ズットソバニイテ

ジャム

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いつか、きっと

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「ただいま~」
学校から帰って、手洗ってリビングに入ると、いつもそこで寝そべってる犬が居ない。
「イヌ?ドコ行ったんだろ。仕事でも行ったのかな?」
家には、母さんも親父も居なかった。
たぶん寺の方で色々やってんのかも。
季節の変わり目って結構あるんだよなぁ・・お葬式。
冷蔵庫を開けてコーラの缶を取る。
プルを引いて一口飲んだ。
この一口目がサイコウに美味い!!
この炭酸っぽい匂い。
缶の中で凝縮してたようなこの息苦しくなりそうな炭酸が堪んない。
飲み込むのがツライのは最初の何口かだけで後は、ゴクゴクの飲みこめちゃう。
オレのウチは、親父の部屋以外は普通に洋風の作り。
部屋のドアを開けてコーラを飲みながらベッドへ近づくと、ドンッと膝に何かがぶつかった。
「ワッ」
尻餅をついたオレの目の前に、突然巨大な蒼い犬が現れる。
「イヌ!」
「おかえり、シアン」
その顔をオレの体に擦り付けてクゥンと鼻を鳴らす、この蒼い犬は。
何を隠そう、ウチの寺に代々伝わる生き神様だ。
齢2千年、古代の時代から生き続ける巨大な蒼狼様なのだ。
オレが犬の頭を撫でてやると、犬は嬉しそうにオレの脇の下に顔を突っ込んでくる。
「わっやめろって!オレ汗掻いてるしっ」
慌ててオレが離れようとすると、犬はその普通の犬の何倍あるんだよって前足でオレに圧し掛かる。
「なんか零したぞ」
クンクンッて、犬がオレのシャツの匂いを嗅いで、細長い舌を出した。
ペロッ
「わっ舐めるなよっ!!」
犬がぶつかった時に、オレのシャツの上に零れたんだろう、コーラの茶色いシミを犬が舐め始める。
茶色く濡れたシャツが透けて、犬はオレのシャツの合わせの間から舌を入れて、そこを舐めてくる。
「やっヤメロってば」
少しザラついたその長い舌がオレの乳首を掠めた。
「やっ」
どんなに犬の頭を両手で押さえても犬の体は微動だにしない。
「シアン・・・シたい。シアン」
犬がオレの上に完全に乗っかって、オレの唇をペロリと舐めた。
「いっ犬じゃヤダ・・!っていうか・・・だから犬のカッコなの・・?」
「ああ、シアンの匂いがしたら、体が犬になってた」

このドスケベ犬・・!!

この生き神様、人型を取れるクセに、セックスの時だけは、どうしても犬の姿に戻ってしまうのだ。
今までオレのご先祖様達とシてきたらしいけど、その一回もヒト型でシたことが無いなんて・・信じられないよ・・・オレのご先祖様達・・。

「シアン好きだ。シアン、シアン」
イヌは犬のカッコのクセにオレのシャツを簡単に捲り上げて、その顔を服の中に突っ込んでくる。
「やっやだっって・・!犬の時はヤダッて言った・・」
「この間は、イイって言ったぞ。もうイイだろどっちでも」
犬はオレの服ン中で、無茶苦茶にオレの乳首を舐め捲って、淡々と言った。
「あ、アレはっイヌが途中から犬になっちゃったからで・・!!オレはイイなんて言ってないだろ!!」
オレは体を捩って、犬の舌から乳首を引き剥がす。
なんとか背中を向けて体を起こそうとして。
イキナリ、ヒトの手がオレのベルトに伸びた。
「イヌ!!」
ガチャガチャと滑るような動きでベルトが抜かれると、イッキにズボンを摺り下げられた。
「ヒャッ・・!!」
「ヒトならいいんだよな?」
不敵な声。
一瞬で犬がイヌに変身してた!
しかも、・・・オレのケツに既にイキリタッタ物がぐっと押し付けられている。
「ちょっイキナリ!?」
って言い終わらないうちに、その先端がオレの中へと押し込まれてしまう。
「ああぁぁぁッッ」
ズブズブと飲み込まされるソレが俯いた拍子に、自分の股の間から見えてしまった。
真っ赤だった。人間のソレとは全く違う質感。
正に、ベロみたいな色!
思わず、抵抗も忘れて固まったままソレを見てしまう。

やっぱり・・・やっぱりコイツっ
犬なんだ・・!!!
犬のチンポで・・・オレの中に・・・ッッ
いくらヒトの姿してたってやっぱチンポまではヒトになんかなんないんだ・・・!

