないようにひたすら見つめていました。
ゴウッとひときわ強い風が吹いて、辺りが暗くなりました。
猫は、フクロウが来てくれたのかと思って顔を上げましたが、大きな黒い雲が月を完全に隠していただけでした。
がっかりして猫が視線を戻すと、いつもの場所に赤い実はありませんでした。
「どうしよう」
猫は泣きたくなりました。
「きっと下に落ちたんだわ」
窓から必死に赤い実を探しても、とても小さくて見つかりません。
猫は、一階の窓からなら見えるかもしれないと思い、一階まで駆け下りました。
台所にある窓が一番外を見渡せそうでしたが、いつも手前にお鍋やフライパンが並べてあるので、猫は今まで窓際まで行った事がありませんでした。
今日もやっぱりお鍋は並べてありましたが、猫はかまわず大きなお鍋の上に飛び乗りました。お鍋はぐらりと揺れて、下に落ちそうになったので、猫は慌てて隣のフライパンに飛びうつりました。お鍋は、そのままガランガランという大きな音を立てて床におちて転がっていきました。
窓は、端っこが少しだけ開いていました。
ちょうど、猫が一匹通れるくらいに。
猫は驚きました。何か、見てはいけないものを見てしまったような気になったのです。
思わず、猫は呟きました。
「外に出られるかも……」
そして、そんな事を言ってしまった自分に、またびっくりしました。
しかし、芽生えてしまった外への期待はむくむくと膨らんできて、猫の心を一杯にします。
猫は、フライパンを蹴って窓の端まで行きました。
フライパンはお鍋と同じように大きな音を立てて床を転がっていきました。
猫は窓から下を覗き込んでみました。十分着地できる高さです。
その時、二階で人の話し声がしました。
大きな音で家の人が目を覚ましてしまったのでしょうか。続いて、扉の音と階段を降りて来るスリッパの音がしてきました。
猫は焦りました。
見つかったら、この窓はきっと閉められてしまうでしょう。
そうこうしているうちに、スリッパの音は扉の前までせまってきました。
ギィッときしんだ音を立てて扉が開いた瞬間。猫は、夢中で外に飛び出していました。
猫は、フクロウのしてくれる外の話に夢中になりました。
フクロウが帰る時、猫は最初に会った時と同じことを聞きました。
「また来てくれる?」
「会いたきゃ君がくればいい」
フクロウは大きな翼で少し先に見える背の高い木を指して言いました。
「あそこが俺のよくいる木だ」
猫は驚きました。
まさか、こんなに近くに住んでいたなんて思わなかったからです。
その木は、猫のいつも見ている窓からよく見えるところに生えていました。
フクロウが帰ってからも、猫はその木をしばらく眺めていました。隣を見れば赤い小さな実が小枝にかかっています。猫はなんだかとても安心して、その日は久しぶりにゆっくり眠りました。
次の日、フクロウは来ませんでした。猫は向こうに見える高い木や、小枝にかかった赤い実を見て過ごしました。赤い実を見ていると、あの夜の事や綺麗なさくらの話を思い出すからです。猫は、それだけで幸せでした。
そんな日が続きました。フクロウとの思い出は色あせませんでしたが、赤い実は猫の見ている前で、だんだんと小さくしぼんでいきました。
それを見続けるうち、猫もだんだんと元気をなくしていきました。
猫は思いました。
あの実を地面に埋めれば、綺麗なさくらが見られるのに……と。
夜になるにつれ、風が強くなってきました。
赤い実は小枝の上で何度も大きく揺れています。
猫は、赤い実が下に落ちてしまうのではないかと、ハラハラしながら見守っていました。
月の光も空一面の薄い雲に邪魔されて、辺りは薄暗くなっています。
猫は、赤い実を見失わないようにひたすら見つめていました。
ゴウッとひときわ強い風が吹いて、辺りが暗くなりました。
猫は、フクロウが来てくれたのかと思って顔を上げましたが、大きな黒い雲が月を完全に隠していただけでした。
がっかりして猫が視線を戻すと、いつもの場所に赤い実はありませんでした。
「どうしよう」
猫は泣きたくなりました。
「きっと下に落ちたんだわ」
窓から必死に赤い実を探しても、とても小さくて見つかりません。
猫は、一階の窓からなら見えるかもしれないと思い、一階まで駆け下りました。
台所にある窓が一番外を見渡せそうでしたが、いつも手前にお鍋やフライパンが並べてあるので、猫は今まで窓際まで行った事がありませんでした。
