センパイ2

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44、ワタヌキの決意

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44、ワタヌキの決意


桜の咲いた校門前。
今年で最後だと、いちいち何かセンチな気分なのは、年下の恋人のせいだと、また目を閉じる。
その顔を見た親友が言う。
「ウザイ」
オレはノーモーションのパンチを大親友のわき腹に打ち込んでやる。
うっと呻き声とともに壁に寄り掛かるアキタ。
「テメ…!来年のJリーガーに…!!」
「へー」
オレは感心した。
一応将来のことを考えてるんだな、と。
「アホか!なれねーよ…オレなんか…」
オレの顔が、本気の感心した顔に見えなかったらしいアキタは、拗ねた目でオレを見た。
「オレなんか、早く卒業してーのに…」
「トラップが下手なんだよ」
「ハ?」
オレのアドバイスにアキタが渋い顔で見上げてくる。
「うまいと思うけど。トラップさえ良くなりゃ。パス取れなきゃどうしようもねえじゃん。やっぱ基本だろ。お前今日からボールタッチ百回な」
目が点のアキタに、オレはもう一言付け足す。
「キャプテン命令」
アキタの顔がニヤケてくる。
「それで来年推薦取れるかな…」
「ヨユーだろ」
残された時間、オレ達は前と後ろを向いて、ジタバタと焦っていた。
何かをしなけりゃいけない。
何すりゃいいのかわからない。
答えがあるのかもわからない。
天地無用の割れ物注意!!(笑)
情緒不安定200%なわけだ。
「オレ…大学行けなかったらどうしよ…」
アキタの暗い顔。
「バンガレ…」
「オウ」
オレの精一杯の励ましに、アキタは小さく親指を立てた。
頼りねぇ~…。
実際、アキタが大学に行けるとしたら、サッカーしかないだろう…。っていうのはイズミサワ先輩の入った大学が有名私立だからだ(あの人ひねてたけど、本当にサッカーうまかったから)。
もし、同じ大学に入りたかったら…学力じゃムリだろな。
バンガレ…!
オレは大親友にあんぱんを奢ってやった。
そんな感じで、いつものようにオレの部屋。
学校帰りのナギに聞いてみた。
「オレが卒業するまでに、なんか出来ることってある?」
ナギはマジマジとオレの顔を見つめてから、ゲームのコントローラーを置いて、ちょっと待ってと言った。
そして、考えること数分。
ナギが目を閉じたり開いたりと、悶々と悩む姿を楽しんでから声を掛けた。
「ナギ」
「待ってって!」
ナギが超本気で悩んでる。っていうか逆ギレてる…。
「そういうことか…!」
何かの推理に答えが出たように、ナギがオレを指差す。
「あんたが卒業までにって…もしか、それってさ、オレら後輩全員って意味じゃねえの!?」
その指を握って下ろさせて、オレはしっかりとナギの顔を見て、話した。
「オレはナギに言ってんだよ。一緒に居れる時間はずっと一緒に居たい。居れるだけ居たい。その中で、オレが出来ることはやっときたい。サッカー部に、とかそんなんじゃない。もちろんサッカーのことだっていいし、それ以外でもいいし、オレに何が出来るのかもわかんねえけど、ナギのしたい事とかやりたい事とか全部知りたい」
「伝わったか?」と腕を引くと、ナギが赤い顔して頷く。
「ハズイ」
ナギが顔を両手で覆って呻く。
「しょうがねえだろ。そうなんだから」
ナギの頭を抱き寄せる。
「1こ。」
ナギが手を下ろして言った。
それでもこっちは見ない。
「聞いていい?」
頷くと、チラとオレを見てまた視線を外す。
髪をかき上げて、またオレを見る。
深呼吸。そして意を決して口を開く。
「あのさ、なんで、なんでオレなの?」
(なんで、オレが好きなの?)と、気弱な目がオレを見つめる。
「………」
予想外だった。