途端に泣けてくる。
今、自分を串刺しにしてるモノが犬の性器かと思うと、さっきまでイヌに舐められて興奮してた体も一気に醒めてしまう。
それからもう涙を堪えるだけ。

オレは・・・っ
オレは人間シッカクじゃんっ
犬と・・・犬とセックスしてるなんて・・・っ

グッと体が持ち上げられた。それもたぶんオレの中に這入ってる犬のチンポに。
「あっ」
苦しくって体を起すと、膝の裏を取られて、軽く胸を起こされて、背中からイヌの腿の上に座らされる格好になる。
「や、やだっこんなのっこんなのッオレ、キライ!!」
「シアン、どうした?気持ち良くないのか?ホラ、イイだろ?」
「アンッ」
トンッと、突き上げられて肉の壁が擦れた。
「きっ気持ちイイとかじゃ・・・ないっこ、こんなっただ、突っ込むだけのセックスなんか!オレ、キライ!!」
「シアン・・・」
掠れたようなイヌの声。
それからイヌが、静かにオレの中からズルリと抜き出た。
解放されたオレは、そのままフローリングの床に、べシャッと倒れこんだ。
「シアン・・悪かった・・。人間は挿れるだけがセックスじゃないもんな・・。ゴメンな、シアン。キスか?キスしたいか?ゴメンな・・挿れればシアンが喜ぶと思ってた・・」
体重を掛けないようにオレに覆い被さるイヌが、キスをする。
「イヌ・・・、!!」
キスに応えようと振り返ったら、完全に勃起してるイヌのチンポが目に入った。
その異形に、顔が固まる。
ベロのように真っ赤で、一回オレの中に這入ったせいか、すごくぬめって見えた。
その長さが・・・・30cmくらいある!

アレが・・・。
オレの中に・・・全部、這入っちゃうんだ・・。

ゴクッて喉が鳴って慌てて目を逸らした。
イヌはペロペロとオレの顔を舐めて、唇をくっつける。
長い舌がオレの口の中でオレの舌を擽った。
「ふっ・・んっ」
甘くて優しくて、長いキス。
キスだけで、オレはさっき萎えたはずのチンポをもう勃起させてる。
だってすごい気持ちいいんだもん。
イヌのチュー・・・好きだ。
合わせた唇がヌルヌルしてすごい気持ちよくって、何度も角度を変えて重ねた。

「シアン愛してる」
「イヌ・・・」

それ言われたらオレ抵抗出来ないよ・・。
だって嬉しいんだもん。
イヌのベロがオレの首筋に下りた。
イヌの手がオレの勃起の先端をすべすべ撫でてた。

ああ、キモチイイ・・・。

それからイヌが、口でオレを咥えた。
「やっあぁっ」
逃げたいくらいの快感で、思わず膝が上がる。
その膝を大きく広げたイヌに、より深く咥えられ、アッという間にオレは射精へと追い上げられた。
「あ、あ、イヤッ・・イヌぅ・・!」
「出たな」
目を開けると、イヌが手の甲を舐めながらオレを見下ろしてた。
「いいか?」
聞かれても、オレは何も答えられない。
だって、恥ずかしくって、『挿れてもいいよ』なんて、絶対言えないから。
そしたら。
あの感触がお尻に当たって。
「あっ」
息を呑んだ。
ズブズブズブッて音がして、すんなり。
オレの中に再びイヌの性器が這入って行った。

ど、どうしてそんな簡単に這入ってっちゃうんだろう・・。
だって、人体模型とかで見たけど、人間の腸ってまっすぐじゃないじゃん?
30cmも真っ直ぐなとこがあるワケない。
・・・・もしかして、一回シてから・・・オレの中、イヌが這入り易いようになっちゃった・・?
やだ・・っ
なんか、やだよっ・・・オレ、どんどん人間離れしてっちゃうみたいだ・・っ

考えてる内に、がっちり腰を固定され、すぐに突き上げが始まる。
「あ、あ、あ、あ、ッ、あ、あ、あ!!」
す、すごいスピード・・!!まさか・・っ
少しだけ顔を上げて見ると、オレに覆いかぶさっているのは、どこからどう見ても、大きな犬だった。
「ワーーーーーーー!!!ヤダッやダッヤダッ離して!!」
「シアンっここまで我慢した。許せ。シアン、好きだ、好きだ、シアン、シアンの中でイキたいっ」
「やだっやだっ犬なんか嫌いだ!!犬のバカーーー!!」
って叫んだ瞬間。
体が突然床に落とされた。
「イッた・・!」
犬がいきなり途中で止め、オレから離れてベッドの上に乗ると、ウロウロと右に左に回り出した。

な、何?どうしたんだろ・・?
ピストンし出したら、絶対止めないのに。

「い、イヌ?」
「まただ。またなのか・・?シアンっ」
犬が自分の方へ、ベッドから飛び降りてくると、オレの体の周りをぐるぐる廻って、オレの脇の下にまた頭を突っ込んでくる。
「な、なに・・?どうしたんだよ・・イヌ・・」
「アレだ。アレが聞こえる」
「え」
少し耳を澄ますと、遠くから単調な木魚に合わせてチーンと鳴る音と、お経を読み上げる親父の声が聞こえてくる。
「ああ・・・お葬式やってるんだ・・、お経だろ」
イヌの眉間に皺が寄り、蒼く冴えた目が細められる。

「イヌ・・?」
なんだか嫌そうな顔。
なんか震えるみたいに嫌がってる。
これ、イヌの弱点・・?
イヌって、お経がキライだったんだ・・!

