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本気で好きになっていいですか

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すぐにでもベッドに倒れ込みたくなる体をなんとか動かし、やっとでシャワーを浴び、冷えた100%のオレンジジュースを喉に流し込む。
体の疲労の回復を助けてくれる濃いオレンジの味と酸味が口の中に広がり、その丁度いい甘酸っぱい美味さに、ゴクゴクと喉が鳴った。
「なにこれ・・スゲ、うまいじゃん・・」
思わず出た独り言に笑い、髪から滴る水滴をタオルで拭きながら自分のベッドを見下ろし、自分が色んな物と一緒に寝ていた事に、端と気づいて笑ってしまった。
本、ipad、飲みかけの水の入ったペットボトルに、外国のコイン。
普段ならこんなだらしないベッドで寝ることなんてないのだが、連日の暑さと異常な緊張と疲れから、毎晩倒れ込むように寝てしまっていたせいだろう。
2週間、いや実質2年間の苦しい戦いが、今日やっと終ったのだ。
「なんちゅー汚い部屋だ・・」
とりあえず、脱ぎ散らかしてあった服をビニール袋の中に突っ込み、それをスーツケースの中へ押し込んだ。
終ったんだ。
これで、帰れる。
体はボロボロだったが、23歳という若さでW杯に出場、普通の人間には経験出来ない貴重な体験を積むことが出来たと思う。
誰にでも出来る訳じゃない。
オレ達は選ばれて、ここへ来たのだ。
そう自分を鼓舞し、ピッチに立てたのはもう4日も前の事。
たった一試合きりの出場だったが、最大限まで絞った体は、予想以上の出来だった。
身長は179cm、体重は70キロ台、体脂肪8%。体幹トレーニングで鍛えまくった腹筋は6つにくっきりと割れ、自分で言うのもなんだが、どこで脱いでも恥ずかしくない体型だ。
ただ元々が日本人体型なので、外国人選手のそれと比べられてしまうと、やはり骨格の細さが目立つ。
それでも自分の中では、今までで最高と思える体の仕上がりだった。
試合中でタイムは計れないが、今までで一番早く走れたと思うし、外国人相手のディフェンスもガチで負けてなかったと思う。
相手が強ければ強い程、自分の能力もそれに吊られて引出される事があって、頭で考えるより先に体が動く、みたいな事が咄嗟に何度もあった。
試合中でも瞬間的な成長は起る。
感覚が研ぎ澄まされ、体が自然に動き出す。
自分が思っているイメージ通りのパスが通った瞬間、全身に鳥肌が立った。
しかし、それが90分ずっと続く事はない。
たった1点のゴールで天国と地獄を味わい、体も神経も削られて足が動かなくなると、相手はここぞとばかりに襲いかかってくる。
全ては結果だ。
どんなにいいプレーをしようと、いいパスを出せたとしても、点が入らなければいい結果を生み出せない。
勝った者は賞賛を受け、負けた者は辛酸を味わう。
これが勝負の世界だからだ。
過酷なリーグ戦が全て終り、あとは日本に帰るだけ。
とは言うものの、せっかく来た南国の地、少しくらい観光したいのが人情ってもん。
いくら負けたからって、いつまでも鬱々としてなんていたくない。
次の日。
濃紺のイージーパンツにパッと見ユーズド風の白いシャツを羽織り、気分転換に一人ホテルから抜け出した。
1日くらいパーッと買い物して、外食して、バーでちょこっと飲んだっていいだろう。
そんな気持ちで、街をブラブラ、入っても安全そうな店を覗き見しながら、地元のグルメを食べ歩き。
有名なビーチで、キレイな海と砂浜の景色で息抜きした後は、小洒落たバーへと繰り出した。
時間がまだ少し早いから客もまばら。
カウンター席に座り、英語でビールを注文すると、隣の席にガタイのいい筋肉質な男が、座ってもいいか?と尋ねてくる。
冗談じゃない。
このホモ野郎!と睨みつけた顔は、なんと、あのジッターだった!
唯一自分が出たリーグ戦で、オレとマッチアップした、やたら男前のイタリア男だ。
いつもはオールバックにしてる金髪の前髪を顔を隠すためか前に垂らし、横の長い部分は少し耳に掛けて、その耳には宝石の付いたピアスが3つも付いている。
彫りの深い目尻はやや下がっていて、厚めの下唇と相まって、全体的に甘い顔の印象だ。
自分より10cmは背が高く、それこそ筋肉質な体幹や足の太さは一回りは違うだろうか。
体にフィットした白いタンクトップを着ているが、サッカー選手にありがちな袖焼けしてるのが目について、つい口元が弛んでしまった。
その顔を見たジッターが、ホッとしたように口元を綻ばせ、半身オレの方を向き、オレに何か話掛けてきた。
たぶん、向こうも喋れない英語を駆使しているのかも知れない。
必死でジッターの口元を読み、なんとなく聞こえた単語をなんとなく繋げ、こっちからも、たどたどしい英語で返すと、ジッターが柔らかい笑みを見せる。
ネイティブの発音と早口で、言ってる事の3割は聞き逃してしまうが、なんとかジェスチャーで乗り越えた。つもりだった。
何がどうなったのか、ビールを2杯飲んだ後、ジッターがオレの肘を引いた。
どうやら来いって事みたいだ。
まあ、特に予定も無いし、いいか。ぐらいに付いて行ったのが全ての間違いだった。




「あ・・や、ちょ・・っ」
う、うそ・・だろ・・!?
オレはジッターの車の後部座席に乗せられ、あっという間に下半身を裸に剥かれ、ジッターにアソコをしゃぶられていた。
な、なんでっなんで、オレ、こんな、こんな事になっちゃってんの・・!?
見るのも恐ろしい程の美形が、オレのチンポを喉の奥までしゃぶりながら、その下にある尻の中で指を動かす。
ゾクゾクと這い上がる射精感に身を捩りながら、がっちりと固定された足で無駄とわかりつつも藻掻いた。
が、足を動かそうとすると、ジッターの歯がオレの肉棒を噛む。
「イッ・・!やだっジッター噛むなっ・・!」
反り起った勃起を鋭い痛みが襲い、その痛みに目に涙が浮かび、それ以上逃げようとする事は不可能だった。
体の力を抜くと、ジッターの指が遠慮無く増やされ、その動きも激しくなってくる。
尻を弄られるのは、初めてじゃなかった。
高校の時に兄貴の友達って人に何回かイタズラされた事がきっかけで、自分でソコを弄ってみた事もある。が、それよりもオフの日に、悪友とその手の店に行く方が好きだった。
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