オレはナギにこの先何をしてやれるか聞いたはずだったのに…、話が、こんなお願い事みたいなコトにすりかわってしまった。
「入学式の日に…見て。初めて会って」
うんうんと頷くナギ。
「見た目、カッコイイなって…」
「うそつくな…」
ナギの目が半目になる。
「嘘じゃねえよ…。思ったもんカッコイイなって、その後、なんか声掛けたら困った感じになって、かわいくて」
ナギが唇を噛む。
「声聞いて、もっと声聞きたくなって、っていうか…かまいたく(イジメタク)なって…、その後は…」
ナギの顔がかわいすぎて、オレはキスした。
「オレのものにしたくなった」
「うん…そうだね」
出会った頃が懐かしくなった。
何もわからないまま、ただ好きになって、ただ追いかけて、自分の100%出せばどうにかなるって信じてた。
本当はそんなんじゃどうにもならない。
それがわかるのは、あのバカツヅキがいるからだ。
「ナギしか…いない。オレを受け止めてくれんの」
ちょっと笑ったナギがオレにキスしてくる。
「バカだよね…なんで受け止めちゃったんだろ~」
「負けず嫌いだからだろ」
ナギのネクタイを抜く。
「だってさ。ドキドキしちゃったんだよ。センパイに」
オレのネクタイもナギに抜かれる。
シャツは着たまま。
裾を捲り上げる。
肋骨の歪んだ曲線を舌で辿る。
「センパイ…」
吐息混じりのナギの手がオレのベルトをはずす。
何度繰り返しただろう?
キスをして、抱き合って、お互いを奪い合うようなセッ クスを。
なのに、どうしてこんなにドキドキするんだろう。
緊張で指が震える。
壊してしまわないようにと思うのに、いつも最後は全てを自分のものにしたくて暴れまくる。
何度ナギを泣かせてきただろう?
ナギの体には、この1年で大分筋肉がついた。
それでも、まだ大人の体型には遠い。
か細い腰を密着させる。
しがみつくようにナギがオレに抱きつく。
「オレも…」
ナギがつぶやいた。
「オレもずっと一緒に居たい。センパイと」
目の奥が熱くなる。
目を閉じて、ナギとキスする。
「センパイと…」
両手の指を絡ませて、オレはナギを抱く。
「センパイと…」
静かに、ナギの中で暴れる。
大事にしたいのに、壊したい。
矛盾する全てがここにあった。
「ナギ、一緒に居ような。ずっと一緒に居よう」
永遠を誓いながら、それは叶わないとどこかでわかっている。
「センパイ…」
ナギが苦しそうに首を捩る。
オレは体を密着させて、ナギの自由を奪う。
「あぁッアツイ…センパイッアッヤッ」
ナギの体が跳ねる。
繋いだ手でオレを押し返そうとする。
それをオレは無駄だとベッドに縫い付ける。
動きを封じられたナギが足をつっぱる。
「センパ…イッチャウ。イッチャウよぉッ…ッ」
そういう顔と声がどれだけオレを煽るか!
オレは思いっきりナギを突き上げた。
中の肉がグジュグジュとオレの動きを邪魔する。
ナギが息を呑む。
息が出来ないみたいに口が開いて、ナギの精液がシュッと飛び出た。
「一生、一生そばにいろよ…。ナギ!」
「センパ…イッッ」
ナギの指に力が入る。
オレは打ち込む腰をさらに深くした。
限界まで奥に。
オレの全部をナギの中に出すために。
「あぁっもう、ダメッダメっダメっ…センパイ!!」
ナギの精液が勢いよく2回噴出す。
ナギの目がトロンと濡れて、あいまいに宙を泳ぐ。
「一人でイッタな…?あとで罰だな…」
思わずニヤケる。
それから、ナギの奥底にオレは全てを吐き出す。
「オレのとこまで…1年で追いつけよナギ」
ナギがトロンとしたまま、オレに手を伸ばす。
その手を握る。
ナギが言う。
「それ…キャプテン命令?」
オレは思わず噴出して、ナギにめちゃくちゃキスしまくった。
オレのすべきことは決まった。
この1年、オレは鬼キャプテンになる!




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