今日もやっぱりお鍋は並べてありましたが、猫はかまわず大きなお鍋の上に飛び乗りました。お鍋はぐらりと揺れて、下に落ちそうになったので、猫は慌てて隣のフライパンに飛びうつりました。お鍋は、そのままガランガランという大きな音を立てて床におちて転がっていきました。
窓は、端っこが少しだけ開いていました。
ちょうど、猫が一匹通れるくらいに。
猫は驚きました。何か、見てはいけないものを見てしまったような気になったのです。
思わず、猫は呟きました。
「外に出られるかも……」
そして、そんな事を言ってしまった自分に、またびっくりしました。
しかし、芽生えてしまった外への期待はむくむくと膨らんできて、猫の心を一杯にします。
猫は、フライパンを蹴って窓の端まで行きました。
フライパンはお鍋と同じように大きな音を立てて床を転がっていきました。
猫は窓から下を覗き込んでみました。十分着地できる高さです。
その時、二階で人の話し声がしました。
大きな音で家の人が目を覚ましてしまったのでしょうか。続いて、扉の音と階段を降りて来るスリッパの音がしてきました。
猫は焦りました。
見つかったら、この窓はきっと閉められてしまうでしょう。
そうこうしているうちに、スリッパの音は扉の前までせまってきました。
ギィッときしんだ音を立てて扉が開いた瞬間。猫は、夢中で外に飛び出していました。
0
あなたにおすすめの小説
まぼろしのミッドナイトスクール
木野もくば
児童書・童話
深夜0時ちょうどに突然あらわれる不思議な学校。そこには、不思議な先生と生徒たちがいました。飼い猫との最後に後悔がある青年……。深い森の中で道に迷う少女……。人間に恋をした水の神さま……。それぞれの道に迷い、そして誰かと誰かの想いがつながったとき、暗闇の空に光る星くずの方から学校のチャイムが鳴り響いてくるのでした。
おっとりドンの童歌
花田 一劫
児童書・童話
いつもおっとりしているドン(道明寺僚) が、通学途中で暴走車に引かれてしまった。
意識を失い気が付くと、この世では見たことのない奇妙な部屋の中。
「どこ。どこ。ここはどこ?」と自問していたら、こっちに雀が近づいて来た。
なんと、その雀は歌をうたい狂ったように踊って(跳ねて)いた。
「チュン。チュン。はあ~。らっせーら。らっせいら。らせらせ、らせーら。」と。
その雀が言うことには、ドンが死んだことを(津軽弁や古いギャグを交えて)伝えに来た者だという。
道明寺が下の世界を覗くと、テレビのドラマで観た昔話の風景のようだった。
その中には、自分と瓜二つのドン助や同級生の瓜二つのハナちゃん、ヤーミ、イート、ヨウカイ、カトッぺがいた。
みんながいる村では、ヌエという妖怪がいた。
ヌエとは、顔は鬼、身体は熊、虎の手や足をもち、何とシッポの先に大蛇の頭がついてあり、人を食べる恐ろしい妖怪のことだった。
ある時、ハナちゃんがヌエに攫われて、ドン助とヤーミがヌエを退治に行くことになるが、天界からドラマを観るように楽しんで鑑賞していた道明寺だったが、道明寺の体は消え、意識はドン助の体と同化していった。
ドン助とヤーミは、ハナちゃんを救出できたのか?恐ろしいヌエは退治できたのか?
児童絵本館のオオカミ
火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
瑠璃の姫君と鉄黒の騎士
石河 翠
児童書・童話
可愛いフェリシアはひとりぼっち。部屋の中に閉じ込められ、放置されています。彼女の楽しみは、窓の隙間から空を眺めながら歌うことだけ。
そんなある日フェリシアは、貧しい身なりの男の子にさらわれてしまいました。彼は本来自分が受け取るべきだった幸せを、フェリシアが台無しにしたのだと責め立てます。
突然のことに困惑しつつも、男の子のためにできることはないかと悩んだあげく、彼女は一本の羽を渡すことに決めました。
大好きな友達に似た男の子に笑ってほしい、ただその一心で。けれどそれは、彼女の命を削る行為で……。
記憶を失くしたヒロインと、幸せになりたいヒーローの物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:249286)をお借りしています。
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる