自衛官×変身ヒーロー×呪われた姫=スキル制約

鹿

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46 急襲【Side.ビニール仮面】

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アスカは、ムーアンの案内で大きな水車の横に建つ、みずぐるま亭の前に着いた。

そこは、木造の古めかしい二階建ての建物で、壁には一面蔦がへばり付いており、魔女でも出て来そうな不気味な雰囲気を醸し出していた。

「実は、宿と呼べる物はここしか無いんですじゃ」

「良いね!隠れ家的な雰囲気が気に入った!」

「それは本当ですか!!ここへ来る冒険者は皆、罵声を浴びせ中へ入ろうともせんのですじゃ。やはりテイマー様は変わっておりますなぁ」

「そうか?日本じゃ、映えるから人気のスポットになりそうだぜ」

「そうですか。良く分かりませんが、テイマー様のような冒険者は初めてですじゃ……それではワシはここで。ゆっくりされて疲れを癒してくだされ」

「ああ。サンキュー!」

案内を終えたムーアンは、向かいの家に入って行った。

「家そこ!?俺の案内は帰るついで?」

レトロな外観を楽しんだ後、みずぐるま亭の軋む扉を開けた。

「ハァハァ。良くぞいらっしゃいました。ハァハァ。本日の料理は腕によりをかけて作らせて頂きます」

目の前には、先程の胸の大きな女性が、綺麗な服に着替えて満面の笑みで対応してくれた。しかし男を抱えて必死に走って来たのか、汗を流し肩で息をしている。

「食事は寝てからでも良いか?」

「勿論です。御用の際は声を掛けてください。食堂はあちらになりますので」

そちらに目を向けると丸テーブル三つと、それぞれに椅子が四脚ある、小ぢんまりとした食堂があった。

「良い雰囲気だねぇ。ん?」

その横にはカウンターがあり、顔だけ見える毛むくじゃらな小さな男と目が合った。

「二階の部屋は好きに使ってもらって構わない。勿論金は要らない。好きなだけ泊まって行くと良い」

「そ、それはありがたい。こいつらも部屋に入れて良いのか?」

「当たり前だ。皆大切な客人だ」

「そうか良かった。でも一部屋で十分だよ」

「それなら、二階奥の部屋を使うと良い。飯はいつでも食べれるようにしておく」

「分かった。取り敢えず寝るよ」

それから底が抜けそうな程、軋む階段を昇り、暗くて不気味な通路を通り、最奥にある部屋の前まで辿り着いた。
古い扉には、大きな水車を太陽に模した彫刻が刻まれていた。

「良~ねぇ~」

中へ入るとベッドが四つと、扉の彫刻と同じデザインのカンテラが四つあり、以外と広くなかなか明るかった。外からのイメージとは違い、掃除が行き届いており清潔であった。

「もう限界だ……お前らも好きな所で寝て良いぞ」

ズブ濡れの服を脱ぎ捨て、ベッドへとダイブした。

~~~

アスカは空腹で目を覚ました。

「ふぁ~。良く寝た……」

ベッドの周りにはキュウたちが気持ち良さそうに寝そべっていた。

「腹減ったな……お~い!そろそろ飯に行くぞ」

キュウたちは揃って耳を立て、アスカの周りに集まった。泥水により毛並みが、カピカピに乾いていた。

「びしょ濡れの服は着たくないが、これしかないもんなぁ……取り敢えず飯食って、それから風呂だな!」

アスカはブツブツ言いつつも、濡れた服を来て下階に降りた。その後、胸の大きな女性から丸一日寝てたと事を告げられ、昼食として振る舞われた料理をキュウたちと堪能した。キノコの丸焼き、キノコのソテー、キノコの蒸し焼き等、全てキノコ料理だったがどれも絶品だった。

「ご馳走様!ゲロ美味かった!」

「キノコしか出せるものが無くて、申し訳ありま…」

「大変だ!テイマー様はいるか!?」

胸の大きな女性の声を遮って、筋肉質の男が乱暴に扉を開けて入ってきた。

「ど、どうした?」

「テイマー様!村にゴブリンの群れが!」

「え?結界はどうしたんだ!?」

「子供たちが門を開けっぱなしで、外に出ちまったみたいなんだ!」

「何だって!子供たちは無事なのか!?」

「分からねぇ!しかし今は、なんとか村の入り口でゴブリンを抑えてる!早くしねぇと!」

「行くぞ!」

キュウたちに声をかけると、アスカはみずぐるま亭を出た。門に向かい走る途中、悲鳴を上げて逃げ惑う村人に出くわした。そしてその向こうから、気味の悪い顔をした、茶色の小さな何かがショートソードを振り回して飛び跳ねていた。

『ギャギャ』

「何だあれ!?きしょい!まさかゴブリンか?」

『『『『グルル』』』』

クロたち四匹は風を身に纏い、頭を下げて唸り始めた。

「アナライズ!」

ーーーーーーーーーーーー
名前 : ー  
種族 : ホブゴブリン
分類 : 魔獣
属性 : 土属性
年齢 : 22
性別 : 雄
Lv :15
HP :130/147
MP : 49/67
攻撃力:133(+18)
防御力:95 (+15)
素早さ:78
知 能:35
器用さ:42
幸運値:10
装備  : ショートソード、魔獣の腰巻き
スキル  : 剣術Lv4、土魔法初級Lv6
ーーーーーーーーーーーー

「ホブゴブリン!?こいつ強いぞ!」

ホブゴブリンは目の前の男に狙いを定め、剣を構えて飛び跳ねた。

「クロ!」

アスカは咄嗟にクロの名を呼んだ。呼ばれたクロは風のように走り、瞬く間に距離を詰めるとホブゴブリンの喉元へと噛みついた。

『ゲッ』

「ひっ!」

動きを止めたホブゴブリンとは対照的に、男はその場で腰を抜かし座り込んだ。

「テイマー様!」

アスカに気付いた村人たちは、必死の形相でアスカに駆け寄った。

「俺の後ろに下がっていろ!シロ!」

『ワォン』

一鳴きしたシロは駆け出し、剣を持つホブゴブリンの腕に噛みついた。

『ギャッ』

首と右腕を噛まれたホブゴブリンは苦しそうにしているが、二匹を振り解こうと体を揺らし、左手でクロたちを殴り始めた。

「くそっ!チャ!ブチも頼む!」

残りの二匹も、左腕と右足に噛みついた。
ホブゴブリンは立っていることが出来なくなり、その場に倒れると少しもがいた後、動かなくなった。

「お前たち大丈夫か?」

(四匹で一体か。ホブゴブリンは群れで来てるはず。ヤバイな。緑の魔石で変身したいが、人が見てる)

「みんな聞いてくれ!ここは危険だ!家の中に隠れてくれ!」

「家の中よりテイマー様の近くが安全です!」

「お側にいさせてください」

村人は顔に恐怖を張り付けて、アスカの周りから離れなかった。

「くっ」

(何とかして人から遠ざからないと…)

「キャー!」

声のする方を見ると、棍棒を持った三体のホブゴブリンに、川岸へと追い詰められている、あの美人の女性がいた。

「クソ!お前たち行ってくれ!キュウ!ミミも頼む!」

キュウとミミが、クロとシロの背中に乗り移ったのを確認して、四匹は一斉に駆け出した。仲間を追ってアスカも走り出した。

クロたちは女性とホブゴブリンの間に飛び込んだ。睨み合う中、チャが端のホブゴブリンに飛びかかった。しかし中央のホブゴブリンが手を向けると、石の塊が出現してチャ目掛けて飛んで行った。

『キャイン』

「なんだ今のは!魔法か?」

石の塊は背中にヒットして、チャは地面に叩きつけられた。続け様に他の二体のホブゴブリンも、棍棒を振り回し、一瞬でキュウたちを叩き伏せた。
それでも立ち上がろうとするキュウ目掛けて、棍棒を振りかぶった。

「やめろ~!」

アスカはキュウの前に走り込み、棍棒を左腕で受け止めた。
が、受けきれなかった。鈍い音と共に左腕の骨が折れ、在らぬ方向へと曲がっていた。何が起きたのか理解できないアスカに、少し遅れて激痛が走った。

「ぐああああ!」

激痛で顔が歪み大声を出さずにはいられなかった。
左腕を見るとまるで振り子のように力無く揺れていた。ホブゴブリンを睨みつけると、既に棍棒を横に薙ぐ体勢に入っていた。

「へ」

避けることも出来ず、再度左腕に棍棒を喰らった。強烈な一撃は腕だけでは収まらず、アスカの体は浮き上がり、後方へと吹き飛ばされてしまった。
そのままアスカは川へと転落してしまった。

「テイマー様ぁ!!」

『『『『ワォ~~~ン』』』』

クロたちの遠吠えと、村人たちの悲痛な叫び声がこだまする。


『突如村に現れたホブゴブリンの群れ。
強敵に果敢に挑む仲間たちであったが、力の差は歴然。一瞬の内に地に伏せられたのであった。
仲間の窮地に勇んだアスカもまた、瀕死の傷を負い川へと転落してしまった。
行けアスカ!闘えイセカイザー!
次回予告
風』

「!!まともな次回予告は初めてですね。こっちも緊張してしまいまふ!!噛んだ…」
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