それでつい唱えてみたら、イヌがオレから飛び退いた。
「やめろ!!」

うわー面白い・・っ
面白いから、も一回唱えてみた。
そしたら、今度はウゥッって、本気で唸り声を上げたから、オレは慌てて、笑って謝った。
「ご、ごめんっそんな、キライなの?お経」
眉間に皺を寄せたまま、イヌが人型に変身した。
オレと視線を合わせないまま、壁に提げてあったスーツを手に取る。
「い、イヌってば・・・ゴメン・・っ」
無言でスーツを身に着けると、イヌがオレを手招いた。
オレは、まだズボンも履いてなかったけど、恐る恐る立ち上がってイヌの前に立った。
それから、イヌが骨が軋むくらいに、オレを腕の中に抱き締めた。
「イヌ・・・」
「アレを初めて聞いたのは2千年前だ」
「・・2千年前?」
「お前と別れる時だ。」
イヌは、オレを2千年前に会った男の生まれ変わりだって信じてる。
「お前が死んだ時、皆がアレを歌った。それから、お前の体を焼くと言ってオレから取り上げようとした」
「イヌ・・それは・・しょうがないよ・・」
イヌの胸に寄せたオレの耳に、イヌの心臓の音がどんどん大きくなる。
「オレは、許せなかった。ずっとアイツと、シアンと一緒に居たかった。だからオレはアイツを、・・・」
言葉に詰まったイヌに、オレはイヌの顔をそっと見上げた。
ギュッと瞑ったイヌの瞼から、睫毛が微かに震え、そこに涙が滲んでいる。
「食べたの・・?イヌ」
「・・・ああ」
答えた振動で、イヌの涙が、オレの頬に落ちてきた。
それから、また高い音でチーンと、音がした。
「キライだ」
イヌの腕がオレを、もっともっと締め付けた。
「キライだ。もう二度と聞きたくない」
「イヌ・・・。オレも、食べていいよ。きっとオレもイヌとサヨナラしたくない。もしオレが死んだら、食べて?」

子供の時、見た事がある。
赤ちゃんを生んだばかりの茶色の母犬だった。
自分の子供が死んだのがわからないのか絶対に咥えたまま離さない。
絶対誰にも渡さないってもう、動かない子犬の首を咥えてた母犬。

「きっと・・・『アイツ』も、そうだったよ・・」
オレは2千年前の事なんか覚えてもないし、信じてもない。
だけど、もし、自分がその時になったら、きっとそう思う。
この大きな犬を置いて逝きたくない。
だって、誰がこんなデカイ犬撫でられる?
誰も想像できないよ。こんなデカイ犬が、顎の下を撫でるとクウンって鼻鳴らすなんてサ。
お経聞くだけで、こんな泣いちゃうんじゃ、可哀想でお仕置きになんて使えないや。
そうか。
そういう理由があって、イヌはここに住んでられなかったんだな・・・。
それで、皆、隠れるようにイヌを守ってきたんだ・・。
「引っ越そっか。オレ・・・イヌんちに引っ越そうかな?」
イヌの背中に手を廻した。
「あそこからじゃ、ガッコ遠いだろ」
「そう・・だね・・。うーんどうしよっかな」
「二人で住みたいなら、こっちにマンション買えばいい。バイトした金が山ほどある」
「それってあの占いの仕事の事?」
「そうだ。梧聖が色々教えてくれた。オレが一人になっても困らないように。オレはいつまで生きるのかわからない」
「えっ何それ・・・まるでジジイみたいなセリフじゃん・・。2千年も生きたから?そろそろ寿命がくるって事?」
イヌは薄く笑って首を横に振った。
「この先いつまで生きるのか、わからないからだ。こうやってお前達の一族がいつまでオレに付き合ってくれるか、わからないだろ?いつになったら死ねるのか・・それとも、オレは死ねないのか。梧聖は、それを心配してた」
「そうだったんだ・・。大丈夫だよ・・。またオレ生まれ変わるから。そしたら、また会えるんじゃん?」
「また2千年後にか?」
「それは・・わかんないけどサ。・・・っていうかオレまだ16歳なんだし?」
笑って見上げると、イヌも笑ってオレの唇を舐めた。
「そうだな・・・」



気の遠くなる程の未来のことなんてどうでもいい。
歴史の教科書にしか載ってない昔のことも、オレにはわからない。
ただ、このイヌとずっと一緒にいたい。
ずっと愛されたい。
ずっと傍にいたい。





とりあえず、木魚の音からオレ達は離れた。
手を繋いで、街ン中を堂々と歩いた。
周りから見たらどんな風なのかな・・?
どう見たってイヌは犬になんか見えないけど。

「ねえ」
「ん?」
「イヌのチンチンって・・・人間のみたいにならない?」
「ならない」

あっそうなんだ・・やっぱり。
ずっとあのチンチンなんだ・・・。
やっぱ、ちょっとだけショック。

いつか、オレ、人型のイヌと最後まで出来るようになれるのかな・・。
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